『高校野球“超”検定読本』(野球小僧編集部/白夜書房)
高校野球好きのマニア魂と知識欲をくすぐる“超"検定読本。
「大リーガーたちの高校時代」「高校野球マンガ」、「甲子園に出場した著名人」などのコラムも充実!

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<問題>
甲子園・夏の大会での奪三振記録1位は板東英二。
では、春の選抜大会の1大会奪三振記録の投手は?

桐光学園・松井投手の奪三振ショー(大会通算68奪三振)に、エキレビ!でも話題となった「ドカベン・ルール」と、例年に負けず盛り上がりを見せている今年の夏の甲子園。残すところ、準決勝、決勝の2日間のみとなりました。
甲子園が終わりに近づくとなんだか夏も終わっていくようで、少し寂しさも感じる今日この頃。おそらく今、ヒマワリのように笑顔満開なのは、勝ち残った4校の球児たちと、今年も奪三振記録1位(大会通算83奪三振)の座を奪われなかった板東英二さんくらいではないでしょうか。

奪三振記録の話が持ち上がるたびにスポットライトが当たる男・板東英二。ある意味夏の風物詩的な面もありますが、その反面、意外と知られていないのが、冒頭でも出題した選抜大会の奪三振記録記録保持者です。こちらも実は皆さんご存知の有名選手なのですが、その答えはひとまず置いておくとして、高校野球の楽しさは、毎回新たなドラマや記録が生まれるたびに、その比較対象として過去の記録や歴史が掘り返され、見直され、その上に新たな伝説や感動のプレーが蓄積されていくところだと思います。

夏の全国高校野球選手権大会が開催されたのが1915(大正4)年。戦時中の中止を挟みながら、今年がなんと第94回大会。節目となる第100回もだんだんと近づいて参りました。そんな100年に渡る高校野球の歴史や数々のドラマを詳細なデータとともに振り返り、果ては検定問題まで試せてしまう、高校野球ファン必携の本があるんです。その名も『高校野球“超”検定読本』。
本書は【第1章:歴史編】【第2章:ドラマ編】【第3章:記録編】【第4章:強豪校編】【第5章:大会編】【第6章:カルチャー編】【第7章:キャリア編】【第8章:都道府県編】の8章で構成されていますので、頭から読み進めるも良し、パラパラめくって気になった項目を熟読するも良し、高校野球をマクロ的・ミクロ的に様々な角度から再認識することが可能です。
私のオススメは、巻末にある【高校野球“超”検定 演習問題・50問】にまずチャレンジしてみて、わからなかったところを重点的に復習する、まさに高校野球の参考書としての使い方。冒頭の問題もその中のひとつを元に作成していますが、他にもこんな問題があります。

<問題>
「アルプススタンド」の呼称を最初に使った文化人を下から選べ
(1)正岡子規 (2)岡本一平 (3)つげ義春 (4)水島新司

どうです、いい問題でしょう?
ただ野球のルールを知ってれば、オタク的な「記録」の知識量が多いだけじゃあ本当の高校野球ファンじゃない。文化的な側面からも光と当てよう、という視点が随所に見て取れるんです。ちなみに正解は(2)岡本一平。かの岡本太郎の実父にして、漫画家・作詞家として活躍した岡本一平氏が朝日新聞に寄稿した文が最初だそうです。
「へーへーへー」と思って、参照ページ【第5章:大会編】の「甲子園」の項目を覗いてみると、あのベーブ・ルースが「この球場はデカすぎる!」と言っていたことなど、さらに驚かされる情報が満載です。

そうそう、今大会での奪三振の話題で「板東英二って野球選手だったんだ!」と驚かれた方には、【第2章:ドラマ編】にある「板東英二」のページをチェックすることをオススメします。KKコンビや松井秀喜、松坂大輔を抑え、この項目の先陣を切って紹介されているんです(単なる年代順?)。延長18回を一人で投げ抜いた後、お立ち台で「みなさん、遅くまでお疲れさんでした」と報道陣を驚かせたエピソードが、およそ爽やかな高校球児に似つかわしくない、今日の板東英二らしさを彷彿とさせてくれます。

そんな無駄な知識の数々も、深い野球への愛情も、さすがは『高校野球小僧』『野球小僧』など数々の野球書籍を手がけてきた「野球小僧編集部」による制作。情報の深さ、そしてボリュームも含め、高校野球本の決定版と言って差し支えないでしょう。
夏の甲子園が終わっても、秋の国体や明治神宮大会など、エンドレスに続く高校野球シーン。そのお供に『高校野球“超”検定読本』、オススメします。

<目次>
【第1章:歴史編】概論/時代 〜戦前・戦中、1950〜60年代、70年代、80年代、90年代、2000年代〜
【第2章:ドラマ編】板東英二/江川卓/池田高校/KKコンビ/松井秀喜/松坂大輔/田中VS斎藤/甲子園の魔物 etc.
【第3章:記録編】出場回数/連覇/監督/投打の記録/ノーヒットノーラン etc.
【第4章:強豪校編】中京大中京/PL学園/松山商/広島商/早稲田実 etc.
【第5章:大会編】ルールの変遷/大会運営/高野連/出場枠/21世紀枠/地方大会
【第6章:カルチャー編】ユニホーム/球児のオシャレ/用具/応援/キャッチフレーズ/旋風/新設校の台頭/不祥事と処分
【第7章:キャリア編】ドラフト/大学・社会人への道/高卒ルーキー・新人王 etc.
【第8章:都道府県編】勝利数、勝率ランキング etc.
【演習問題】50問(回答・解説付き)

あ、忘れてた。冒頭の問題の答えは、作新学院・江川卓でした(1973年、60奪三振)。
(オグマナオト)