主人公もゾンビもみんな逆光でシルエットになっている異色のゾンビゲーム『DEADLIGHT』。とにかく死ぬ。死にまくる。たくさん死んで活路を見つけろ!

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ゾンビに襲われる時の最大の恐怖は何か。
ぼくは数に圧倒され、逃げられないことと自らもゾンビになることの二点だと思います。
もちろんそれ以外のゾンビ作品もたくさん増えています。猛スピード疾走型ゾンビや、突然変異モンスター型ゾンビとかですね。
とはいえ、やはりみながゾンビ化してしまい、荒廃した廃墟のような町を、走っても走ってもゾンビがのそのそと群れなして追いかけてくるのは、恐ろしいものです。

そんな極めてシンプルなゾンビの恐怖を描いたゲームが、X-BOXライブアーケード配信中のゲーム『DEADLIGHT』です。
完全横スクロール型アクションゲームなんですが、ゾンビならではのグロテスク表現を一切切り捨てて主人公とゾンビはすべてシルエットで描かれます。
雰囲気はこちらのムービーを見ていただけば分かると思います。
Deadlight. Fear Yourself (story trailer) - YouTube
舞台は1986年。アメリカはゾンビによって壊滅状態。主人公のランドルは生き延びて家族を救えるのか?というストーリーです。
大枠自体はよくあるゾンビものと同じなんですが、徹底して「影」であることを強調しているのが特徴。
もうどうしようもないくらい荒れ果てた町を、逆光で影になっている主人公とゾンビが走り回るのですが、逆光ステージだからこそ緊迫感が尋常じゃないんですよ。
大雑把な言い方をすると、よく見えないんです。逆に言うとぎりぎり見えるバランスで画面が作られています。
この影絵表現自体は『LIMBO』というシルエット表現のゲームにも似ています。
『DEADLIGHT』のほうはちゃんとポリゴンで作られていて、場面場面ではゾンビや主人公の様子が見えます。ところどころ急にフルカラーになるシーンもあるんですが、フルカラーの方が目にどぎつい色で作られていて、いやーな雰囲気になっています。詳しくはプレイしてみてのお楽しみ。

さて、このゲーム3Dで作られているゾンビ物なのに、完全横スクロールです。マリオとかと同じです。もったいないように見えます。
ところがなぜ3Dで横スクロールゾンビものなのかは、プレイしたらすぐわかります。
ゾンビが奥からどんどん湧いてくるんですよ。
主人公は横スクロールだから前と後ろにしか進めないっちゅうのに、画面奥からがんがんゾンビが! いやちょっと待てそこで湧いてくると困るんだけど!逃げられないんだけど!
「迫ってくるゾンビの恐怖」を表現するために狭い部屋や通路を利用したり、暗闇を利用したりというのはたくさんありましたが、この使い方はちょっとびっくり。その手があったか、っていうか主人公奥も手前も行けないってどうにかしてよ!逃げられないよ!
その逃げられないのが面白いんだ。
ゲームのバランスでいうと、ゾンビが奥から湧くのがトラップになってるんです。ちゃんと正しい手順でプレイすると、ぎりぎり逃げられる。ちょっとでももたつくと、奥から湧いたゾンビに道を阻まれる。何回かプレイしたんですが、手が届くか届かないか寸前の逃げ方じゃないと進めない箇所がいくつかあって、何度プレイしてもハラハラします。
そうそうこれこれ。ゾンビがきわきわまで迫ってくるドキドキ感。

じゃあショットガンなり斧なりで殺せばいいじゃん弱いんだし、と最初思っていました。
実際、斧、ピストル、ショットガンと三種類の武器があります(あとショボいですがパチンコ)。やったね安心。
ところがどっこい。ピストルはとにかく弾丸が少ない。しかもそのピストル使わないと進めない箇所もあるので何でもかんでも撃つわけにいきません。ショットガンは更に数が少ないので、どうしようもなくゾンビが溢れかえる場所以外使えない。
しかもゾンビ非常に頑丈で、ヘッドショット(頭狙い)じゃないと倒せません。
よし、じゃあ斧だ。斧を持て!……ところが、主人公斧数回ぶん回すとスタミナ切れになって動くことすらままならなくなります。しかも斧で一回切るだけではゾンビ頑丈なので倒せません。転ばせて、さらに斧で頭ぶった切らないと完全に倒せない。ってことはスタミナフルでも3人倒せるかどうか微妙なところ。
でも、ゾンビ出るときは容赦なく奥からがんがん湧くので、前と後ろのゾンビに手間取っていたら即死にます。

冷静に考えてみたら、屈強な人間でも消防用の斧を、人体ぶった切るくらいのレベルでぶん回していたらあっという間にバテますもんね。
しかもライフが3しかない。3回噛み付かれたら死亡。
おそらく、色々なゾンビゲームありますが、ここまで弱い主人公なかなかいないですよ。いや違う、これがリアルなんだ。ゾンビって人間の体ですもんね、頭以外撃ったってそりゃ倒れないわ。
ちなみにスタミナは走っていたりぶら下がっていてもメキメキ減ります。少し走ったら疲れてヘロヘロになり、ゾンビの群れに襲われる、なんてのもざら。

加えて、めちゃくちゃ色々な方法で死にます。
最初にいうと、このゲームを初見ノーミスクリア出来る人は、相当運が強いとしか思えないくらい死にます。
いわゆる「死にゲー」。死にまくってパターンを覚えればクリアできます。
とはいえ死にすぎですよ。あんまりにも死ぬので笑ってしまいました。
ゾンビに襲われて死ぬ。落下して死ぬ。感電して死ぬ。溺れて死ぬ。撃たれて死ぬ。罠にかかって死ぬ。瓦礫が落ちてきて死ぬ。
一番やられたと思ったシーンは、トラップを避け、水を飛び越え、はしごに飛び移った、よしやった! と思ったらそこにレンガが落ちてきて死んだ瞬間でした。
わかるかそんなん! あ、でも向かい側にもう一個はしごあったわ…。
主人公が弱いんじゃなくて、この世界が過酷すぎるんです。
でもちゃんと逃げ道あります。ヒントとして行き先が少し光るので、よく見ていけば大丈夫です。それでも死ぬけど。

トラップ系はまあ覚えてしまえば、ぎりぎりのタイミングではありますが抜けられます。
けれどもゾンビがやはりいちばん怖い。下手に戦うともうどんなに逃げても逃げきれなくなります。
戦ったところでアイテムも手に入らないし、経験値も稼げない。つまり避けゲーなんです。
ですよね。ゾンビに襲われたらどうすればいいか。三十六計逃げるに如かず。

ゾンビやトラップの怖さばかり書きましたが、横スクロールアクションなのにどこまでも奥行きのある描写と、くすんだ色で描かれる80年代アメリカの惨状は、非常に悲しく、美しいです。
合間合間に挟まれるストーリーシーンは絵本タッチになっていて、これまた異色。
最初はあんまりにも主人公ランドルが死にまくってゲラゲラ笑っちゃうんですが、後半になるとどんどん彼がかっこよく見えてくるから不思議。一人ゾンビの群れを駆け抜ける中年男性の勇姿を見ることができます。
うまい人ならおそらく大体数時間かからずクリアできるので、ボリューム自体はそんなにないですが、ゾンビ物語描写の一つの成果としてできたこの作品、プレイしてみる価値ありです。

(たまごまご)