京大など、ガレキ再利用型と高遮蔽効果型の2種類のコンクリート容器を開発

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京都大学は、工学研究科の荒木慶一准教授が日本大学工学部のパリーク・サンジェイ准教授、フジタ技術センターの藤倉裕介主任研究員らと共に、構造技術研究会遮蔽コンクリートポッド研究委員会を立ち上げたことを発表。

併せて東京電力福島第一原発事故で発生した放射性物質で汚染された土砂や廃棄物を格納するために、2種類のコンクリート容器を新たに開発し(画像1)、福島県郡山市内の汚染土を用いた実証実験を行い、想定通りの性能が得られることを実証したとも発表した。

また、今回の実験の結果に基づき、放射線量低減効果のシミュレーションシステムを開発したことも併せて発表している。

これにより、土砂や廃棄物の汚染状態に応じて、最適な容器の材料や厚さを選択することが可能となった。

2011年3月11日に発生した東日本大震災は日本に大きな惨状をもたらし、その後に福島県で発生した原発災害は、現在でも多くの課題を残している状況なのは誰もがご存じの通り。

このような中、荒木准教授らは研究委員会を2011年7月に立ち上げ、同年10月には福島県郡山市の日本大学工学部においてシンポジウムを開催し、地域住民とのディスカッション、現地土砂の汚染度評価、コンクリート容器の開発を継続して実施してきた形だ。

現在、日本において東日本大震災で大量に発生したガレキ処理が大きな問題となっている。

研究委員会はガレキ処理の一助となることを目指して、ガレキの中でも大きなウエイトを占めるコンクリガラの再利用技術の研究を進めた。

そして開発されたのが、コンクリガラを粉砕してできる再生骨材を用いた「再生コンクリート容器」(写真1・右)である。

今回、20cmの厚さを持つ再生コンクリート容器を試作し、現地の放射能汚染土を用いた実験により、従来の普通コンクリート容器と比較して遜色の無い放射線遮蔽効果を持つことが確認された。

今回の実験により、再生コンクリートによる放射能汚染物格納容器の実現性を実証できたといえる。

なお、本容器の作成に用いたコンクリガラは宮城県で発生したもので、放射性物質による汚染は確認されていない。

コンクリート容器を用いて放射能汚染物を運搬・保管する際には、容器の省スペース化と重量低減が課題となる。

そこで活躍が期待されるのが、今回開発されたもうひとつの「超重量コンクリート」(写真1・左)だ。

超重量コンクリートの比重は通常のコンクリートの約2倍で、容器の壁厚と重量を大幅に低減できることが大きな特徴である。

また、環境上問題がある特殊金属や化学薬品を一切用いておらず、将来的なリサイクルが容易で、環境に優しい点も大きな特徴だ。

現地汚染土を用いた実験では、厚さ10cmの超重量コンクリート容器により、2倍の厚さを持つ普通コンクリート容器と同等の遮蔽性能を持つことを確認し、壁厚を5割、重量を3割削減できることを実証した。

この理由は、一般に材料の比重が高いほど放射線を遮る性能が高くなるからだ。

しかし、従来の重量コンクリート容器の比重は3.5程度が上限だった。

比重に限界があるのは、比重を高くすると水やセメントと骨材(砂利)が分離してコンクリを打つのが難しくなるためである。

今回開発した超重量コンクリート容器では、骨材として砂利の代わりに鉄粉を用い、その大きさや形を工夫することで、骨材の分離を防ぎ比重4.7という超重量コンクリート容器の実用化に成功したというわけだ。

今回の実証実験に関するセッティングの概要が画像2である。

汚染土を直径30cm高さ40cmの薄いプラスチック製容器に入れ、まず汚染土のみについて画像2の要領で汚染土表面からの距離Lを変化させながら放射線量を計測した。