――もし、お父さんが生きていたならば、そういう小説にはならなかったかも。

【田中】それはわかりません。私はずっと母親と一緒に暮らしてきましたが、『共喰い』に登場する母親は大変怖いというか、最後には暴力的になる。僕の母親は、そういう人ではありません。だから、父親がいるかいないかで、僕が書く父親が変わるかというと……それはない気がしますね。

――今、お母さんの話があったんですけど……田中さんは、やはりマザコンですか(笑)。僕はそうです。

【田中】まあ、マザコンでしょうね。どう考えても。母親とずっと一緒に生きてきましたし。意識することはないですけど。

――では、好きな女性のタイプもお母さんみたいな人だったり。

【田中】それはわからないんですけど、少なくとも私は強い女性が好きですね。ちゃんとしているというか。いかにも「女のコ」って感じの人はちょっとダメかな。私には「女性=強い」というイメージがあって、それを崩すような、ナヨッとしている人はダメです。女性は強くあってほしい。

――じゃあ、「私のこと、守ってほしい」って感じの女性は……。

【田中】守れませんから(笑)。自分で自分も守れないのに。

――「強い女性」は男に対してかなりキツいことを言ったりしますよね……僕はそういう女性が好きなんですが。

【田中】あ、それはイヤですね。やっぱりガーって言われたらヘコむでしょう? ヘコむのがいいんですか、あなたは?

――いや、まあ、僕は確かにMっけがあるみたいですが……。

【田中】そうですか。まあ、私がイメージしていることと現実にいる「強い女性」はたいてい違うので、実際はどうだかわかりません。

――ここはちょっとツッコミます! 今までどんな女性と付き合ってきましたか!?

【田中】それは言いたくないというか、言えるほどの遍歴がないので……。一応女性です。

――では好きなアイドルは!?

【田中】松田聖子、小泉今日子、中森明菜とかいましたね。いや、特定の誰かというわけではないですが。

――好きなAV女優は!?

【田中】AVはダメです。想像力を奪うから。

――合コンとかやったことありますか!?

【田中】ないです。「出会い」をわざわざセッティングするなんて気持ち悪いじゃないですか。そんなふうに酒を飲むなんて何が面白いのか。全然わからないです。

■「芥川賞で終わり」とは言われたくない!

――芥川賞の受賞会見は新聞やテレビだけでなくネットでも話題になりました。そのなかで田中さんがニートだったとか働いたことがないということに、やたら食いつくネット民がいたりして、共感を呼んでいました。

【田中】それについてはいろいろと思うことがあります。私は高校を卒業してから、働く気もなければ、勉強する気もなく、ズルズルと何もしなかったんですよね。母もそれに対してあきらめたのか何も言わなかったんですが、まあ相当な親不孝ですよ。ただ、本が好きで毎日読んでいました。その頃から「作家になれれば」って考えていましたけど「どうしても」というわけではなかった。

 一方で「どこかで落とし前はつけないといけない」とは思っていました。だけど「じゃあ、バイトなり、就職活動なりをしろよ。働きながらでも作家は目指せるじゃないか」と言われると「それはヤダ」ってなる。この押し問答を続けながら結局、働かずにデビューまでの約15年間を過ごしました。

 ただ、20歳の頃から、とにかく毎日、絶対欠かさず、何かを書きました。書けなくても書く。誰かの小説をノートに写すのでもいいから、書く。これだけは続けてきました。一日一回、机の前に座ればいいのだったら、それはできるだろうと。私の祖父が亡くなった、その葬式の日の合間にも書きましたよ。それはよくないことなんですが、「何があっても毎日書く」という覚悟があった。