フットボール界にはピーター・クラウチ選手やニコラ・ジキッチ選手のように2メートル近い体躯のフォワードが何人かいますが、世界最高峰のレベルに於いては必ずしも彼等がヘディングの名手というわけではありません。彼等程の長身になってしまうと何故かジャンプの踏み出しに力強さが感じられず、ヘディングをするためのスペース(ジャンプ地点)への動き出しにも難があるため、長身を誇りながら必ずしも空中戦に勝てるとは限らないのです。また、元ブラジル代表のソクラテス選手も192センチと長身でしたが、ヘディングはさっぱりで、華麗なステップとパスワークを得意とする中盤の選手でした。

では、空中戦に強い選手はと言いますと、身長は高くても190センチ止まりで、胸板の厚いどちらかというと筋肉質の選手が多いような気が致します。思いつくままに列記させて頂くと、過去にはウェールズ代表のロン・デービス選手とジョン・ハートソン選手、ドイツ代表のオリバー・ビアホフ選手、イングランド代表のマーク・ヘイトレー選手などが思い浮かぶのですが、前述の釜本選手と原選手の両者とも180センチ前後の身長でした。もっと言うと空の王者と言われた元ドイツ代表のカール=ハインツ・リードレ選手も180センチしかありませんでしたし、同じく元ドイツ代表のウーヴェ・ゼーラー氏に至っては170センチと小兵ながら、抜群のポジショニングとジャンプのタイミングでヘディングを大きな武器としていました。また、ディフェンダーではありますが、イタリア代表のファビオ・カンナバーロ選手とスペイン代表のカルレス・プジョル選手も180センチに満たない身長ながら空中戦では絶対的な強さを誇り、両者とも守備の要としてW杯を制したという共通点があります。


要は長身とヘディングの強さにはさしたる相関関係がないということであり、ハーフナー選手が世界のトップレベルで通用するかは未知数であると言わざるを得ないのです。しかし、現在彼がザッケローニ監督の下で、今までにはなかったタイプの日本代表のストライカーとして多くのサポーターの注目を集めていることは間違いありません。Jリーグの得点王争いでも首位を走っておりますし、国内レベルでは苦労が報われて陽の目を見るようになりましたが、より高みを目指して奮闘して頂きたいと存じます。意外に足技がうまく、ポストプレーも出来るだけに、ヘディングに磨きをかけて2014年W杯では世界をアッと言わせるような活躍をして欲しいものです。

その前にアジア予選ですが、彼の高さはアジアレベルでは十分に脅威となるはずですので、まずはザッケローニ監督の信頼を確たるものにして、異色の日本代、ハーフナー・マイク選手の更なる成長を期待したいと存じます。

なお、余談になりますが、本来ならばハーフナー選手の前に高さで注目されなければならなかった平山相太選手がドン底より這い上がり、ハーフナー選手と共に和製ツイン・タワーとしてW杯の舞台で活躍するのを見てみたいのは私だけでしょうか。二人とも高さは勿論、足元のプレーは確かなので、奇想天外な発想ではないと思います。なでしこコジャパンがW杯を制するのですから、何が起こっても不思議ではないのが今の日本フットボール界。こちらも欲張って期待してみたいものです。