小さな行為が世界を変える 感動のノンフィクション

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 蝶が羽を動かすと、空気中の微粒子を動かし、それがほかの微粒子を動かし、さらに多くの微粒子を動かす。そうしているうちに、やがて地球の反対側で竜巻を発生させる。

 1963年、マサチューセッツ工科大学の気象学者であるエドワード・ローレンツ氏が提唱したこの「バタフライ効果(エフェクト)」という仮説は、発表当初、科学者たちの間で「たわごと」だと解釈されてしまう。
 しかし、長い年月が経過し、世界中の物理学者たちに正当性が認められ、今ではこの理論は「初期値過敏性の法則」として知られている。

 『バタフライ・エフェクト 世界を変える力』(アンディ・アンドルーズ/著、弓場隆/翻訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン/刊)は、この「バタフライ効果」を人になぞらえたノンフィクションだ。

 1970年ノーベル賞を受賞したノーマン・ボーローグ。
 彼は、病気にも強く、乾燥した気候にも育ち、収穫量も多いという画期的な小麦を開発し、20億人の命を救った。ノーマンは子どもの頃、父のトウモロコシ畑を眺めながら、ここに生えているトウモロコシをお腹が空いて困っている人たちにわけられたら、どんなにすばらしいだろうと思い、植物に関する知識を学んだ。
 そして、大人になり、ヘンリー・ウォレスという人物のもとで働くようになり、この特別な小麦を開発した。

 では、どうしてノーマンが20億人の命を救えたのか? それは、ヘンリー・ウォレスの支援があってのものだった。ウォレスは、後に副大統領となる人物で、世界中の人々に食糧を提供するための研究所を設立し、ノーマン・ボーローグを所長に起用した。
 さらに、そのヘンリーが幼少の頃、田舎の畑に植物調査に出かけていたのが、ジョージ・ワシントン・カーバー。さらにその育ての親は…。
 こうして20億人を救った小麦からさかのぼっていくと、多くの人とその想いが見えてくる。小さな行動がまわり回って、20億人の人を救うことになるのだ。まさに「バタフライ効果」だ。

 本自体が薄いため、さらっと読めるが、「あなたが、世界を変える力を持っている」という強いメッセージ性が込められている。自分の存在意義がわからなくなった時、生きる活力をもらえる1冊だ。
(新刊JP編集部/田中規裕)



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