だからこそ守備は安定していたのかもしれない。裏を狙われることもすくなかった。しかし、前線から連動した動きで高い位置でボールを奪うことのメリットを活かすことはできなかった。

　そういう意味で岡田ジャパンの前線からの守備というのは、攻撃面では多きなチャンスを作ることができる。同時にＦＷも含めての連動した守備は、世界と戦う上で必要なことだ。岡田監督はそんなトレーニングの中で選手たちに「世界」を意識させているように思う。しかし、“裏”を取られる場面も必然的に増えてしまう。

「これで、何点もゴールが決まっていたら、そう問題にはならないでしょう？」

　ＤＦラインの高さについて、質問を受けた中村俊は、しばらく考えたのち、そう応えた。もちろんその通りだ。しかし、裏を取られる場面の多くが、不用意な形でボールを失って……というミス絡みなのが気になる。
　守りを固めてカウンターというのは、アジアで日本の前に立ちはだかる中東勢の得意技。相手に良い所を消され、相手に得意な形を作らせる結果になってしまっているのだ。

　得点機は作れるが、失点のピンチも多い。それが岡田ジャパンのサッカーなのかもしれない。リスクを犯してでも攻撃の形を作るという意識は世界の舞台で必ず、生かされるだろうが、アジア予選では諸刃の剣となっている。だからこそ、得点機を得点にしなければならない。
「（相手は）強くなかったが、日本のサッカーが綺麗すぎた。足下ばかりで怖さがなかった」と大久保は自戒の念を込め話した。去年11月、中村俊が言った「これからは個々の強引さが必要だ」という言葉を思い出す。

　まだ２試合が終わっただけで、これから４試合が残っている。まだまだ何が起きるかはわからないアジア予選を戦いながら、世界を驚かせる日本のサッカーを築いていくという岡田ジャパン。初めてアジア予選を経験する選手も多く、Ａマッチ出場数がわずかな選手もたくさんいる。スムーズに勝ち進めるわけはないのだろう。傷つきながら学び成長していくことを信じるしかない。

text by 寺野典子


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