平成の田舎町を舞台に、内気な少年・翼と“特別”な存在の暁太郎の、30年以上にわたる友情と、ある事件による関係の変化を描く長編アニメーション映画『我々は宇宙人』が公開中です。門脇康平監督が自身の幼少期の記憶をもとに、企画・脚本・全カットの編集まで手掛けた力作です。

全編手描きのリアルな日常描写が呼び起こすノスタルジックな映像美と繊細な心理描写が世界で高く評価され、第79回カンヌ国際映画祭の監督週間やアヌシー国際アニメーション映画祭に選出され話題を集めた本作。

門脇康平監督、そして翼の友達で暁太郎の密かなファンであるバタ原を演じる松井ケムリ(令和ロマン)さんにお話を聞きました。

●すでに映画祭などで高い評価を得ている本作ですが、どのような感想が届いていますか?

門脇監督:気づいたら泣いていた、映画を楽しみに観に来ているのに忘れて自分事になっていた、キャラクターに憑依してストーリーの波に乗って心揺さぶられたとなど、さまざまな感想をいただきました。パッと上映後に明かりがついて、没入状態から現実に戻ったという方もいて、そういう映画体験になっていてよかったなと思いました。

●ボイスキャストのみなさんには最初にVコンテが届いたそうですね。その時の第一印象はいかがでしたか?

松井ケムリ:これは出来上がった映画を観たから言えることなんですけど、当時はたぶん今ほどちゃんとは分かっていなかったです(苦笑)。面白い作品だということは分かりましたが、映像のリアリティー、つながった映像で観るからこそ分かること、途中で暁太郎(岡山天音)の見え方が変わったりするので、そういうことも含めて、魅力の半分も当時は分かっていなかったと思います。

●演じられたバタ原については、どのように理解して収録に臨みましたか?

松井:翼(坂東龍汰)の友だちで、学校の屋上と階段の屋上の間…あれ、なんて言うんですか(笑)。

監督:名前が分からない場所(笑)。

松井:バタ原は、その名前が分からない場所に秘密基地を作っている少年で、性格としては我が道を行くところがあって、まわりからどう思われているかよりも、自分の幸せを優先できる人だなと思っています。そういう意味では、自分と重なるところもあるのかなと。

監督:バタ原は、主要キャラクターの中では、第一印象が強めです。翼はどこの学校でも誰もが話したことがありそうな存在を目指しましたし、“特別”な存在の暁太郎も、特殊な男の子ではあるけれども、学校にひとりいたような子という点では、普遍的な存在だと思うんです。

でも、バタ原だけは、どこの学校にもひとりはいたような存在というよりは、キャラクター固有の魅力・特徴を強く出すことを目標にしました。

松井:監督と初めてお話をした時に、見た目的にはポッチャリでクラスで目立つ存在ではないけれど、オタクみたいな話し方ではないと。だから、バタ原は何にも属していないので、変な印象が付かないようにすることは、難しかったかもしれないです。

●松井さんは声優が続いていますが、本業とは違う仕事はいかがですか?

松井:そうなんですよ。『トイ・ストーリー5』もやらせていただいて。

監督:びっくりしました(笑)。

松井:どっちが先の収録かは覚えていないですが、だいたいのお仕事をお断りすることは、そうそうないのでやらせていただいています。 お笑いをしていていかせることとそうじゃないことがあるので、面白いなって思いますね。違う世界が見られて楽しいですよね。

●なんでも門脇監督は、自身の当時の記憶や思い出を、この作品にパッケージングしておきたかったそうですね。

監督:ふたつ大きな柱があり、かつては仲良かった友人との疎遠という軸と、あとは初恋です。 このふたつが小さい頃の強烈な思い出としてあり、それについてとても長く考えてきたことがあったんです。『我々は宇宙人』を作るにあたり2時間のストーリーにして何を軸足にして演出していくかを考えていく時に、自ずとそのふたつがでてきたかなと思います。

●私的な体験を映画の題材にすることは、よくあると思いますが、実際、撮ってみていかがだったでしょうか。

監督:僕自身、そのことについて完成してみたらどうなるのだろうかと思っていました。僕にとってこの作品を作ることは、自分の過去への卒業式みたいなもの。5年間かけて自分のこれまで考えてきたことをアウトプットしてみたら、もしかしたら過去への執着みたいなものなどに区切りがついて卒業できる、この制作でそうなるのかなと。

でも結果としては、区切りが付くようなテーマではなくて、これから先も考え続けるべきものだったんだと思いました。完成したからといって、過去へのふんぎりがついた、ということでは必ずしもなかったと思います。

松井:僕は自分と向き合うことってあまりないんですけど、何かを作る時に経験からのアウトプットになることはあります。友人との疎遠や初恋というテーマに監督が長い間向き合って来たからディテールが細かいのだと思うし、神が細部に宿ると言いますか、とてつもないリアリティーがある分、普遍的なものとして描かれていると思うんです。

●おっしゃるように普遍性が高いので、いつの間にか自分の話のように受け止めてしまうところもありますよね。

松井:本当そうなんですよ。自分の小学校の話だったような気がするんです。「あれ、通っていた小学校だ!」と、映画を観ていて思う。

監督:それは意図している部分でもあるんです。長編で多くの方に届けるものなので、個人的な話を軸にしていても普遍的なことは考える。共感してくれない特異すぎるテーマも僕の中にはあると思うんですけど、僕は、僕が経験した疎遠や初恋は自分だけのものではないと思っていたから、同じ人生を歩んでいたわけではないのに共感はできるんです。

●最後になりますが、映画『我々は宇宙人』は、どのような方たちに観てほしいでしょうか?

松井:誰もが自分事として楽しめる映画だと思うので、誰にでも観てほしいです。劇中で出てくるもので言ったら、僕と監督と同じ30代前後の人たちには、出てくるもののディテールがすごいので、絶対楽しいです!

門脇監督:普段映画館に行き慣れていない人にも観に来ていただきたいです 。ちょっと難しそうなのかななどと気にせず、物語に身を任せてほしいです。

■公式サイト:https://nothingnew.film/wearealiens/ [リンク]

■ストーリー

「ピーピロリロリロ。地球での極秘任務完了。宇宙へ帰還します!」

平成のある田舎町

内気で“普通”であることに悩む少年・翼は、

小学三年生の春、クラスの人気者で“特別”な存在の暁太郎と出会い、親友になる

二人だけの遊び、意味のない会話、夕暮れの帰り道-

世界は確かに、彼らのものだった

しかしある日を境に、暁太郎はクラスの中で浮いた存在となり、噂や視線が彼を囲んでいく

やがて起こる、取り返しのつかない事件

「もしもさ、俺が宇宙人だったらどうする?」

これは二人の青春物語なのか それとも消したい記憶なのか

30年にわたる友情を描いた、かぎりなく青い旅立ちの物語-

『我々は宇宙人』
英題:『We are Aliens』
大ヒット上映中
配給:TOHO NEXT・NOTHING NEW
企画・脚本・監督:門脇康平
キャスト:坂東龍汰、岡山天音 ほか
音楽:Yaffle
主題歌:adieu「ささくれ」 作詞・作曲:Yaffle(Sony Music Labels)
© NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS
企画・製作・制作:NOTHING NEW
協力:MIYU PRODUCTIONS

(執筆者: ときたたかし)