アニメ「おぼっちゃまくん」35年ぶり復活、元テレ朝Pが期待「子どもに見せたくない番組」にこそ存在意義
1989年から1992年にかけてテレビ朝日系で放送されたアニメ「おぼっちゃまくん」が、35年ぶりの完全新作『おぼっちゃまくん REBORN』として2027年に復活することが10月1日、発表された。
原作は小林よしのりの昭和を代表するギャグ漫画だ。2021年に旧アニメがインドで大ヒットしたことをきっかけに、今度は日本とインドの共同制作でよみがえるという。時代も海も飛び越えての復活だ。
「ともだちんこ」「いいなけつ」など、パワフルかつ下品な流行語を次々と生み出し、「親が子どもに見せたくない番組」としても一世を風靡したアニメだ。
「コンプラが厳しくなってテレビがつまらなくなった」とも言われる現代に、なぜ「おぼっちゃまくん」なのか。かなり大胆な企画に見えるが、私は「非常によく考えられた巧みな戦略だな」と感じた。
そもそも「子どもに見せたくない番組」は本当に排除すべきものなのだろうか。「クレヨンしんちゃん」の放送開始とほぼ同時にテレビ朝日に入社した経験も踏まえて、考えてみたい。(テレビプロデューサー・鎮目博道)
●親世代には懐かしく、インドでは大ヒット
「おぼっちゃまくん」のアニメ放送が始まったのは1989年。現在の子どもたちの父母、さらには祖父母の世代にも、この作品を見て育った人は少なくないだろう。
当然、当時のファンもいるはずだ。多少下品なセリフが飛び出しても、「懐かしい」と新作を楽しむ人は多いのではないか。
そこに「インドで大ヒットして、日印共同制作で復活」というストーリーが加わる。これだけでも十分キャッチーだ。
原作者の小林よしのりさんが全面監修するオリジナルストーリーも描かれるというから、「これは見てみたい」と思う人も多いだろう。
仮に日本で大ヒットとならなくても、インドでの実績がある。国内の懐かしさと海外での人気。その両方を取り込めるという意味で、番組企画として非常によくできていると思う。
●「クレヨンしんちゃん」には苦情が殺到した
思えばテレビ朝日は、かつて「子どもに見せたくないアニメ」と言われた作品を世に送り出してきた。
私が同局に入社した1992年4月、ほぼ同時に始まったのが「クレヨンしんちゃん」だった。
新入社員だった私は、会社に寄せられる苦情の多さに驚いた。「下品すぎる」「子どもに見せられない」といった声だ。
ところが、「クレヨンしんちゃん」は確実に子どもたちの心を掴み、ファンを増やし続けた。そして今や、日本を代表するアニメの一つとなっている。
だから私は、「子どもに見せたくない番組」の存在意義を一概には否定しない。むしろ、大人が眉をひそめるような番組の中から、長く愛される作品が生まれることもある、とすら思っている。
●ドリフも「低俗番組」と呼ばれた
私が子どものころ、学校では「8時だョ!全員集合」の話題でもちきりだった。
しかし、大人からは「低俗番組」と呼ばれ、「子どもに見せたくない番組」の代表格だった。
私はこの番組を少しも低レベルだったとは思わない。テレビマンになってから知ったのは、今では実現不可能と思えるほど手間と時間をかけ、丁寧に作り込まれた番組だったということだ。
私たちの世代は、そんなドリフを見て大人になった。
世の中には、学校や家庭だけでは知ることのできないものがある。それを面白おかしく見せてくれる「ちょいワル先輩」のような存在も、テレビの一つの役割なのではないかと私は思っている。
●「下品」と「コンプラ違反」は違う
こう書くと「時代錯誤だ」と言われそうなので、ここははっきりさせておきたい。
私が言う「子どもに見せたくない番組」は、コンプライアンスを無視した番組とイコールではない。
かつてのテレビには人権感覚に乏しい面があり、人を傷つけることを笑いに変えてしまうような表現が少なくなかった。残念ながら、そうした風潮が現在のテレビから完全になくなったとは言えない。
人権を侵害したり、誰かを傷つけたりするような番組はなくしていくべきだと私は思う。
一方、「8時だョ!全員集合」や「おぼっちゃまくん」「クレヨンしんちゃん」は、少なくとも「下品だから」という理由で大人が眉をひそめてきた番組だ。
ここは分けて考える必要がある。「下品」と「コンプラ違反」は同じではない。
子どもに伝えようとする内容やメッセージが間違った方向性に向いていないのなら、わかりやすく、笑える「下品な表現」を使うことまで社会が許容しない必要があるのだろうか。
今のテレビから「下品さ」が減ったのは、本当にコンプライアンスのためなのか。それとも「スポンサーが嫌がるかもしれない」という過剰な忖度もあるのではないか。
●変に「お行儀よく」ならないでほしい
聞くところによると、「おぼっちゃまくん」がインドで人気を集めた時期はコロナ禍と重なっていた。暗い世相の中、この作品に明るくしてもらったと感じた現地の人たちもいたという。
新しい「おぼっちゃまくん」にも、日本の子どもたちが心の底から笑える世界をぜひ作ってほしい。
インド版では「ともだちんこ」に代わって、「フレンドリッチ」というあいさつが登場するらしい。日本版でも同じようになるかは明らかにされていない。
ただ、あまり気をつかいすぎないでほしい。
35年ぶりに復活するのに、変に表現を丸めて「お行儀のいいアニメ」になってしまったら、何のために復活させるのかわからない。
時代に合わせて変えるべきところは変えればいい。それでも「おぼっちゃまくん」らしさだけは、失わないでほしいと思う。

