AI時代の事務所運営、岡野武志氏「ベーシックな情報発信大切」 弁護士・税理士らが討論
生成AIが普及する中、専門家がユーザーから選ばれるにはどうしたらいいのか--。弁護士や税理士ら4人が10月2日、東京都港区で開かれたイベントで、AI時代の士業の在り方について議論した。
北周士弁護士がファシリテーターを務め、アトム法律事務所の岡野武志弁護士、sankyodo税理士法人CEOの朝倉歩税理士、日弁連弁護士業務改革委員会委員長の平岡敦弁護士の3人が登壇した。
平岡弁護士はAIを活用すれば、年齢を重ねても労力のかかりそうな事件や未知の領域に踏み出せるとして、「AIは士業にとってピンチでもあるが、チャンスでもある」と話した。
●「AIはネットの情報をよく読み込んでいる」
AI時代に選ばれる士業とは--。
SEOやマーケティングにくわしい岡野弁護士は、どうやればAIに推薦されやすくなるか、に着目した。
岡野弁護士によると、アトム事務所は顧問先がゼロだという。インターネットから集客するために、事務所設立以来、20年近くにわたってSEOを極めてきたという経緯がある。
「AIもほとんどはウェブの中の知識。自分の扱っている情報や得意な分野を定期的に、AIが読みやすい形で配信してきました。そういうものが積み重なると、AIにピックされやすくなるのかなと思います」
仮に実績がないところから対策するとしたら、と問われると、AIはネットの情報をよく読み込んでいるとして、「プレスリリースや広告を出すときも、事業内容などベーシックなところから書いて、一貫性を持たせることが大切」と話した。
●贅沢品でも選んでもらえる士業に
岡野弁護士が「toC」の観点から話したのに対し、朝倉税理士は「toB」の観点から考えを披露した。
「toCとtoBが違うなと思うのは価格面。税理士業界でも、生成AIによってどんどん安くやっていこうという流れがある。でも、私は価格競争ではなく、価値競争をしたい。(税理士が)必需品から贅沢品になっていく中で、事業が成長し、そろそろ贅沢品を買おうかなと思ったときに、選ばれる税理士でありたい」
税理士業界では、生成AIに脅威を感じ、AIの勉強に時間を費やす税理士が増えているという。
これに対し、朝倉税理士は「本業より技術を追いかけてしまうような風潮がちょっと行きすぎているのではないか」と感じているという。
朝倉税理士のsankyodo税理士法人は、業界でもいち早くデジタル化を進めてきた事務所の1つだが、自身が「メロン」であることを知ってもらうためにも、磨くべきは専門性や顧客とのコミュニケーションであると考えているという。
朝倉氏は「プロダクトの強さは1日ではできない」として、AIを使うのは大事だが、機械にできることを追いすぎることなく、地道に顧客体験を上げていきたいと述べた。
●平岡弁護士「AIを活用すること」
「AIを活用することが重要」と強調したのは、日弁連の弁護士業務改革委員会委員長も務める平岡弁護士だ。
「AIを活用できるようになって、未知の分野に踏み出しやすくなった。数を受けてもレスをしやすい。そういう分野に踏み出していく姿勢が大事です」
年齢を重ねると、体力的に大きな事件や証拠が多い事件などを避けたくなることもあるという。しかし、「年寄りでもAIがあるなら、なんとかなるんじゃないかと思った」。
使い方でビジネス領域が広がるし、地理的な差も埋まるとして、「ピンチでもあるけど、チャンスでもある」とまとめた。
イベントは、弁護士ドットコムが初めて開いたユーザーカンファレンス「PARADIGM(パラダイム)2026」。パラダイムは「枠組み」を意味し、AIの進化などで社会が急速に変化する「正解のない時代」の新たな枠組みを考える場として企画した。

