厳しい内政、対中関係強化目指すか-発足から半年のチリ新政権

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チリのカスト右派政権が3月11日に発足してから半年余り。治安回復と経済再建に取り組んでいるものの、前途多難だ。最大の外交課題である対中外交をどうするかが、内政にも影響しそうだ。

議会運営にも苦労

カスト大統領は発足当初から、治安回復、経済活性化および制度改革の三つを優先課題とすると約束している。

チリでは近年、ベネズエラなどからの不法移民が大量流入した上、凶悪犯罪も急増するなど治安が悪化しており、カスト大統領は不法移民対策を強化、北部国境での「壁」の建設にも着手した。ただ、治安対策強化のための憲法改正に関しては野党だけでなく与党や右派政党からも反対論が出ており、順調に進むかは予断を許さない。

経済面では法人税率を現行の27%から23%に引き下げることを骨子とする経済改革案を議会で成立させることに成功した。だが、野党側の反対などもあり、迅速な履行とはいかないもようだ。

議会対策も容易ではない。カスト政権の与党は単独では過半数を有していないため、他の右派政党や中道政党との調整に苦労している。

失業率やインフレ高騰も懸念材料

カスト政権にとって気がかりなのは景気減速傾向が目立ち始めている点。チリ中銀が9月上旬に発表したところによれば、今年の国内総生産(GDP)の実質成長率は0.25%-0.75%と見込まれる。チリ中銀の6月の発表では1.0%-1.75%だったのに比べ、大きく下方修正されたことになる。国内需要が伸びないことに加え、鉱業生産の低迷や豪雨による経済への悪影響が重なったためとみられる。

さらに雇用情勢の悪化にも懸念が広がる。チリ国家統計局(INE)によれば、今年3-5月の失業率が2021年以来の高水準を記録した。中東情勢の混乱による燃料価格の上昇から高騰したインフレ率は一時減速傾向にあったが、再び加速しており、9月初めのINE発表では前年同月比4.1%と、チリ中銀のインフレ目標3%を上回った。

11月の訪中に期待感-カスト大統領

こうした厳しい内政に影響を及ぼす可能性が指摘されるのは中国との関係だ。それもそのはず、チリにとって最大の貿易相手国は中国で、今や対中貿易がチリの貿易額全体の約40%以上を占める。チリ経済のさまざまな面で中国の存在が大きい。そもそもチリは中国との経済的結び付きが強い。

2012年にチリと中国は「戦略的パートナーシップ」協定を結び、2016年には「包括的戦略パートナーシップ」に格上げ、2019年には中国の広域経済圏構想「一帯一路」に加盟を決定、中国主導の「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)にも加わっている。チリは世界最大のリチウム埋蔵量を誇るが、中国企業がチリのリチウム会社の株式の25%を取得している。電力部門、高速道路、地下鉄といったチリの主要インフラには必ずといっていいほど中国が肩入れしている。

現地の有力アナリストは「中国はチリ経済にとってもはや、不可欠の存在」と強調する。8月にはチリからペレス外相が中国に派遣され、王毅外相(党中央政治局委員)らと会談、対中関係の一層の関係強化を確認し、新たな経済協力を中心に話し合ったとされる。11月にはカスト大統領の訪中も予定されている。中国からの一層の経済支援が続けばチリ内政にも大きなプラスになるのは確かだろう。

親米路線も、対中関係無視できない-カスト政権

その一方、カスト大統領は「チリのトランプ」との異名を持つほど、トランプ米大統領と政治スタイルや言動がよく似ており、親和性が高いといわれる。トランプ政権が中南米での中国の影響力拡大に神経を尖らせているのは周知の通り。最近では麻薬組織対策のため「米州の盾」という政治連合を結成、中南米の右派政権の参加を促している。

中南米の専門家によれば、これは名目上「麻薬組織対策」だが、もう一つの重要な狙いは中国の影響力排除だという。チリのカスト政権も同連合に参加を表明している。トランプ政権としてはチリが中国にこれ以上接近しないよう食い止めようとの狙いがあるとの見方も有力。カスト政権は外交面では親米に傾いても、国内経済のことを考えれば中国との関係を重視せざるを得ないはずだ。11月に予定されるカスト大統領と習近平国家主席の会談がどうなるのか。結果次第では二国間関係だけでなく、中南米全体にも影響が及ぶかもしれない。