“上から叩け”で「ヒットは打てない」 最短距離、ヘッド位置…「昔と違う」最新理論
2133安打も現役時に知りたかった…宮本慎也さんが最新打撃理論を伝授
「上から叩け」「ヘッドを立てて」。そうした打撃指導はいまだに見られるが、時代は変わってきている。元ヤクルトの宮本慎也さんが、5月30日に東京都内で、大手スポーツメーカー・ミズノが主催する「大人の野球レッスン」に講師として登場。学んできた“最新理論”で、ヒットや長打の確率を上げる技術を伝えた。現役19年で2133安打を積み上げた宮本さんですら、「僕らが教わってきたものとは全く違う」という今の理論とは――。
宮本さんはこの日、草野球愛好家、野球ファン、少年野球の指導者など、抽選で選ばれた延べ35人の大人たちに、守備・打撃についてそれぞれ2時間、レクチャーを行った。打撃では「現役時代に知っておきたかった」という最新の技術論をわかりやすく解説した。
「昔であれば、上から叩きなさいとか、最短距離でバットを出しなさいとか言われてきたと思いますが、今はもう打撃論も変わってきています」と参加者に語りかけた宮本さん。
例えば、“最短距離”という言葉の解釈について。一昔前であれば文字通り、ボールへの最短の到達距離であり、「上から叩く」ダウンスイングが推奨されてきた。しかし、現在では「ボールのライン(軌道)にいかに早くバットのヘッドを入れるか。それを“最短距離”と解釈してほしい」と言う。
理由は明快だ。上から叩けばボールを“点”でしか捉えられず、バックスピンがかかって、レベルが上がるほど野手の間を抜きにくくなる。逆に軌道に素早くバットを入れ、ボールを「横からつかまえにいく」ことで、ボールを“線”で長く捉えられ、強い打球や長打の確率が上がる。「上からつかまえに行った瞬間、打球は弱くなる。できるだけ(水平より)やや下からヘッドを出していくのが理想」と宮本さんは説明した。
“ゴロを転がせ”に疑問…ライナー・フライが「圧倒的にヒットの確率が高い」
「ヘッドを立てて」も、今では“正反対”となる。「『グリップエンドをボールにぶつけにいくように』と教わった人もいると思いますが、そうするとヘッドは上に残ります。打球を上げるには、グリップエンドをできるだけ(上に)残して、ヘッドが下がる形が理想です」。
軸足(右打者なら右足)側から振ること、肩のラインとバットを並行にすること、前傾姿勢で体の軸に対して90度の角度で振ることなど、「一番力が伝わり、打球速度が上がる」スイングを解説。実際に、宮本さんがティースタンドで軟式球を打ってみせると、従来の振り方と最新の振り方とでは、打球角度も、打球音の力強さもまるで違った。
「軟式では打球を転がせば、捕る→投げる→捕るの3アクションの中で何か起きると言われますが、ヒットはなかなか打てないです。ゴロよりもライナー・フライの方が圧倒的にヒットになるパーセンテージが高い。それに皆さん、やっぱりホームランを打ちたいですよね?」
参加者たちは実際に、ティーやマシンで宮本さんからアドバイスを受けながら、最新の打撃を実践。もちろん簡単ではないが、皆真剣な表情でバットを振り込んだ。少年野球のコーチを務めているという江川大地さんは、「自分も軟式でゴロを打つバッティングをしてきたので、強いライナーやフライを打つ意識は子どもたちに還元できるし、宮本さんから直接教えていただき、自信を持って指導にも生かせる。夢のような体験でした」と振り返った。
昔の感覚だけでやっていては「野球界は進みません」
現役を退いて13年経っても、最先端の考え方を仕入れ、自身のYouTubeチャンネルでも発信している宮本さん。「打ち方も投げ方も、僕らが教わったのとは全く違うものが、科学的にも統計的にも正しいと証明されている。僕らの頃は、速い球を投げるのも、遠くに飛ばすのも天性と言われていましたけど、体の仕組みを理解し、トレーニングを積んでいけば、今ではある程度は作れます」。
名球会打者でありながら、現役時代の技術に固執しないのは、何より球界の発展を願うためだ。
「僕らが昔の感覚だけでやっていては、野球界は進みません。野球に携わっている以上、変わっていくものはちゃんと勉強して伝えていかないと、という気持ちがありますね」
現在は中学生指導にも関わり、代名詞だったバントを禁止する学童大会も開いている宮本さん。こうしたイベントを通じて大人たちに伝えることで、“正しい技術”が子どもたちにも伝播していってほしい。そう強く願っている。(高橋幸司 / Koji Takahashi)

