よくみると種類でキレイさが違う! 冷凍トラックに「ボコボコ」なクルマが多いワケ
この記事をまとめると
■リヤの凹みが目立つトラックが存在
■車両に注目してみると、その多くは冷凍車だ
■凹んだ冷凍車が多い理由を解説
積み下ろしの際にリヤを破損しやすい
道行くクルマを眺めていると、後部が不自然にボコボコになった箱型のトラックを見ることがあるだろう。テールランプの周辺やリヤバンパーなどが激しく破損しているトラックを見かけると、「派手に追突されたのだろうか」と思ってしまいがちであるが、その大半が冷凍車であることに気付かされる。それは、単なる偶然なのだろうか。
その答えは、NOである。後部がボコボコになっている大きな理由は追突事故などではなく、冷凍車ならではの業務体制や、仕事現場の環境によるものなのだ。それゆえにやむを得ない部分もあるのだが、キレイに着飾ったデコトラや美しさを維持しているようなトラックでは、ボコボコの車両を見る機会が圧倒的に少ない。そこには、どのような理由があるのか。かつて冷凍車のハンドルも握っていた筆者が、冷凍車ならではの特徴について綴りたい。
年中無休のコンビニエンスストアや、スーパーなどが一般的になった現代。そしてそれらの数が増えるとともに、冷凍車の需要も高くなってくる。賞味期限が短い食品や飲料、そして鮮度が命の鮮魚や野菜、さらには冷凍食品などを運ぶ冷凍車は、そんな年中無休24時間営業の店舗と深い関係にあるのである。
そのため、冷凍車による運送の世界では、365日稼働している会社が多くなる。もちろんドライバーの休日はきちんと確保されているのだが、トラックは別だ。大手やノーマルの冷凍車を数多く揃えるような運送会社はトラックを休ませることなく、ローテーションでトラックを回しているのである。
そのなかでも一般的なのは、トラックを担当しているドライバーが休みの日だけ、代わりのドライバーがそのトラックで仕事をするというもの。専用車ではないため私物は置けないし、自身の好みで内装や外装をカスタムすることもできなくなる。そのような会社にはトラック好きが入社することはないに等しく、結果としてただ仕事だから乗っているという職業ドライバーばかりになってしまうのだ。そうなるとトラックを大切に扱わないため、傷や凹みが生じてしまうのである。
それだけではない。荷物の積み下ろし現場の環境も大きく影響している。冷凍車の場合、リヤの扉を開けて、冷凍冷蔵庫に直結するバースと呼ばれる場所にトラックのリヤを接車させ、荷物の積み下ろしを行う。その際、冷凍冷蔵庫内の冷気を逃さないようにするため、そして虫の混入を防ぐため、スポンジやゴムでできたブースにトラックをブツけるような感じでぴったりと接車しなければならないのだ。バースの地面に該当する部分はコンクリートがむき出しの現場も存在し、バースの下部が奥まっている場所は良心的だがツライチの場合もあるため、きっちりと接車させるためにテールランプの部分やリヤバンパーなどを破損してしまうことがままあるのである。
フォークリフトが当たっているケースも
自社の冷凍車がボコボコになってしまうことを嫌う運送会社では、ドライバーに担当車を与える傾向が強い。そうすることで責任感を養わせているのだが、そのような会社にはトラック好きの人材も集まってくるもの。
いくら冷凍車の現場がトラックを破損しやすい環境にあるとはいえ、キレイな冷凍車も数多く存在している。近年ではバックカメラが一般的に装備されていることも手伝い、トラック好きであれば、バースへの接車も慎重に行いやすくなった。わかりやすくいうなれば、トラックを丁寧に扱っていれば、当然のごとくボコボコにはならないのである。もちろん気を抜けばトラックを破損してしまいやすい環境で仕事をしているだけに、防げない部分もあるのだが……。
そして、どうしようもないケースも存在する。バンパーなど後方を張り出させたデコトラほど被害に遭う確率が高くなってしまうのが、鮮魚や青果輸送などに励む冷凍車。現場によってはリヤからフォークリフトで荷物を積んでもらうことが多いのだが、リフトマンに激しくブツけられてしまうことがあるのだ。ブツけた相手は荷主など立場が上の人物であったりするため、泣き寝入りをせざるを得なかったりする。ともあれ、冷凍車の世界にも目に見えない苦労がつきまとっているのだ。
トラックに限らず、仕事道具を大切に扱う人と、無碍に扱う人が存在する。そのどちらがきちんとした仕事をするのかは、いうまでもないだろう。トラックを大切にするということは、荷物を大切にするということにつながる。そして、運転にも気を使うため、事故を起こす確率も低いとさえいえるだろう。
無責任な職業ドライバーを量産するのではなく、トラックを大切に扱う優秀なトラックを育てて確保するためにも、ドライバーに担当車を与えることが最優先事項であるように思う。そのためには予備車と呼ばれるピンチヒッターのトラックを用意しなければならないが、365日稼働している冷凍車の世界では、予備車はそもそもマストアイテム。急な事故や故障に対応させるために、予備車を用意している会社がほとんどだからだ。そして、そんな予備車さえあれば、ローテーションで与えられている各ドライバーの休日を補うことができるのである。
目先のお金をケチって予備車の準備を避けるのではなく、優れたドライバーの育成に重点を置く運送会社ばかりになってくれるような時代になることを、切に願う次第である。