フジテレビ

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フジテレビの新人・上垣皓太朗アナウンサーに対し先輩アナらが「容姿いじり」をしているとして、「めざましmedia」が2024年7月に公開したYouTube動画が波紋を広げている。フジテレビは「ご指摘を真摯に受け止め、今後はより一層コンテンツ制作に留意してまいります」とコメントしているが、批判の声は止まない。

なぜ、ここまで「炎上」してしまったのだろうか。専門家は「80年代、90年代に当たり前だったことが今は当たり前じゃないという認識が、テレビ局内のスタッフに全く足りていない」と指摘する。

「すごい似合わないね〜、Tシャツが」

問題となったのは、上垣アナが「めざましどようび」のお天気キャスターを務めた際の、スタジオにいる阿部華也子アナ、生田竜聖アナ、西山喜久恵アナとのCM中のやり取りだ。

先輩アナらは、「FNS27時間テレビ」のTシャツを着た上垣アナに「すごい似合わないね〜、Tシャツが」「ポップなデザインが似合わないね〜」とからかった。上垣アナは「個人的にはすごく、似合ってると思っていました」「似合う男になります」と前向きに返している。さらに01年生まれの上垣アナに、先輩アナらは「2001年!?」「信じられない」「絶対噓つきだ」などとその落ち着いた風貌と年齢のギャップに驚いてみせた。

動画には、先輩アナらがお天気キャスターの仕事を終えた上垣アナに、その仕事ぶりを称賛する場面もあったが、10月29日頃から動画がXで拡散され、「上垣アナ可哀想、、」「あんなん公開いじめだわ」などと批判の声が寄せられた。

フジテレビは31日、J-CASTニュースの取材に、「上垣アナの奮闘ぶりを伝えたいという事で、OAされていないCM中のやりとりを制作側の判断で編集し公開しました」と動画の意図を説明。「私たちは今回寄せられたご指摘を真摯に受け止め、今後はより一層コンテンツ制作に留意してまいります」などとコメントした。同様のコメントを公式サイトでも発表している。

今回の動画では、実際に上垣アナ自身が先輩アナらの言葉を不快に思ったり、「いじめ」だと感じたりしているかは不明だ。それにもかかわらず、なぜここまで「炎上」してしまったのだろうか。毎日放送(MBS)の元プロデューサーで同志社女子大・影山貴彦教授(メディアエンターテインメント論)に話を聞いた。

当事者同士が成立していても、周りで見ている人間が......」

影山教授は、大学の自身の授業でこの「炎上」について取り上げた際、学生たちから

「当事者同士が成立していても、周りで見ている人間が、『これは不快だわ』とか『これはじいじりじゃなくていじめだ』と思ったらそれはアウト」

といった意見が出て、影山教授もこれに同意したという。今回の「炎上」について、「ましてやメディアの仕事としてYouTubeに公開してオープンにしているわけですから、(今回のフジテレビの一件は)大いに反省すべきことだと思います」とみる。

テレビ業界ではかつて、新人を成長させるために先輩があえて「いじる」ようなことはよくあったとする。しかし、現代はそれが当たり前ではなく、影山教授は今回の「炎上」の要因について、「80年代、90年代に当たり前だったことが今は当たり前じゃないという認識が、テレビ局内のスタッフに全く足りていない」と指摘した。

時代錯誤が分からない制作陣、CM中に油断する先輩アナ

そのうえで、影山教授はまず、動画を公開した作り手の責任に言及した。

今回のやり取りを公開したということは、作り手側がそれを「面白い」と捉えたからだと推測される。影山教授は、その感覚を「時代錯誤」だとし、さらに「時代錯誤という認識がない」とも指摘した。

次に影山教授は、先輩アナらの問題点についても言及する。

今回問題となったのは、本来であればオンエアされないCM中のやり取りだ。一方で、先輩アナらが上垣アナを褒めているのは、「放送後コメント」として公開を前提に撮影されたものだった。

影山教授は、先輩アナらはCM中、公開されるという意識がなく油断していた可能性があったとしつつ、そうであったとしても公開映像と落差のある発言は「演者として好ましくない」と指摘した。

また、「(先輩アナ)3人とも悪気はないと思います」としつつ、彼らのアナウンサーとしてのきれいな発音、アクセント、口調が、より「厳しくきつく」聞こえてしまったことも「炎上」の一因ではないかとも指摘。「自分の話す言葉がどのように響くのか。言葉の使い方をしっかり身に着けてほしい」と話した。

「表裏の差を限りなく少なく」

さらに、影山教授は「炎上」後のフジテレビの対応にも問題があったと指摘する。

問題の動画はコメント欄が閉鎖されているが、コメントを発表後も削除はされずに公開されたままだ。

「反省の弁を述べるのだったら、もうこのようなことがないようにと、動画も閉じるべきじゃないかなと思います」

では、これからの時代、メディアが発信をする際に気を付けるべきことは。影山教授は「表裏の差を限りなく少なくしなければいけない」と指摘する。

「これをしておけば大丈夫、とやり過ごすのではなく、頭のてっぺんから足のつま先までしっかりと今の時代、社会を理解し、それを番組に反映させていけば、素晴らしい番組を提供し続けることができると思います」