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 阪神・藤川球児新監督(44)の言葉で胸に刺さったものがある。15日の就任会見。長時間の対応の中で口にした「僕の人生」という一言が、グっときた。行間に、「今までと同じように自分が信じる道を進むだけ。他人評価は気にしない。自分の人生なんだから」という強い意志を感じ取れたからだ。

 批判と隣り合わせの職務、家族の心配の有無、コーチ経験がないままの監督就任など、多方面の質問を受けながら、終始、にこやかなまま。受け答えに迷いがないのは、総て「僕の人生」と腹をくくっているからだろう。空気を読んで無難な道を選ぶことが多い40代半ばの当方としては、真横で話を聞いていて、まぶしく見えた。

 こんな感じで、藤川新監督は日々の会見でポツポツとキラーワードを放つ。そこには、前任者の岡田監督とは違った面白みがある。

 振り返ると、本音、裏話、昔話が絶妙に絡み合った岡田監督のトークは、なんだか落語のようだった。成功のためのちょっとした知恵、人生訓、人情話もちりばめられ、だいたいオチが付いた。いつも引き込まれた。お涙ちょうだいの話だけはなかったけれど。

 藤川新監督は、経営者のメッセージのような趣がある。集団を束ね、人の気持ちを高める言葉を選んでいる節がある。聞けば、引退後は書籍をよく読んでいるそうだ。選手、コーチに響く言葉を、本を通じて学んでいる姿勢が浮かび上がった。

 さて、本日24日はドラフト会議。昨年の阪神は、青学大・下村を単独指名した。競合を避けたかった岡田監督の意思が反映されたと伝わる。ドラフトは、スカウト業務の総決算。自分の運勢で、その仕事に泥を塗りたくないという思いから、クジ以外の道を選んだと聞く。

 今年はどうか。前日23日のスカウト会議後、藤川新監督は1位指名を「当日になる」として明かさなかった。情報の一切を伏せる中で、唯一残したヒントは、「僕らしいかどうかは、(指名した選手が)所信表明みたいになる。見ておいてもらえれば」という言葉。現役時代は直球勝負が代名詞だった指揮官。「所信表明」が指すのは、1番人気となりそうな関大・金丸と読み解くのが自然だろう。それとも…。(阪神担当・倉世古 洋平)