戸建てだけでなく、集合住宅にもリスクが潜む(画像:うぃき/PIXTA)

またもや高齢者の1人暮らしや女性だけで暮らす住宅が狙われた。

関東で連続して起きている強盗事件。9月中旬頃から埼玉や東京で多発し、10月16日には神奈川県横浜市で、75歳の男性が手足を縛られて死亡しているのが見つかった。

また、翌17日には千葉県市川市で、70代の母親と暮らしている50代の女性宅に強盗が押し入り、女性が一時連れ去られる事件も発生している。

その後、女性は無事保護され、一緒にいた26歳の男が逮捕された。男の指紋が横浜市の事件現場にも残されていたという報道があり、一連の事件が関連しているのではと疑われている。

データが裏付ける「強盗事件の増加」

体感として、最近、強盗事件が増えているように思う人も多いだろう。そしてそれはデータも裏付けている。

警察庁の「住まいる防犯110番」によると、住宅を対象とした侵入強盗は、2004年を最多とし、2005年から2021年まで減少傾向にあったが、2022年から2023年にかけて2年連続で増加しているという(最新データの2023年は152件)。

また、侵入強盗の際に強盗殺人・致死や強盗傷人、強盗・不同意性交等があったケースは、2023年に133件起きている。これも、2004年から2021年までは減少傾向にあったものの、やはり2022年から2年連続で増加している。

最近報道されている事件も、被害者に危害が加えられており、高齢者の1人暮らし、または女性の2人暮らしが狙われているケースが多い。犯罪の凶悪化、そして家族構成などの情報が犯行グループに詳細に把握されていることが明確になったと言える。

筆者は先日、こうした情報が犯罪者に流れる「闇名簿」の存在を指摘したが、依然、その危険性は増しているだろう。

「闇名簿」は、訪問販売やアンケート調査を装った情報収集によって名簿が更新される。筆者がある番組の取材に立ち会って見た闇名簿には、自宅住所や電話番号はもちろん、「電話に応じる」「最近配偶者が死亡」「自宅内事務所に金庫有り」など、詳細な情報が記されていた。

今回の横浜市の事件現場周辺でも、事件の少し前から怪しい訪問業者などが目撃されている。報道によれば、「水道漏れがないか調べたい」「屋根を調べたい」などと近辺の住宅を回っている不審人物がいたとのことだ。

怪しい人物がいたら、ためらわずに「#9110」へ

犯行グループは、必ず下見や不審な連絡をして、ターゲットを見つけている。耳にタコかもしれないが、とにかく怪しい訪問や連絡、こちらが頼んでもいないセールスには応じないことだ。

少しでも応じてしまうと、家庭内の情報が犯罪グループに知られるだけでなく、「応じてくれた」ということ自体が「狙いやすい標的」の証しとして闇名簿に記されてしまう。

筆者が見た闇名簿には、「携帯電話をすぐ切る」「アンケート回答に応じず」といった記載もあった。応じてくれない家だと思わせることができれば、標的から外れる可能性は高まるだろう。

セールスではなくても、たとえば不用品の回収や障子の修理など、自宅に他人を入れなくてはならない問題が起こったら、“家に入れてしまう前に”まずは信頼できる人に相談するのがいい。相談できる人が思い浮かばない場合は、後述する「#9110」に連絡しよう。

世知辛いが、疑いすぎなくらいがちょうどいい世の中になってしまったのだ。

そして住宅周辺に、地域と関係がないナンバーの車が訪問してきたり、長く駐車していたりしたら、「#9110」もしくは管轄警察署に情報を入れることが一番だ。

#9110」は警察相談専用電話で、“急がない110番”とも言われる。まだ事件になっていなくても、生活の安全に関する不安や悩みを相談できる番号である。「こんなことで……」と思う情報でも、緊急用の110番回線を塞いでしまうことはないので、ためらわずに電話を入れてほしい。

こうして不審情報を警察に集積することで、地域の防犯に役立つことになる。ただし、本当に緊急である場合や訪問者がしつこい場合は110番通報をすべきである。

安全と言われるマンションにも潜む「危険性」

今回の連続強盗では、主に戸建てが狙われた。確かに、死角や侵入口が多く、「ポツンと一軒家」のように周囲に民家などがない状況もある戸建ては、マンションなどの集合住宅と比べて危険性が高いと言えばそうだろう。

予算が許す限り対策をすることが求められるが、できることとして、下記のことが挙げられる。

女性や高齢者だけの家だと悟られないように、表札を出さない、洗濯物を外に出さないなどの基本的な対策はもちろんのこと、窓ガラスを強化ガラスに換えたり、玄関ドアや窓ガラスを二重ロックにしたりするのも効果はある。

扉や窓の不自然な振動を知らせるサービスもあるので、それらを導入するのも手だろう。

では、マンション住まいだから安心かと言うと、そうとも言い切れない。

一般に集合住宅は上下左右に住民がいるため、犯罪者は侵入をためらう傾向にある。しかし、前出の警察庁「住まいる防犯110番」によると集合住宅も少なくない割合で被害に遭っている(下の図)。


マンションは、隣接する部屋のベランダから侵入することができる点や、不特定多数の人が出入りするため不審者を見分けにくいことがリスクとなる。

家の鍵を開錠する際はもちろん、オートロックがあるマンションの場合は、オートロック解除のときから、周囲に人がいないかを確認したほうがいい。できれば、鍵は2つ以上つけるようにし、ドアチェーンもかけたほうが安全だ。

3階以上の部屋だからといって、ベランダの鍵を開けたままにするのはもってのほか。必ず、全室の窓を施錠するようにしよう。

分譲マンションであっても、規定によってサッシやドアを変えられないという物件がほとんどだ。しかし、内側にサッシを取り付け、二重サッシにすることはできる。これだけでも、侵入者は窓を二重に破らなくてはならず、侵入に時間がかかるため、防犯効果はあるだろう。

通報してからの平均臨場時間は「8分24秒」

それでも侵入されてしまったらーー。

勝手口がある家の場合は、そこから外に逃げる。もしくは、戸建て、マンションに限らず、「逃げ込める場所(「パニック・ルーム」「セーフ・ヘブン」などという)」を決めて、整備しておくのがいい。

鍵がかかる部屋があれば、侵入者があった場合はそこに逃げるとルール化しておく。

できれば寝室など、ゆとりのある部屋がいい。予算が許せば、その部屋の扉を頑丈な素材にし、二重ロックにする。サイレン機能付きのメガホンを用意する。

そして、安全な場所で110番通報をする。110番で警察が駆けつけるまでの平均臨場時間は8分24秒(※警察庁が公表した2021年中の平均時間)。その間、耐えられるようにしておくのだ。

また細かなことだが、普段から在宅中も極力、携帯電話を持ち歩き、充電する際はなるべく「逃げ込める場所」で行うなども重要だ。

対策に対策を重ね、犯行グループから「標的にされない家づくり」をすることが、家族の身を守る唯一の方法である。

(松丸 俊彦 : セキュリティコンサルタント)