ホアキン・フェニックス(右)とレディー・ガガ(ロイター)

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【ニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。58年前に静岡県で一家4人が殺害された事件のやり直しの裁判で9日、袴田巌さんの無罪が確定しました。袴田さんや姉・ひで子さん、そして支援者の方たちの長年の悲願がかなったことを僕もうれしく思います! 無実の人の人生を58年も奪う結果になってしまったことに、警察・検察はきちんと向き合ってほしいですね。

 さて、司法との長い戦いが終わった袴田さんに関連して、今週は司法がキーとなる最新作「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」を紹介します。

 今作は「バットマン」の悪役であるジョーカーの誕生を描いた前作「ジョーカー」の続編にあたります。5人を殺害し精神病院に収容されているジョーカーことアーサー・フレックは、病院内で一人の女性に出会います。それがレディー・ガガ演じる謎の女性リー。ジョーカーを信奉する彼女に瞬く間に恋に落ちたアーサーの恋愛模様と、裁判をめぐる新たな事件を描きます。

 今回はこの恋愛要素が意外な肝でして。アーサーがあまりにリーに恋をしてしまって、自分が裁かれるという現実を直視できず、妄想に逃げるようになるんですね。その中で裁判劇のミュージカルをリーと始めるんですよ。レディー・ガガ起用の強みを存分に生かして、歌って踊ってまるでミュージカル映画のような作りになっているんですね。上質なサスペンスエンターテインメントに仕上がっているなと感じました。

 前作「ジョーカー」は問題作で、今アメリカが抱えている貧困問題・人種問題にメスを入れて話題になりました。今作は、実際に物語内で裁判が行われますけど、この作品自体で「私たちの映画って問題ですか?」と民衆に問いかけているんですね。犯罪自体はもちろんだめだけども、アーサーのような心優しい男を犯罪者にしてしまうような今の社会にこそ問題があるんじゃないか。トッド・フィリップス監督の強烈なメッセージの込められた一作です。

 警察・検察という社会の基盤となる強大な組織により無実の人が犯罪者となってしまう。冤罪は決してあってはならないことです。今回の袴田さんの裁判を受けて、いま一度司法の役割というものに向き合い直してもらいたいですね。一方で、犯罪に走ってしまう人を生み出さない社会というものもまた肝要です。立法・行政からも働きかけて、より良い社会になると良いですね。今大注目の一作です。ぜひご覧ください。