世界やアメリカに投資する投信やETFに注目すべき(写真:YevgeniySam / PIXTA)

2024年1月の新NISA(少額投資非課税制度)のスタートをきっかけに、投資ビギナーがこぞって参入した投資信託。いわゆる定番の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー=オルカン)」などを中心に、多くの資金が流入している。

『週刊東洋経済』10月19日号(10月15日火曜発売)では、「投資信託 大解剖」を特集。株式市場が乱高下する中、新NISAで市場の目が向きそうな次の投資テーマ、投資のプロ12人が厳選した注目ファンド、7つの指標で見た投信ランキングなどを、誌面で展開している。

ここでは東京大学卒業後、20代で”億り人”を達成した「東大ぱふぇっと」氏が投資術の極意を明かした。


投資を始めると、「投資信託とETF(上場投信)はどう違うのか」と、疑問に思ったことがあるのではないだろうか。とくにアメリカ向けや全世界向けなど海外市場に投資するとき、選択肢がある中でどちらを選べばよいのか迷うこともあると思う。

海外向けの投信とETF、一見似ているように見えるが、実はそれぞれ異なる特徴を持っている。投資の目的に応じ使い分けることで効果的な資産運用が可能だ。

まず投信は、100円以上なら1円単位の投資が可能で、手軽に定額積立ができる。アメリカ市場が対象であっても、日本円で投資できるので、両替も不要。中でも積立投資をするなら、インデックスファンドがいちばん適している。

また無配型の投信の場合、分配金を払わずに再投資するため、投資効率が高い。分配金が内部で再投資されることで、支払う税金も節約でき、効率的に資産を増やすことができるわけだ。売買手数料が無料の投信もある。

ただし、投信は注文から約定まで約3日かかるうえ、指し値注文もできないため、タイミングを狙った投資には向いていない。

ETFならリアルタイムで指し値注文が可

一方、ETFは、投資単位が1口単位。株のように市場でリアルタイムに売買される金融商品である。チャートを見ながら指し値注文(価格指定)ができるため、タイミングを狙った投資が可能だ。

またETFのほうが投資対象は多彩で選択肢が多い。例えば配当狙いで投資をしたいと思う場合、「バンガード・米国高配当株式 ETF」「SPDR ポートフォリオ S&P500 高配当株式ETF」などのETFがある。

なお、アメリカ向けのETFは米ドルでの取引となるため、投資する際には円をドルに両替する必要がある。円貨で決済をすることも可能だが、為替手数料が若干高くなってしまうので、事前に両替しておいたほうがよいだろう。

いずれもそれぞれ得意・不得意があるだけで優劣はない。特徴を理解して投資目的に合っているほうを選ぶことが重要だ。

わかりやすくいえば、定額で積立投資をしたいなら投信が、タイミングを狙って投資したい、または投信にない銘柄に投資をしたいならETFがよい。

ここでは目的別に投信とETFで利益を狙える銘柄を一覧にしたので参考にしてほしい。

定額積立や高配当など、目的別に投資するなら


市場においては、全世界株やアメリカのS&P500に投資する投資家が多いが、筆者は「ナスダック100」でのタイミング投資に注目する。理由は2つ。

まずナスダック100には独自の魅力がある。ざっくりいうと、米国のハイテク企業をメインに投資する指数で、エヌビディアやアップル、グーグル、マイクロソフトなどの組入比率が高い。

これらは莫大な資本力を持ち、次々と新しい市場を開拓することで、市場の支配力を高めている。仮に新たに革新的な企業が出てきても買収することが多い。例えば、ChatGPTのオープンAIにはマイクロソフトが出資し、さらに強靭な競争力を手に入れた。

またたとえ買収されなかったとしても、その企業が成長し続けることで、最終的にはナスダック100に組み込まれる可能性が高い。このような企業の成長力を取り込むことによって、今後も大きなリターンをもたらすだろう。

現実に売買をする場合、タイミングを見計らい、天井で売り抜けて底で買い戻すのが理想だ。

20年前に比べて12倍以上に高騰した

過去20年間を振り返ると、ナスダック100はS&P500を圧倒している。S&P500が約3.7倍になったのに対して、ナスダック100は12倍以上にもなっている。


アメリカの株式市場はこれからも世界の成長を取り込むとみられる。中心となるナスダック100には、次世代技術の世界的なリーダー企業が組み込まれており、これからも新しい価値を創造し続ける。世界中から才能ある人々が米国に集まり、イノベーションが生まれる環境が整っているのだ。

株式投資では、天井で売り抜けて底で買い戻せたら、資産は増える。「そんなことができたら苦労しない」「一部の人は相場を当てられるかもしれないが自分には無理」と思うのは当然である。

確かに2022年の米国は下落の年で、市場から退場し、投資をやめてしまう人が続出した。そうした中、筆者はアメリカの金融政策を研究し尽くすなどして、難を逃れた。下図が実際の動きだ。


アメリカの金融政策を研究すべき

2022年の急落前に高値で売り抜け、2023年の大底で買い戻したため、往復で利益を生むことができたのである。結果的に20代で“億り人”を達成できた。

振り返ると、直前の2021年はコロナショック後の金融緩和によって株価はうなぎ登りで、ナスダック100が約30%の大幅上昇となった。その後も上げ予想をしている投資家が多い中、自分は翌2022年1月に売りへと転じて、結果的に天井で売り抜けている。

急落の原因は、米国が2022年3月から政策金利を引き上げ、約20年ぶりの高水準になったこと。金利が上がれば株から銀行預金などに資金が移動し株価は下がる。政府の金融政策を研究したうえで、金利が上がるタイミングを見極め、下落する前に売り抜けることに成功し、損失を回避したのである。

当然ながら株価は金利以外のさまざまな要素でも変動する。複数の観点でより多角的に研究し、相場予測を行うことが重要だ。

筆者はnoteにて相場観やポジション、投資タイミングを公開している。予測は100%とはいかないが、かなり高い精度で当てており、資産を伸ばすうえで有力な選択肢の1つと自負している。


(東大ぱふぇっと : 専業投資家)