今回の料理は「きのこクリームソースのハンバーグ」です(以下、写真はすべて筆者撮影)

料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作れる方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回はマイタケとしめじを使った「クリームソースのハンバーグ」です。

ジューシーにするなら、切り落とし肉を混ぜる

機会をいただくたびに「ハンバーグは実は簡単」ということを伝えています。もちろん、手間をかけることもできますし、難しくすることも可能です。

やわらかくしたいのであれば卵を入れてもいいですし、ジューシーにしたければ包丁で刻んだ切り落とし肉などを混ぜてもいいでしょう。濃厚な甘みが欲しければみじん切りにした玉ねぎをよく炒めてから加えるとよく、その場合は冷やしてからタネに混ぜる必要があります。

ただ、そんな面倒なことをしなくても、ハンバーグはひき肉を買ってきて、塩、玉ねぎのすりおろし、パン粉を混ぜて焼くだけの料理です。ただ、上手に焼くには蓋をして蒸し焼きにする必要があります。中心温度で75℃に達するまで加熱しないと、ひき肉にはリスクがあるからです。

ここがむずかしいところですが、今回ご紹介する煮込みハンバーグであれば簡単。ある程度の量の水分を加えて煮込むので、生焼けのリスクはありません。

煮込みハンバーグ きのこクリームソースの材料
合いびき肉      250g
玉ねぎ        1/4個
生パン粉       10g(乾燥の場合は牛乳小さじ1を足す)
塩          小さじ1/4

★きのこクリームソース
マイタケ       1パック
しめじ        1パック
生クリーム      200ml(乳脂肪35%)
ディジョンマスタード 小さじ2(あれば)


マッシュルームやブロッコリーなどを一緒に加えても

今回は肉感を残した歯ごたえのあるハンバーグに仕上げます。特殊な材料が1つあります。生クリームです。

生クリームはスーパーでは乳製品のコーナーで売られていますが、「ホイップ」などの商品名で販売されている「植物性」と乳脂肪分のみの「動物性」があります。料理に使うのは後者なので間違えないようにしてください。

生クリームは1パック350円〜400円くらいと比較的高価なので、購入されることが少ない食品かもしれません。

しかし、生クリームを使わずにクリームソースを作る場合はバターと小麦粉を炒めてルーを作り、そこに牛乳を加えホワイトソースとしてから煮込むという工程を踏む必要がありますが、生クリームを使えばこの手間と時間を一気に省くことができます。

さて、ハンバーグの肉だねから作りはじめましょう。まず加える材料は塩です。


ひき肉は冷蔵庫から出したらすぐに塩を加えます

塩を加えたら10回握っては離すことを繰り返しましょう。まず塩を加えることでひき肉のタンパク質の一部を溶かし、ひき肉同士を結着させるとともに、水分を抱え込ませてジューシー感を残します。


温度が上がると結着が弱くなるので手早く行いましょう

副材料を加えていきます。副材料を加えてからはさっくりと混ぜるだけで大丈夫です。ハンバーグに欠かせない副材料がパン粉です。パン粉は加熱によってひき肉から流れ出る肉汁や脂を吸収するのでパサつき感を抑えてくれます。


手で擦り切れない玉ねぎは刻んで加えてもOK

中火にかけたフライパンにサラダ油小さじ1(分量外)をひき、4つに成形したハンバーグを焼いていきます。焼色がついたら裏返しましょう。


中まで火が通ってなくても大丈夫です

ハンバーグを煮込み鍋に移し、同じフライパンできのこを加熱していきます。火加減は中火のままです。


肉だねから出た脂をきのこにも吸わせます

ここで塩(分量外)をひとつまみ。きのこはゆっくりと加熱することでうま味が引き出されます。


ここでの塩は味付けだけではなく、水分を引き出す働きがあります

これくらい焼き色がついたらOK。


この状態できのこのソテーという料理です

煮込み鍋に移し、生クリームを1パック注ぎ、中火にかけます。1パックを使う分量にしているので余った生クリームをどうしたらいいか……と悩む必要もありません。


煮込み鍋は厚手のものが適しています

沸騰したことを確認したら蓋をして、弱火で8分煮込みます。


肉だねときのこから味が出てきます

蓋を開けて、中火で2〜3分ソースを煮詰めます。スプーンですくってはハンバーグにかけることを繰り返しましょう。ハンバーグにかけたソースがすぐに流れ落ちずに絡まるくらいが目安です。火を止めてから、あればディジョンマスタードを加えて、塩加減を確認します。分量外ですが、黒こしょうを加えてもいいでしょう。


煮詰める時間が長いと濃厚になるので、食べやすくするには煮詰めすぎないのがコツ

出来上がり。材料表には載せていませんが、乾燥パセリをふりました。滑らかなクリームソースが肉だねに絡んでこっくりとした味わいです。煮込みハンバーグは作っておいて、2日ほど冷蔵保存もできます(温め直すときは電子レンジが便利です)。

生クリームを1パック買う勇気さえあればお店のような濃厚、かつくどくない味わいが楽しめます。


ゆでたじゃがいもやご飯などを添えるといいでしょう


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(樋口 直哉 : 作家・料理家)