即トレンド1位!『ブラタモリ』3夜連続の復活放送が「こんなに歓迎される」理由

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突然の終了から8ヵ月後の復活

17日、『ブラタモリ』(NHK総合)が11月2日から4日に3夜連続放送されることが明らかになり、すぐにXのトレンドトップになるなど反響を集めている。

同番組は2008年にパイロット版が放送されたあと、2009年10月からレギュラー放送をスタート。以降、何度かの休止をはさみながら今年3月まで放送された。

その後、番組サイドは「2015年からお届してきた今のスタイルでの放送は3月9日の回をもって、いったん区切りをつけることになりました。今後、さらに楽しんでもらえるような番組になることを目指して、検討を続けていきます」というコメントを発表。復活をにおわせるようなコメントが半年の時を経て具現化したことで期待感の声があがったのだろう。

ただ、『ブラタモリ』は、いわば数多いロケ番組の1つであり、しかも見る人を選ぶ教養のムードが濃い番組。さらに長年放送して全国各地を一周以上した感があるにもかかわらず、なぜ若年層を含むネット上の反響が大きいのか。

「『ブラタモリ』ロス」の理由

今年3月9日に放送された『ブラタモリ』のレギュラー放送最終回は、いっさいの事前告知がなく突然の終了。毎回見ていた上に、「まだまだ続くだろう」と思っていた番組が終了してしまうと知ったからか、「寂しい」「喪失感凄い」などと“ロス”を訴える声が続出した。

そもそも民放なら視聴率アップを狙って「最終回」を大々的に打ち出すのが常套手段。視聴者は寂しさこそあっても、1〜2ヵ月前から心の準備をしながら最終回を迎えられるため、バラエティではなかなか“ロス”の声が飛び交う番組はない。まさに「突然の終了」はNHKの番組ならではだが、衝撃が増し、ショックを与えたのは間違いないだろう。

最終回の内容も同様で、「過去を振り返る」などの特別構成が定番だが、それらのコーナーもなし。とりわけタモリのような大物司会者の番組は終了の影響が大きいため、「どのように次の番組にバトンを渡すか」を意識してしっかり終わらせるものだが、『ブラタモリ』は最後まで通常運転。タモリの総括コメントどころか番組のテロップもなく、「終わることすら知らせない」という締めくくり方に驚かされた。

もちろん“ロス”の理由は「番組が好きだから」にほかならない。コロナ禍が明けてから民放各局でロケ番組が増えていた。これらは視聴率面での失敗が少ない一方で批判の声は多く、現在も「グルメばかり」「芸能人がうるさいだけ」などとテレビが面白くない理由の1つにあげられている。

令和に合い、支持を集めるタモリ

一方、『ブラタモリ』はロケ番組だが、歴史、地理、文化、風習などを幅広く扱い、それでいて何気ないクイズのような問いかけや、ほどよいユーモアなどを織り交ぜるなどエンタメ性が高い。何より「今まで知らなかった街の魅力や個性に気づかせてくれる」ことが支持のベースになっている。

さらにタモリと各地の識者が落ち着いたトーンで言葉を交わす演出は、「うるさい」といわれがちな民放のロケ番組とは一線を画している。台本にとらわれずタモリの目線でロケを進めるなど、その存在感とスキルあってこその番組だが、「民放では成立しづらい唯一無二のロケ番組」であることは確かだ。

“ロス”に関して言えば、「ブラタモリ“ロス”」だけでなく、「タモ“ロス”」というニュアンスが大きいことも事実。2014年に『笑っていいとも!』(フジテレビ系)、2023年に『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)が終了した際、「タモ“ロス”」が叫ばれたことをいまだに覚えている人もいるだろう。

現在タモリの姿を見られるレギュラー番組は『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)のみ。アラフォー以上にとっては「タモリを見て育った」「タモリMCの好きな番組があった」という人が多く、実際に自らの人生や加齢に重ね合わせるようなコメントも目立っている。

また、タモリは大ベテランながら若い世代からの評判も上々。好きなことをマイペースで楽しむ脱力した生き方、「誰かと競わない」「反省しない」などの浮き沈みのない考え方が支持されているが、むしろ令和の今こそ最もハマる時代なのかもしれない。

楽しそうに歩く姿が健康の証

現在タモリは79歳であり、健康問題を不安視する声があがっても仕方がない年齢と言っていいのではないか。タモリ自身、ふだんから散歩をするなど健康であることを明かしてきたが、それでも「いつ病気になるかわからない年齢」「さすがに街歩きのロケは厳しそう」などと不安視する声は減っていない。

それも無理はないだろう。この1年で中尾彬さん(81歳没)、山本陽子さん(81歳没)、園まりさん(80歳没)、谷村新司さん(74歳没)、八代亜紀さん(73歳没)、大橋純子さん(73歳没)、伊集院静さん(73歳没)、鳥山明さん(68歳没)など大物の訃報があった。

それだけに『ミュージックステーション』で立ち姿を見るだけではなく、『ブラタモリ』で全国を歩く姿が見られることの安心感は大きい。タモリの熱烈なファンでなくても、「『ブラタモリ』で楽しそうに歩くタモリの笑顔を見るとホッとする」という人は多いのではないか。

しかも長年出演してきた『笑っていいとも!』は新宿アルタで、『タモリ倶楽部』は東京周辺のロケだっただけに、遠方へのロケが多い『ブラタモリ』における健康チェックの意味合いは大きい。

また、タモリの盟友でもある黒柳徹子は現在91歳であり、『徹子の部屋』でその姿を見られることが安心感につながっている。ただ90代の高齢だけに仕方ないが、座っているだけでは健康状態がわかりづらいところもあり、ときに“ブラ徹子”のようなロケも見せてもらい安心したいところだろう。

さらに今春は81歳の関口宏が『サンデーモーニング』(TBS系)の総合司会、77歳のビートたけしが『奇跡体験!アンビリーバボー』(フジテレビ系)のストーリーテラーを卒業。80歳の草野仁が番組の顔を務めてきた『日立 世界ふしぎ発見』(TBS系)もレギュラー放送を終了するなど、「大物司会者たちが長寿番組から去る」というニュースが続いていた。

そんな昭和・平成を彩ってきた大物たちの出演番組が減っていることも、『ブラタモリ』への思い入れが増す背景になっている。

3夜連続放送のテーマは「道」

そして3夜連続放送での復活に反響が集まったもう1つの理由は、その放送内容。

今回、新たにフィーチャーするのは“道”。「江戸時代に整備された“ある道”を歩き、街から街へと移動することで、それぞれの街の魅力や個性を解き明かす」「3夜連続のスタートは京都でゴールは大阪」であることが明かされている。

タモリは3夜連続放送に際して、「道は面白いです。自然にできたものもあれば、つくったものも両方ある。特に分かれ道が良かった。いい三差路に出会えました」というコメントを寄せた。

「特に分かれ道が良かった」「いい三差路に出会えました」というコメントでタモリが道のマニアであることがわかるだろう。タモリは講談社の編集者だった山野勝さんと「日本坂道学会」を設立し、『タモリのTOKYO坂道美学入門』をリリースしたことでも知られている。

これは「東京には魅力的な坂道が多い」という感覚で意気投合したことよるものだったが、長年タモリが道に関心を持ってきたことの裏付けと言っていいだろう。ちなみにかつて山野さんを取材したことがあるが、タモリの道に対する知識を称賛していた。

タモリと『ブラタモリ』はすでに10年以上続く“古地図ブーム”の火付け役でもあり、だからこそ“道”をフィーチャーした3夜連続放送への期待感をネット上に書き込む人が多いのは当然かもしれない。

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