[9.14 J1第30節 鹿島 2-2 広島 カシマ]

 2試合のカップ戦途中出場では本領発揮とはならなかったが、鳴物入りで加入した元ポルトガル代表ストライカーがJ1リーグデビュー戦で“本物っぷり”を見せつけた。

 サンフレッチェ広島に今夏加入したFWゴンサロ・パシエンシアは敵地での鹿島戦に3-4-2-1の1トップで先発出場。失点直後の0-1で迎えた前半19分、MF新井直人からの右CKにゴール前で反応すると、強烈なヘディングシュートを突き刺し、J1初ゴールとなる同点弾を決めた。

 また豊富な5大リーグ経験にふさわしいタレント性はゴールシーン以外でも随所に見られた。序盤からペナルティエリア内で相手DFと駆け引きし、数多くのシュートシーンを作りつつ、右サイドに流れた際には確かな技術でチャンスメイクを連発。複数選手に寄せられてもボールを奪われないどころか、フリーになった周囲の選手を活かすパスも出すなど、57分間のプレータイムで鮮烈なJ1デビューとなった。

 試合後、報道陣の取材に応じたパシエンシアは「今日は1点しか取れず、勝ちにつなげられなかったことが残念。コンディションを上げてもっとチームの助けになれるように頑張りたい」と2-2のドローに終わった結果を悔やんでおり、デビュー戦でのパフォーマンスに満足した様子はなかった。

 それでもポルトで欧州CL出場・フランクフルトでEL制覇に導いた他、ブンデスリーガやラ・リーガで築いた実績の片鱗が伝わる一戦となったの事実。このキャリアの選手が30歳でJリーグ参戦を果たすのは異例だが、「ここに来られたことをすごく嬉しく思っている」という前向きなモチベーションはデビュー戦にも表れていた。

 かつてはフランクフルトでMF長谷部誠とMF鎌田大地、ボーフムでFW浅野拓磨といった日本人選手との共演も経験。この日は昨季共にプレーしていた元広島の浅野について「(自分が広島に来るという話を)タクマは信じなかった」というエピソードも満面の笑みで明かしていたが、来日の決断にあたっては彼らからの助言も大きかったようだ。

「彼ら3人にもいろんな質問をして、日本がどういうところかをたくさん質問した中で、いろんな答えをもらった。誰もが言うのはいい国だと。それに(サッカーの)クオリティーもしっかりあるということを言っていた」

 ここまでルヴァン杯、天皇杯の途中出場とJ1リーグでの先発出場を経て、その助言は「その通りだった」とパシエンシア。「もちろんブンデスリーガでやっている時もすごく楽しみながらサッカーができていたし、あそこでも活躍できたと思うけど、日本での挑戦が始まっているので日本での挑戦がすごく楽しみだし、成功したい」と新たな挑戦に意気込んでいる。

(取材・文 竹内達也)