夏休みは終わりましたが、こんなラーメン三昧グルメ旅はいかがですか。筆者は、前半は富士山界隈で自転車ツーリングを楽しんできました。後半は実家の山形に帰り、母親の手料理と各エリアの地元グルメを楽しんできました。 山形の暑さを…

夏休みは終わりましたが、こんなラーメン三昧グルメ旅はいかがですか。筆者は、前半は富士山界隈で自転車ツーリングを楽しんできました。後半は実家の山形に帰り、母親の手料理と各エリアの地元グルメを楽しんできました。

山形の暑さをしのぐために生まれた“冷たいラーメン”

我がふるさと山形県は4つの地域に分かれています。山形市を中心とした村山地域。鶴岡市や酒田市など日本海に面した庄内地域。県南部に位置し、米沢市がある置賜(おきたま)地域。最後に県東北部の新庄市を中心とした最上(もがみ)地域です。それぞれ文化や方言、気候も違い、食文化も独自に発展し今にいたります。

わが最愛の山形グルメを紹介します。2022年から2年連続1世帯当たりの「中華そば(外食)消費額で全国1位!」山形のラーメン(※)です。(※総務省家計調査で山形市が全国1位)

ご存じの方もいらっしゃるかも知れませんが、山形の夏は暑いことで有名です。北国なので涼しいと思いきや、つい10年ほど前までは酒田市が全国最高気温のトップでした。そんな山形の暑さを凌ぐために生まれた≪冷たい≫ラーメンを最初に取り上げます。

「冷たいラーメン」と「冷やし中華」の違い『福家そばや』

「冷やし中華」との違いをまずはご説明しましょう(個人的見解です)。「冷やし中華」は一般的には麺の上に酸っぱめのタレをかけて食べますし、錦糸卵やキュウリの千切りがのっているので、普通のラーメンとは全く見た目も違います。一方で、山形の「冷たいラーメン」はナルトやメンマやチャーシューなど外見はあつあつの醤油ラーメンとほぼ一緒。ただ食べてみるとスープが冷たい。

福家そばや

発祥は山形市内にある「栄屋本店」と言われていますが、今回は実家近くの寒河江市にある「福家(ふくや)そばや」をご紹介します。地元ではワンタンメンが有名で一年を通して行列の絶えないお店です。夏のお目当てはもちろん「冷たい中華」ですが、メニューには「冷やし中華」もあり初めての人は迷ってしまうかもですね(笑)。

福家そばやの冷やしラーメン

さて、東京では「冷たいラーメン」はないだろうな、と思っていましたが、数年前になんと銀座で発見しました。しかも「Pour Cafe(プルーカフェ)」というおしゃれなお店で、「山形水ラーメン」として通年扱っています。正面に京橋公園の緑を眺めながら食べる山形のソウルフード。ギャップ萌えをぜひ楽しんでください。

プルーカフェの山形水ラーメン

もう1店、酒田ラーメンの老舗が東京に進出した「ワンタンめんの満月 三鷹店」でも「冷たいワンタンメン」が提供されています。夏限定ですので是非早めにお運びください(例年9月末くらいまでのようです)。こちらも港町酒田の味を東京の住宅地で味わうギャップ萌えを楽しめますよ。

ワンタンメンの満月三鷹店の冷たいワンタンメン
ワンタンメンの満月三鷹店

熱いラーメンは辛みそで勝負『龍上海』

続いては≪熱い≫ラーメン(これが当たり前なのですが……笑)の代表として山形が誇る「からみそラーメン」の発祥「龍上海(りゅうしゃんはい)」をご紹介します。

コクのあるみそ味スープにメンマ、チャーシューとラーメン定番がトッピングされており、真ん中に特製の「辛みそ」がのっています。これを溶かしながら食べるのが龍上海流で、新横浜ラーメン博物館にも「龍上海横浜店」があるのでご存じの方も多いかと。山形県内にも系列店が数店ありますが、やはり置賜地域南陽市にある「龍上海赤湯本店」は、ラーメン好きなら新幹線代を払っても行く価値ありの名店です。

龍上海東根店の「からみそラーメン」

ただ、待ち時間が長い。3時間くらいは当たり前なイメージが頭にこびりついており、今回は少し日和って(笑)比較的最近できた「東根(ひがしね)店」に行ってきました。それでも1時間ほど待ちましたが、久しぶりの龍上海、やはり最高でした。

龍上海東根店

さて、東京でも「辛みそラーメン」として龍上海風のラーメンを提供しているお店が多くあり、どこもそこそこ美味しいですが、本場の味を求めるならやはり「龍上海横浜店」をお勧めします。「龍上海」では醤油ラーメンを「赤湯ラーメン」と呼びますが、これもめちゃくちゃ美味しい。横浜店にはどちらもミニサイズがありますので、せっかくなら山形が誇る逸品を両方お試しください。

芭蕉の句を眺めながら「ぬるまラーメン」を食す『一茶庵』

最後に本当にある≪ぬるい≫ラーメンをご紹介します。最上地域にある新庄市ではあっさりめの醤油スープとよく煮込んだ「とりもつ」との絶妙なバランスがくせになる「(とり)もつラーメン」が地元の方々に長年愛されています。

もつラーメンの発祥と言われる「一茶庵(いっちゃあん)支店」にあるのが「ぬるまラーメン」。20年ほど前最初にメニューを見たときは冗談かと思いました。熱いスープに冷たい麺を入れるのでぬるくなるとか。猫舌の人にはぴったりかも知れませんが、実際食べると程よい温度でそれほど違和感がありません。

一茶庵支店の「ぬるまラーメン」

何よりもほんのり甘じょっぱいスープと柔らか目の麺の相性がばつぐんで、「箸が止まらないとはこのことか!」という感覚に見舞われます。加えて日によってサービスされる手作りお漬物のなんと美味しいこと。

一茶庵支店の漬物

同店ではパッケージに松尾芭蕉の句が印刷されているカップ酒がメニューにあり、新庄市のほど近くで詠まれた「五月雨をあつめて早し最上川」を眺めながら日本酒をチビリ、お漬物をポリポリ、ぬるいラーメンをズズズ。山形グルメツアーの最終日、新幹線搭乗前に至福の時間を過ごしたのであります。

一茶庵支店

「とりもつラーメン」はさすがに東京では今のところ発見できず。なんなら自分でやってみようと思うほどの感動を覚えつつ帰路につきました。

今回はラーメン王国山形が誇る、「冷」「熱」「温」ラーメン3選でした。次回はこれも山形名物、「蕎麦」を取り上げたいと思います。麺が続きますが冷たーい蕎麦をご紹介しますので、暑い夏に免じてお許しを。

文・取材/十朱伸吾
おとなの週末専属ライター。旅と食とビールと競馬をこよなく愛する。ツーリングとゴルフも趣味。ツーリングの成果でダイエットにも成功。