2024年1-8月上場企業「早期・希望退職募集」状況


 2024年1-8月に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は41社(前年同期28社)で、2023年の1年間の41社に並んだ。また、対象人員は7,104人(同1,996人)と前年同期の3.5倍に達し、2023年の年間3,161人の2倍以上に急増している。
 円安を背景に、好調企業による積極的な構造改革、不振企業の事業撤退が重なった格好で、早期退職の募集は3年ぶりに年間1万人超ペースで推移している。

 上場区分は、東証プライムが28社(構成比68.2%)と約7割を占めた。また、黒字企業が24社(同58.5%)と約6割を占め、好業績のうちに構造改革に取り組む動きが強まっている。

 一方、直近では住友ファーマの700人募集、シャープの500人募集と、不採算事業の止血を急ぐケースも目立つ。2023年に複数回の募集を行った企業は1社(ピクセラ)だけだったが、2024年は3社(東北新社、ワコールホールディングス、ソニーグループ)が複数回の募集を実施している。不採算事業を抱える上場企業は、事業セグメントの見直しに積極的に取り組んでいる。

 労働市場は、高い有効求人倍率や深刻な人手不足が広がっている。中高年の転職は難しい現実もあるが、従業員が早期退職の募集に応じやすい環境でもある。企業は早期退職か異動、出向など模索を続けながら、早期退職を選択するケースが当面増えそうだ。

※ 本調査は、希望・早期退職募集の具体的な内容を確認できた上場企業を対象に集計した。
※ 2024年8月31日公表分までの『会社情報に関する適時開示資料』と東京商工リサーチの独自調査に基づく。


業種別 電気機器が最多

 2024年8月31日までに「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は、41社だった。
 業種別では、最多は堺ディスプレイプロダクトの工場停止に伴う募集を実施するシャープなど電気機器が9社(前年同期4社)だった。
 次いで、今年2回目の募集を実施する東北新社など情報・通信業が7社(同6社)、工場の停止に伴い募集を発表したワコールホールディングスなど繊維製品(同2社)、井関農機など機械(同2社)、卸売業(同ゼロ)、サービス業(同2社)が各3社、食料品(同1社)、化学(同1社)、医薬品(同3社)、その他製品(同ゼロ)が各2社と続く。



市場区分別 41社中28社が東証プライム

 「早期・希望退職募集」が判明した上場41社の市場区分は、東証プライムが最多の28社。全体の約7割(構成比68.2%)を占めた。
 次いで、東証スタンダードの7社(同17.0%)、東証グロースの6社(同14.6%)と続く。
 市場区分別の募集人数は、東証プライムが6,714人で9割以上(94.5%)を占めた。

損益別 募集人数は黒字企業が約6割

 「早期・希望退職募集」の判明時の直近通期最終損益(単体)は、黒字が24社(構成比58.5%)、赤字が17社(同41.4%)だった。  
 黒字企業の募集人数は5,566人で、募集人数の約8割(同78.3%)を占めた。黒字企業24社のうち、20社が東証プライム上場だった。
 赤字企業17社の募集人数は1,538人だった。赤字企業は、東証プライムが8社、グロースが5社、東証スタンダード4社。