フィリピン「大型インフラ計画」最新動向…大財閥アヤラ、8年近く停滞「首都・ターミナルプロジェクト」再始動へ
一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今回は、フィリピンの注目の大型インフラプロジェクトの最新動向についてみていきます。
首都・マニラの大型交通施設の建設、再始動へ
アヤラ財閥の不動産ディベロッパー、アヤラランド(ALI)は、マニラ首都圏内のタギッグにある中心業務地区、BGCのあるタギッグ市統合ターミナル・エクスチェンジプロジェクトの建設を年内に開始する予定であると、運輸省(DoTr)が発表しました。このプロジェクトは、2016年から停滞していたもので、マニラのあるルソン島を縦断するノース・サウス・コミューター・鉄道や市内バス、その他の公共交通機関と連携し、乗客を他の交通システムに接続する多目的ターミナルの建設を目的としています。
フィリピンの政府機関PPPセンター(Public-Private Partnership Center)によると、このプロジェクトの契約期間は建設期間を含む35年間で、承認時点での推定費用は52億ペソでした。現在、DoTrはフィリピン退役軍人財団(Veterans Foundation of the Philippines)との間で、土地の使用権に関する最終調整を行っているところです。2015年にこのプロジェクトはALIに供与され、当初は2020年までに稼働予定でしたが、いくつかの問題により遅延していました。
PPPセンターによると、このプロジェクトの民間提案者は、プロジェクトの設計、建設、資金調達だけでなく、その運営とメンテナンスも担当します。さらに提案者は商業開発を行い、その収益を得ることも可能です。
フィリピンでは、このプロジェクトが、東南メトロマニラ高速道路(SEMME/C6)プロジェクトや他の政府鉄道プロジェクトを補完する形で、交通システムの改善に寄与することが期待されています。
マニラ電力、海外の大学と提携「原子力」さらに推進へ
マニラ電力会社(Meralco)は、原子力エネルギーの取り組みを強化するため、海外の大学であるカナダのオンタリオ工科大学と米国のイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校と覚書を締結しました。さらに中国の中国国家核電有限公司(CNNC)のパートナーであるハルビン工程大学と清華大学とも提携しています。
これらの提携は、原子力発電所の運営管理に関する知識の取得や、核エネルギー研究の共同開発・実施を通じて、フィリピンでの原子力エネルギー採用を推進することを目的としています。Meralco社は、これらの提携により、原子力技術への理解が深まり、政府政策との整合を図りながら計画を進めることができると述べています。
さらにMeralcoは、2023年にフィリピン人向けの奨学金・インターンプログラム「FISSION」を開始し、初の奨学生が米国と中国で3〜4年間の原子力工学プログラムを学ぶ予定です。帰国後はMeralcoの原子力発電部門に配置される予定だといいます。このプログラムを通じて、原子力エネルギー分野の次世代リーダーを育成し、フィリピンの持続可能なエネルギーソリューションを進展させることを目指しています。