PCにおいて搭載メモリー容量は正義である。当然ながらPCの仕様や購入予算、企業の貸与など多様な制限はあれど、知人・友人には最大容量を搭載するように薦めてきた。

だが、デスクトップPCとノートPCでは事情が異なる。リソース(CPU/メモリー/ストレージ)の使用量はバッテリー消費量に直結し、外出先で電源を確保できない場合、SaaSアプリなどで多用するMicrosoft Edgeがバッテリーイーターになってしまう。

本件を重視するのかMicrosoftは、Canary版Microsoft Edgeで使用するメモリーの制限設定を検証している。

7タブ程度を開いたDev版Microsoft Edgeのメモリー消費容量

筆者は10タブ以上を開かないようにしているが、作業に応じて20、30とタブを並べている方も少なくない。必然的にMicrosoft Edgeの消費メモリーは増大し、連続してバッテリー消費を招いてしまう。

そのためMicrosoft Edgeは「設定」の「システムとパフォーマンス/パフォーマンスの管理」で、自身が利用可能なメモリー容量を設定する項目の追加を試している。筆者の環境(デスクトップPC 64GB/ノートPC & 2-in-1 PC 16GB)でCanary版Microsoft Edgeを起動してみたが、関連する項目は見当たらず、テスト対象になっていないようだ。

オープンソースのChromiumをベースに独自実装を行うMicrosoft Edgeは、Windows 11において最適なWebブラウザーである。それでも早期からパフォーマンス向上に注力してきたGoogle Chromeを継続して愛用する方も少なくない。筆者はカスタマイズ性の高さからMozilla Firefoxを使用していたが、Microsoft EdgeがChromiumベースに移行するタイミングで乗り換えた。現在はインストールもしていない。

他Webブラウザーからのインポート機能

本機能のテストが開始した時期は不明だが、いまだにDevチャネルにも実装されていないようだ。おそらくWindows 11の「電源とバッテリー」との連携を待っているのだろう。設定の一つである「省エネ機能」はディスプレイ輝度の抑制などを有効にするが、バッテリー消費の抑制を鑑みれば「設定」と連携してもおかしくはない。

試しにGoogle Chromeをインストールしてみたが、類似する設定項目は見当たらなかった。あくまでもタブのリソース消費管理にとどまり、電力消費はOSが管理する部類だと結論付けているのだろう。外出が減った現在は有用性を具体的に説明できないが、モバイルデバイスに関するMicrosoft Edgeのアプローチは正しい。

Google Chromeの設定ページ

ただ、Microsoft Edge自身の改善が方向を見失っているようにも見受けられる。たとえば2023年に導入した、丸みを帯びたタブを今後廃止するようだ。

安定版Microsoft Edgeのみ使用していると本機能は展開されないようだが、筆者の環境ではMicrosoftアカウントでプロファイルの共有をしていると、Windows 10の安定版Microsoft Edgeでも丸みを帯びたタブが有効になる。

Dev版Microsoft Edgeの丸みを帯びたタブ

個人的にはタブが丸みを帯びようがソリッドのままでも構わない。ただ、タブのデザイン一つで迷走しながらも、Microsoftが現状で注力するのはAI(人工知能)であることを踏まえると、Microsoft Edgeにおける劇的な成長はしばらく期待できないだろう。

著者 : 阿久津良和 あくつよしかず 1972年生まれのITライター。PC総合誌やDOS/V専門誌、Windows専門誌など、各PC雑誌の編集部員を経たのちに独立。WindowsとLinuxをこよなく愛しつつ、PC関連の著書を多数手がける。近年はBtoCにとどまらず、BtoBソリューションの取材やインタビューが主戦場。休肝日を設けず日々飲み続けてきたが、γ-GTP値が急激に増加し、早急な対応を求められている。 この著者の記事一覧はこちら