インドとアフガニスタンに挟まれた南アジアの国・パキスタンで、2024年8月中旬頃からインターネットの通信速度が大幅に低下していることが報告されています。一部の国民は「政府が検閲のためにファイアウォールを設置しているのでは」との不安を口にしましたが、パキスタン政府はこれを否定し、海底ケーブルの不具合であると説明しました。

A faulty undersea internet cable caused recent internet disruptions in Pakistan, official says - Newsday

https://www.newsday.com/news/nation/pakistan-internet-disruptions-undersea-cable-fault-i23114

Pakistan’s Internet Disruptions Stoke Fears of Government Surveillance - The New York Times

https://www.nytimes.com/2024/08/20/world/asia/pakistan-internet-government-surveillance.html

Reports suggesting internet being throttled by govt ‘completely false’: IT minister - Pakistan - DAWN.COM

https://www.dawn.com/news/1853078/reports-suggesting-internet-being-throttled-by-govt-completely-false-it-minister

パキスタンで数日間にわたりインターネットの通信速度が低下し、国民の主要なコミュニケーションツールであるWhatsAppでボイスメモや写真をダウンロードできなかったり、ウェブサイトにアクセスできなかったりする問題が発生しています。業界団体やネットユーザーによれば、速度は通常時の半分にまで落ちていて、かつて数分でアップロードできたものが数時間かかるような状態になっているとのこと。

ニューヨーク・タイムズの取材に答えた現地の住民は「ビジネスに壊滅的な悪影響を受けていて、月収の半分を失った」と話しています。



この件に関し、国民の間では「政府が国内のインターネットを監視・管理するためにファイアウォールのような新しいシステムを密かにテストしている」という主張が拡散され、国民の不安が高まっています。ソフトウェアの業界団体であるパキスタンソフトウェアハウスはこの主張を基に「突然導入された国家ファイアウォールによる重大な結果を明確に非難する」と述べ、混乱によりパキスタン経済は最大3億ドル(約440億円)を失う可能性があると警告しました。

混乱からしばらく経過した2024年8月21日、パキスタンの情報技術・電気通信大臣であるシャザ・ファティマ・カワジャ氏が記者会見を行い、ファイアウォールは設置しておらず、政府によって速度が落とされたわけでもないと説明しました。



カワジャ氏は「パキスタン当局は、サイバーセキュリティを向上させるためにシステムをアップグレードしていますが、インターネットはシャットダウンしていません。政府はこの問題に対処するため、技術専門家やサービス・プロバイダーと協議しています。インターネットが規制されているという報道は完全に誤りです」と述べました。

加えてカワジャ氏は人口の大部分がVPNを使用し始めたことを指摘し、VPNの利用がネットワークに負荷をかけていると非難。さらに、「インターネットは重要なリソースであり、関連する議論は慎重に扱わなければなりません。国民の皆様は、この話題は責任を持って話すようお願いします」と呼びかけています。

パキスタン電気通信局のハフィーズル・レーマン委員長は「海底のインターネットケーブルに問題が発生してからインターネットサービスの速度が低下した」と説明し、技術的な問題は8月27日までに解決されるだろうと述べました。