長生きするためには適度な運動や健康的な食生活、ストレスの解消や楽しみにつながる趣味などを持つことが重要とされています。5万人弱の看護師を対象にした新たな研究では、「感謝の気持ち」を持つことも長生きと関連していることが判明しました。

Gratitude and Mortality Among Older US Female Nurses | Nursing | JAMA Psychiatry | JAMA Network

https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/fullarticle/2820770



Gratitude may increase longevity among older adults | News | Harvard T.H. Chan School of Public Health

https://www.hsph.harvard.edu/news/press-releases/experiencing-gratitude-associated-with-greater-longevity-among-older-adults/

Gratitude May Help You Live Longer, Scientists Discover : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/gratitude-may-help-you-live-longer-scientists-discover

論文の筆頭著者であるハーバード大学のYing Chen氏は、「これまでの研究では感謝の気持ちと精神的苦痛のリスク低下、感情的および社会的ウェルビーイング向上との間に関連性があることが示されています。しかし、感謝の気持ちと身体的健康との関連性はあまり理解されていません」と述べています。

そこでChen氏らの研究チームは、アメリカの高齢看護師を対象にした調査結果を分析しました。この調査では、2016年に4万9275人に及ぶ高齢の女性看護師にアンケート調査を行い、生活や人生においてどれほど感謝の気持ちを持っているのかを測定しました。アンケートでは、「人生には感謝するべきことがたくさんある」「もし感謝していることをリストにしたら、とても長いリストになる」「年齢を重ねるにつれて、人生で出会った人々や経験した出来事、状況に感謝できるようになった」など、6つの声明にどれほど同意するのかを尋ねたとのこと。

そして2019年に追跡調査を行い、回答者の死亡率や死因などについての情報を収集しました。回答者の平均年齢は2016年時点で79歳であり、2016年のアンケートから2019年の追跡調査までに4608人が死亡しました。



分析の結果、感謝のスコアで上位33%に入った人々は下位33%の人々と比較して、追跡期間中に死亡するリスクが9%低いことがわかりました。感謝の気持ちはあらゆる死因の死亡リスク低下に関連していましたが、特に心血管疾患による死亡リスク軽減と関連性がありました。

研究チームは感謝の気持ちと死亡リスクの関連性をより正確に定量化するため、社会人口統計データや病歴、社会参加や宗教への関与の程度、楽観主義といった感謝の気持ちと重なりやすいライフスタイル要因を制御しました。この保守的なアプローチを取ってもなお、依然として感謝の気持ちと死亡率低下の関連性がみられたとのことです。

しかし、今回の研究はあくまで関連性を調査したものであり、感謝の気持ちが死亡リスクを低下させるという因果関係を証明したわけではありません。科学系メディアのScience Alertは、健康である人は単純に感謝の気持ちを感じやすい傾向があるかもしれないと指摘したほか、感謝の気持ちを持つ人は健康的な習慣を守る傾向が強いという研究結果もあると述べています。



今回の研究に用いられたデータは、主に非ヒスパニック系の白人女性を対象にしたものでした。研究チームは今後、より大規模で多様なグループを対象にして、感謝の気持ちと死亡率の関連性について調査したいと考えています。

Chen氏は、「これまでの研究によれば、感謝している物事について週に数回書き出したり、話し合ったりするなど、意図的に感謝の気持ちを育む方法があることがわかっています。健康的な加齢の促進は公衆衛生上の優先事項であり、さらなる研究によって、長寿を増進させる心理的資源としての感謝についての理解が深まることを願っています」と述べました。