(撮影:今井康一)

ニオイの悩みは、周りに相談しづらいセンシティブなもの。とくに独り暮らしの方は、家族からの指摘もないため「まわりに迷惑をかけていないか、不安になる」という声を耳にします。

のべ5409人の買い物に同行し、トータルコーディネートしてきた筆者の元には、この時期「ニオイ対策」について相談が増え、なかでも各社からさまざまな対策商品が出ていて、「自分に合うものが分からない」という悩みも多いのです。

自身もプロユーザーとしてニオイ対策の研究と実践をしてきた筆者が、ビジネスマンの汗臭対策について多角的に解説します。

汗の分泌を抑えるアプローチ

「汗=ニオイ」と思われがち。ですが汗自体が臭うのではなく、皮膚に常駐している菌が汗を分解するときに生じるガスこそ「ニオイの原因」であることは、あまり知られていません。2種類ある汗腺のうち、脂質やタンパク質、アンモニアも含まれる汗は、脇に集中するアポクリン腺から分泌するため、汗がニオイに変わる前に、こまめに脇を拭きたいところです。

とはいえ業界や職種によっては、脇汗を拭えるタイミングが頻繁にあるとは限りません。だからこそ、そもそも「汗の分泌を抑える」アプローチも対策になります。

十数年前、汗臭が気になった私はクリニックで相談し、水溶性の塩化アルミニウムを処方されました。塗ることで「汗の分泌が減らせる」というもので、この分野に興味を持った私は、塩化アルミニウムと同様の効果をもつミョウバンに着目したのです。

「汗腺を閉じて汗を出しづらくする」収斂作用があるミョウバン。なかでも「天然アルム石を、水で濡らして脇に塗る」というものが、私の場合、朝のルーティーンに組み込みやすく導入しました。

朝シャワーを浴びたあと、タオルで水分を拭いつつ、アルム石を塗るという流れです。その効果は、個人的感想として「汗の分泌が4分の1程度減少した」感覚。ただし、そこまでせずとも普段から着用する肌着の選び方ひとつで、汗臭のあり方も変わります。

汗を乾かす機能がついた肌着

あなたはポロシャツやワイシャツの下に、どんな素材の肌着を身につけていますか。肌着なしでは、汗がトップスに染みこんでいくため、「ポロシャツやワイシャツ自体がニオイの原因になってしまう」という考えは周知のとおり。高温多湿の日本におけるビジネスマンの肌着着用率は100%に近いと思いますが、肌着は天然繊維と化学繊維のものに分かれるのです。

2010年代中盤くらいまでは、化学繊維よりも「汗を吸う」天然繊維のコットン肌着が定番でしたが、今では機能下着が定着してきました。各社で見かける機能下着は、接触冷感や消臭効果など、天然繊維にはない機能を有するもの。なかでもドライ機能があるものを、私はおすすめしています。

とくに「毛細管現象」という科学的アプローチを採用したユニクロのエアリズム(デオドラントメッシュシリーズ)に注目。脇から分泌された汗が、肌着全体に分散されることで、汗を蒸発しやすくするという同商品は、毎年バージョンアップを重ねています。それでも脇汗ケアの必要はありますが、拭う頻度は下げられるはず。

また菌に分解される前に拭き取ることは汗臭対策のひとつですが、「どんなツールで汗を拭うか」という視点も見逃せません。とくにミニタオルやハンカチで拭っている人は要注意です。というのも皮膚常在菌も付着してしまうため、タオルやハンカチで脇を拭うことは、結局「菌が汗を分解する」原因になってしまう可能性が高いから。そこで私は、使い切りのデオドラント制汗シートを推奨しています。

ちなみに汗を拭きとりやすくするため、私自身は数年前からカミソリで、脇のムダ毛を定期的に処理しています。そこまでやる必要はないかもしれませんが、実際のところ、汗は拭きとりやすくなっていることを報告いたします。

ノンアイロンニットシャツの盲点

ドライ機能のついた肌着を選んだとしても、半袖シャツやポロシャツの袖まわりがピタッとしていては、脇に汗が溜まってしまいがちです。ビジネスシーンにおける半袖シャツやポロシャツをスタイリッシュに見せるには「アームホールがピタッとしたものを選ぶ」というセオリーがありますが、汗臭対策には反比例してしまうのです。そこで、半袖シャツやポロシャツの生地感にもこだわりましょう。

ここ数年、ポリエステル100%で編んだニットシャツが流行っています。商品名は企業ごとに異なりますが、ポロシャツのように柔らかな生地感のワイシャツで、洗濯シワがまったくつかないため「ノンアイロンニットシャツ」と呼ばれることもあるようです。機能のお陰で重宝されていますが、コットン混紡シャツに比べて、汗が溜まりやすい傾向にあります。汗臭について懸念がある場合、同じノンアイロンであってもコットンが混ざっているものを選びましょう。

ゲリラ豪雨や台風が増えるこれからの時期、衣服の生乾き臭にも気を付けたいものです。というのも体臭と思われていたものが、実は服のニオイだったということもあります。とくに独り暮らしの男性は、帰宅が遅い平日、「部屋干しせざるを得ない」という方もいらっしゃるはず。

見落としがち!生乾き臭のワナ

ところが洗濯物の生乾き臭も、汗臭同様、気になるニオイ。これは「モラクセラ菌が増殖する時に出す排泄物」が原因だそうです。洗濯物に残った汚れや皮脂を栄養にして繁殖するのですが、乾燥までの時間によって、繁殖が活性化しますので、対策の一環として「部屋干し用の洗剤」を選ぶこと。そして部屋干しするときは、洗濯物同士の間隔を空けて干すこともお忘れなく。距離が近くては、乾くまで時間がかかってしまうからです。

ビジネスマンのニオイ対策として多角的に解説してきましたが、習慣化できなければ対策の意味がありません。すべての対策を一度に始めるというより、導入ハードルが低いと感じたものから始めてみてください。

使い捨ての制汗シートは、ワイシャツの第3ボタンのみ開けて、隙間に手を入れ拭うことで、コンパクトな体の動きで済みます。駅のホームで電車を待っているときでも、目立たず汗を拭うことができます。このようにご自身の生活に取り入れやすい対策からスタートすることが大切です。

(森井 良行 : ビジネスマンのためのスタイリスト)