JRの駅そば、いろり庵きらくの朝限定メニュー(筆者撮影)

喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。

そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するライター・ブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第89回となる今回、訪れたのは「いろり庵きらく」です。

ハンバーガーショップや、カフェ、ファミリーレストラン、牛丼チェーンなど、さまざまな飲食チェーンが提供する朝限定メニュー。

集客の弱い時間帯である午前中の売り上げを強化すべく、朝の数時間だけ提供される限定メニューの数々は、コスパ抜群かつ店の特色が強く表れ、どれも魅力にあふれています。

今回はJR東日本系列のそばチェーン「いろり庵きらく」のモーニングメニューをご紹介します。時間のないときや小腹の空いたときにぴったりな、駅ナカの飲食店ならではの気軽さが魅力です。

いろり庵きらくの朝そばと朝定食

「いろり庵きらく」の朝限定メニューは3種類です。

・朝食そば 税込420円
・朝食納豆セット 税込480円
・明太子ご飯セット 税込480円

朝食そばの具材は、ねぎ、わかめ、温泉たまご、山菜の水煮と具だくさんです。

朝食納豆セットは、そば、ライス、納豆、生卵がセット、明太子ご飯セットは、そば、明太子ご飯がセットで、そばの具材はどちらも天かすとねぎです。

【画像15枚】「朝から炭水化物でお腹ギチギチ…」「でも意外と具だくさん?」。いろり庵きらくの「420円・朝食そば」はこんな感じ

提供時間は開店時間から朝10時まで。筆者が利用した店舗では、どのメニューも温そば、冷そばのいずれかを選択可能で、麺の種類をうどんに変更できました。

JRの駅ナカ!絶好の立地の駅そば

「いろり庵きらく」は俗にいう「駅そば」というやつで、2024年8月なかば現在、関東地区の駅ナカを中心に87店舗を展開しています(公式サイトによる)。

運営会社は「株式会社JR東日本クロスステーション」。駅構内のコンビニエンスストア「ニューデイズ」や、以前ご紹介したカフェ「ベックスコーヒーショップ」などと同系列となります。


店舗は改札を出てすぐ、利便性抜群の好ポジション(筆者撮影)

東京駅や神田駅、秋葉原駅、御徒町駅、上野駅など都心部かつ、利用者が多い駅の改札内や改札付近という抜群の立地にあるため、東京近郊でお仕事をされている方なら「食べたことあるよ」「食べたことないけど知ってるよ」という人も多いのではないでしょうか。

その抜群の立地から、移動のついでに立ち寄りやすく、時間に余裕がないときの食事にぴったりです。

5分もあれば食券を購入してカウンターで商品を受け取れますし、おそばは食べるのにも時間がかからないので、「腹ペコだけど飲食店に立ち寄る時間もないし、コンビニで買ったとて食べる場所もない」という八方塞がりな状況を打破して、お腹をほどよく満たしてくれます。

「いろり庵きらく」の看板には「生蕎麦と自家製かき揚げ」の文字が躍ります。


オーダーカウンターには、揚げ物の並んだバット。かき揚げのほかに、天ぷらやコロッケも(筆者撮影)

生蕎麦は「きそば」と読むとつなぎなしの十割そばを指しますが、こちらは「なまそば」と読むのが正解。ゆで麺を湯通して提供するのではなく、生のそばをお店でゆでているため、そば本来の美味しさが楽しめます(一部店舗除く)。

「そば専門店なんだから生蕎麦を使うのは、当然なんじゃないの?」と思うかもしれませんが、立ち食いそば店はスピード重視のため調理時間が短くてすむように、あらかじめ湯通ししてあるゆで麺を使用しているお店も多いようです。駅ナカで本格そばを食べられるって、ちょっと贅沢でいいですよネ。


オーダーカウンター横の調味料ブース。そば湯もポットにスタンバイしています(筆者撮影)

「抜群の立地と、こだわりの生蕎麦、もしやお値段お高めでは?」と、案ずることなかれ。「いろり庵きらく」のかけそばの価格は税込400円。そばチェーン御三家の「ゆで太郎」のかけそばは税込430円、「名代富士そば」は税込420円、「小諸そば」は税込370円なので、なかなか良心的な価格設定です。

コスパ抜群、具材たっぷりの朝食そば420円

そして、そのかけそばにプラス20円するだけで、食べられる超お得(朝お得!?)なメニューが、朝食そば税込420円です。


いろり庵きらくの朝食そば420円(筆者撮影)

ちなみに山菜そばの単品価格が税込530円で、月見そばが税込500円、わかめそばが税込480円でした。全部乗せで420円というのは、かなりのコスパです。

生蕎麦の麺は、細めで柔らかく喉越しがなめらか。蕎麦粉のツブツブ感やコシは弱めで、つるつるとした食感で食べやすい。だしは関東風で、かつおと醤油の風味が効いています。でも塩気は強すぎず、甘めの味付けでこちらもまた食べやすく、癖のないおいしさです。

トッピングは、ねぎ、わかめ、温泉たまご、山菜の水煮。とりとめのない組み合わせながら、どれもおそばの具材の定番ばかりなので、合わないはずがありません。

わらびにきくらげ、たけのこなど、シャキシャキした歯ごたえと、独特の苦味を感じさせる山菜ミックスは山の香り。わかめはぷりぷり食感で磯の香り。山と海の共演を、温泉たまごがまろやかにまとめます。

たぬきうどんと明太子ご飯セット480円

税込480円の明太子ご飯セットは、冷たいうどんをセットにしました。お茶碗に軽くよそった白米にきざみのりを敷いて、明太子をオン。ほかほかごはんと明太子の相性は抜群です。明太子のピリリとした辛さと、白米の甘みの相乗効果で、お箸が進みまくります。


いろり庵きらくのたぬきうどんと明太子ご飯セット480円(筆者撮影)

セットの天かす入りのたぬきそばですが、今回は冷たいうどんにチェンジしてみました(関西では、はいからうどんと呼びます)。ざるそば用のそばつゆがかかったぶっかけうどんが、広口で浅めの大皿に盛り付けられています。

天かすとうどんを、お箸でざっくりと混ぜてそばつゆにからめて食べます。うどんは硬めのゆで加減で、コシは弱めのあっさりした味わいでした。

天かすはサクサク香ばしい部分と、そばつゆが染みてジュッと口の中でとろける部分が混じり合い、シンプルながら食欲をそそる味わいです。途中で七味をかけたり、すりごまをかけたりと、味変を楽しみながらフィニッシュ。

炭水化物同士の組み合わせで、大満足の食べ応えです。お腹はしっかり満ちてパワーがみなぎり、今日も1日頑張れそうです。野菜や肉など、足りない栄養バランスはお昼ご飯以降で補填することにしましょう。

改札そばの店舗でそばモーニング

筆者が利用したのは、オタクの聖地と称される電気街の駅にある改札すぐそばの店舗です。

キャパは20人ほどで、店内にはいす席と立ち食い席の両方が設置されています。細長い店内の入り口側はいすなしの立ち食い席、奥はいすありのカウンター席になっていました。


温そばの器は、赤い模様がかわいい白い丼鉢(筆者撮影)

お盆の朝9時、駅構内の人はまばらながらお店はそこそこ繁盛しており、つねに10人前後とにぎわっています。利用客のほとんどが1人客でほぼ男性なのですが、つねに2〜3人の女性客がいるのが印象的でした。


冷うどんの器は、広口の大鉢。こちらは口縁に赤で模様が描かれています(筆者撮影)

モーニングめぐりを日課とする筆者ですが、そばチェーンや牛丼チェーンで、女性が1人で利用している場面に巡り合わせることはめったにありません。たった数人といえども、朝からそばチェーンを女性客が利用しているというのは、実はかなりのレアケースです。

【その他の画像も】「朝から炭水化物でお腹ギチギチ…」「でも意外と具だくさん?」。いろり庵きらくの「420円・朝食そば」はこんな感じ

改めて眺めると、明るい店内に、白木調の家具、丸いすではなく背もたれのついたカウンターチェア、白地に赤で絵付けされた陶磁器の食器など、端々に和食ファストフードが持つ、独特のジャンク感を排除する心配りのようなものが感じられます。

「こういう小さな積み重ねが、女性客でも入りやすい店作りにつながっているのかもなぁ」と、マーケティングに感心する朝です。

その他の写真


いろり庵きらくのモーニング提供時間は朝10時まで(筆者撮影)


全メニュー、そば・うどん、温・冷の選択が可能です(筆者撮影)


こちらは「朝食そば」(420円)。細めの麺を柔らかめにゆであげた生蕎麦です(筆者撮影)


こちらは「たぬきうどんと明太子ご飯セット」(480円)の冷うどん。たっぷりの天かすと、キリリと濃い味のそばつゆでいただきます(筆者撮影)


具だくさんの朝食そば。温泉たまごにからめればまろやかさとコクがプラスされます(筆者撮影)


関東風の茶色いスープながら塩辛さは控えめ。甘めの味付けで癖がない仕上がり(筆者撮影)


明太子ごはんは、きざみ海苔で風味をプラス(筆者撮影)

編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。


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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)