ボビー・ウィット Jr. (写真=GettyImages)

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◆ 得点圏打率.396は両リーグで断トツ

 メジャーリーグのレギュラーシーズンも残すところ1か月半。地区優勝争いとともに、両リーグのMVP争いもヒートアップしつつある。

 ナ・リーグでは、ドジャースの大谷翔平が指名打者として初の“戴冠”なるかが焦点。一方のア・リーグは、ヤンキースのアーロン・ジャッジ1強と思いきや、24歳の新星が台頭。ジャッジとの一騎打ちに持ち込む構えだ。

 それがロイヤルズの遊撃手ボビー・ウィットJr.。メジャー通算142勝を挙げたボビー・ウィットを父に持ち、2019年ドラフトで全体2位指名の高評価を受けたつ野球界のサラブレッドである。

 瞬く間にマイナーの階段を駆け上がったウィットJr.は、2022年にメジャーデビューを果たすと、いきなり20本塁打30盗塁をマーク。新人王は逃したが、23年のワールドベースボールクラシック(WBC)に米国代表として出場した。

 同年はルーキーイヤーを大幅に上回る30本塁打49盗塁を記録。2年目のジンクスをあっさりと吹き飛ばし、今季開幕前にはロイヤルズと11年に及ぶ超長期契約に合意した。

 そして迎えた3年目の今季は更なる成長を見せ、ここまで24本塁打25盗塁をマークしている。盗塁数こそ昨季を下回るペースだが、打率は1年目から.254→.276→.349と右肩上がり。OPSも.722→.814→1.009とジャンプアップしている。

 ウィットJr.は今季チームの全121試合に2番ショートで先発。リーグ2位の得点数と同3位の打点数からも分かる通り、チャンスメークとランナーを還す2つの役割をしっかり担っている。特にウィットJr.の最大の強みといえるのが勝負強い打撃だろう。

 ウィットJr.の今季得点圏打率は.396で、4割に迫る数字。もちろんこれは両リーグを合わせても断トツだ。

 ちなみにア・リーグの得点圏打率上位4位のうち3人がロイヤルズの選手。1位のウィットJr.に加えて、ビニー・パスクァンティーノ(.361)が2位タイ、サルバドール・ペレス(.360)が4位で続いている。中軸3人の勝負強さがチームの強さの源泉といえるかもしれない。

 また、ロイヤルズといえば、今季開幕前に積極的な補強を敢行。投打で計算できるベテランの獲得にも成功していた。

 ロイヤルズは、2015年にメッツを破り世界一に輝いたように10年ほど前は強豪チームの一つだった。ところがそれ以降は8年連続で勝ち越しなし、7年連続負け越しの低迷期に突入。昨季はチーム史上ワーストタイの106敗を喫する屈辱を味わった。しかし、ウィットJr.の登場がチームの経営陣を本気にさせたのだ。

 ウィットJr.の活躍に呼応するように、新戦力のセス・ルーゴ(13勝)やマイケル・ワカ(9勝)がチームに大きく貢献。気づけば昨季の56勝をすでに上回る66勝(55敗)をマークしている。

 ただ、躍進するロイヤルズですら現在は地区3位。首位に立っているのは、メジャー最高勝率を誇るガーディアンズで、それをツインズが4ゲーム差で追いかけ、ロイヤルズはさらに2ゲーム差という展開だ。

 レギュラーシーズンは残り1か月半。差し切り勝ちを収めるためにもウィットJr.の貢献は必要不可欠だろう。MVPと優勝の両獲りも決して夢物語ではない。

※数字は全て現地15日(日本時間16日現在)

文=八木遊(やぎ・ゆう)