忙しくても本を読むことはできるのか…約850冊の要約制作をしてきた編集者が「読む前に必ずやること」
第2位:『話し方の戦略』(千葉佳織著、プレジデント社)
第3位:『「よい説明」には型がある。』(犬塚壮志著、日本経済新聞出版)
第4位:『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』(野村裕之著、ダイヤモンド社)
第5位:『モヤモヤを言葉に変える「言語化」講座』(ひきたよしあき著、PHP研究所)
第6位:『疲労とはなにか』(近藤一博著、講談社)
第7位:『となりの億万長者が17時になったらやっていること』(嶋村吉洋著、PHP研究所)
第8位:『改訂版 お金は寝かせて増やしなさい』(水瀬ケンイチ著、フォレスト出版)
第9位:『読む・聞く、まとめる、言葉にする』(松尾美里著、フォレスト出版)
第10位:『頭がいい人のChatGPT&Copilotの使い方』(橋本大也著、かんき出版)
第11位:『なぜか話しかけたくなる人、ならない人』(有川真由美著、PHP研究所)
第12位:『「ここだけの話」を聞く技術』(井手隊長著、秀和システム)
第13位:『中流危機』(NHKスペシャル取材班著、講談社)
第14位:『幸運の教科書』(武田双雲著、三笠書房)
第15位:『チームレジリエンス』(池田めぐみ/安斎勇樹著、日本能率協会マネジメントセンター)
第16位:『アイデアの着眼点』(小川仁志著、フォレスト出版)
第17位:『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆著、集英社)
第18位:『持たざる者の逆襲』(溝口勇児著、幻冬舎)
第19位:『悪口ってなんだろう』(和泉悠著、筑摩書房)
第20位:『シン・スタンダード』(谷口たかひさ著、サンマーク出版)
※本の要約サービス「flier」の有料会員を対象にした、2024年7月の閲覧数ランキング
■相手に「納得して動いてもらう」説明のコツ
今月の第1位は『賢い人のとにかく伝わる説明100式』でした。ソニーグループ、シャープで技術職・管理職として勤務していた際、専門用語をかみ砕いて説明する能力が評価されて活躍の幅を広げた深谷百合子さんが、さまざまなシーンで使える「説明」のポイントを教えてくれる一冊です。
相手との行き違いや勘違いを防ぐために説明に取り入れたいのは、次の3つのフレーズ。
1つ目は「つまり、○○ということです」。例えば、「中国のわが家のシャワーとトイレは同じ空間にあり、トイレの床とシャワーの床は仕切られていません」と言うだけでなく、「つまり、シャワーを浴びるとトイレの床も水浸しになってしまうのです」と続けると、よりイメージが伝わりやすくなります。
2つ目は「例えば」「たとえるとしたら」。「私たちは普段、多くの機械の恩恵を受けて暮らしています」と言うよりも、「私たちは普段、多くの機械の恩恵を受けて暮らしています。例えば、洗濯機や電子レンジといった家電製品で家事を楽にし……」と言ったほうが、イメージが湧きやすいでしょう。
3つ目は、「解釈」や「感情」を説明する「具体的には」「詳しく言うと」。「書くことに自信がありませんでした」で終わらせるのではなく、「具体的には、A4の紙1枚の企画書を書くのに、2、3時間かかっていました。そうして作った企画書も、上司からダメ出しされていました。でも、コツがわかったら、数十分で書けるようになり、上司からもほめられるようになりました」と続けると、変化が伝わりやすいはずです。
著者の深谷さんは「相手に納得して動いてもらうには、相手を観察し、自分との間にある『違い』を知り、相手の視点に立ってみる。そのコツをまとめたのが本書です」と語っています。「伝わる説明」をマスターしたいなら、ぜひ読んでみてください。
■元・AKB48指原莉乃のスピーチはすごい
第2位は、話し方トレーニングサービスを提供するカエカの代表、千葉佳織さんが、秘伝のノウハウを明かした『話し方の戦略』でした。
本書の特徴は、著名人のスピーチ事例を紹介しながら、“そのスピーチのどこがすごいのか”“そのすごさを再現するには、どんなテクニックを使えばいいか”を教えてくれる点。
「弱みの自己開示」によって聞き手の共感・応援を引き出すのが上手な人として紹介されているのは、元・AKB48の指原莉乃さんです。指原さんは、2015年の「選抜総選挙」で見事1位に返り咲いた際、スピーチでこのように語りました。
「AKBに入って、なかなかセンターになれない私は、どうやったらセンターになれるんだろうと、ずっと考えていました。(中略)考えたけど、なれませんでした。私は開き直りました。私は指原莉乃をやり通そう、そう決めました。(中略)今年は、こんなに自分に自信のない指原が1位になることができました。全国の自分に自信のないみなさん、私のように、いじめられて、ひきこもりになって、親にたくさん迷惑をかけてしまったみなさん、日の当たっていないみなさん、私は、もう一度1位になることができました」
このように、自分の弱みをあえて開示することで、努力や苦労が伝わり、聞き手の共感を呼ぶスピーチになるのです。
このほかにも、第44代アメリカ合衆国大統領のバラク・オバマ氏やお笑い芸人の江頭2:50さんなどのスピーチを例に挙げて、スピーチのコツを解説してくれます。大事なスピーチやプレゼンの前に必ず読みたい一冊です。
■人気予備校講師が教える「説明の型」
第3位には『「よい説明」には型がある。』がランクインしました。業界最難関といわれる駿台予備学校の採用試験に当時最年少の25歳で合格し、3000人超動員の人気講座を開発した犬塚壮志さんが、説明に使える「11の型」を教えてくれる一冊です。
犬塚さんによると、型を使うことのメリットは以下の3つ。
・話を素早く組み立てることができる
・説明の成功確率を上げることができる
・自分独自の型がつくりやすくなっていく
まずマスターしたい「型」は、説明を聞くとどんな得があるかを伝える「メリット訴求」。これは4つのステップから構成されています。
・ステップ1:聴き手が潜在的に感じている問題を言語化し、痛いところをつくことで、問題や課題を自覚してもらう
・ステップ2:すでに成果を上げた人の事例を紹介し、聴き手に具体的な成功のイメージを持ってもらう
・ステップ3:そのメリットを提示できる理由や根拠を伝える
・ステップ4:聴き手の行動を促す
本書には、今日から使える「型」が詰まっています。営業やカスタマーサクセスなど、社外とのやり取りが多い職種の方はもちろん、口下手で悩む方や、自分の市場価値を上げたい方にもおすすめです。
■「論理的思考問題」で考える力を身につける
続いて、4位以下から、注目の書籍をご紹介します。第4位は『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』でした。発売約2カ月で11万部を突破し、人気テレビ番組でも紹介されるなど、いま注目のベストセラーです。
本書では、著者の野村裕之さんが古今東西から集めた「論理的思考問題」が67問紹介されています。「論理的思考問題」とは、特別な知識は不要で、論理的に考えれば答えにたどり着ける問題のこと。野村さんは本書で、「論理的思考問題」に取り組むことで「考える力」が身につくとしています。
難易度★☆☆☆☆の問題として出題されているのは「3人の村人」。以下のような問題です。
あなたの前に3人の村人がいる。1人は天使、1人は悪魔、1人は人間だ。天使は必ず真実を言い、悪魔は必ず噓をつき、人間はランダムに真実や噓を言う。
3人の村人(A、B、C)は次のように言った。
A:私は天使ではない。
B:私は悪魔ではない。
C:私は人間ではない。
さて、村人それぞれの正体は?
あなたはこの問題が解けるでしょうか。ポイントは「この問題では『もしAが天使だとしたら』『悪魔だとしたら』と仮定していき、矛盾が起きるパターンを排除していくことです。
楽しみながら「頭のいい人」に近づける本書。毎日1題ずつ挑戦してみてはいかがでしょうか?
■読書のプロが「読む前」にやっていること
第9位の『読む・聞く、まとめる、言葉にする』にもご注目ください。
本書は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」の編集者・インタビュアーとして、約850冊の要約制作、約570名に対するインタビューに携わってきた松尾美里さんが、「読む・聞く、まとめる、言葉にする」ノウハウを明かした一冊です。
まず注目していただきたいのは、アウトプットのための読書で意識するといい2つのポイントです。
1つめのポイントは、カバー・帯・目次から「見取り図」をつくり、構造を頭に入れて読むこと。カバー、帯、「はじめに」の順に読み、「本のテーマ」「ターゲット読者」をつかむことで、その本の要点を把握できます。さらに「目次」を読んで本全体の構造を把握することで、自分に必要な箇所がわかり、読むスピードが上がるといいます。
2つめのポイントは、問いを持って「宝探し」をする感覚で読むこと。「睡眠に関する本から、今日から実践できる熟睡するための方法をつかむには?」といった問いを頭の中に浮かべておくと、その本のポイントが目に飛び込んできやすくなり、効率的に読み進められます。
「読む・聞く、まとめる、言葉にする」ノウハウが満載の本書は、編集・ライティングを仕事にしている方はもちろん、メンバーの話を「聞く」力に課題がある方や、センスのいい言語化ができるようになりたい方にもおすすめです。
■「ラーメンライター」の聞く技術
最後にご紹介したいのが、第12位の『「ここだけの話」を聞く技術』。
著者の井手隊長は、ラーメン店の取材記事を年間100本以上執筆するラーメンライター。職人気質で寡黙な人も多いラーメン店主から“とっておきの話”を聞き出す技術に強みがあります。
著者が取材やインタビューの前に必ずやっているのは「仮説を立てる」こと。店のホームページや店主のSNSをチェックしたり、ほかのメディアで取り上げられた記事を読んだりして情報収集するとともに、この店主はどんな経歴でどういう苦労をして店をオープンさせ、人気店へと育て上げたのかという「仮説」を立てるのだといいます。
ここまで準備に時間をかける理由は、事前準備をしなければ、基本情報をヒアリングするだけで時間切れになってしまうから。事前に情報収集し、仮説を立てておけば、仮説との差分を感じながら話を聞けて、より良いアウトプットができるのです。
本書には、インタビューはもちろん、新規商談やヒアリングにも使えるテクニックが詰まっています。聞く力を磨きたい方はもちろん、「ラーメンライター」という仕事の裏側をのぞいてみたいなら、ぜひ手に取ってみてください。
今月も、説明術から資産運用、ChatGPT&Copilotまで、幅広いジャンルの本がランクインしました。また、先月第1位だった『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が第17位、第5位だった『なぜか話しかけたくなる人、ならない人』が第11位と、依然として多くの方に読まれています。来月はどのような本が多く読まれるのか、引き続きチェックしてまいります。
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(flier編集部)