完全開放なのに音漏れしない!? NTTソノリティ「nwm ONE」実機レビュー
最近、ワイヤレスイヤホン市場では装着時に耳がオープンになり周囲の音が聞こえる“ながら聴き”タイプが人気。
ではヘッドホンではというと…。昔からプロフェッショナル用などにオープン型(開放型)ヘッドホンが存在していますが、もちろん音漏れもするものでした。
そんななか、NTTソノリティが2024年7月18日に発売した「nwm ONE(ヌーム ワン)」は、構造的にもオープンで周囲の音が聞こえるのに音漏れしないワイヤレスヘッドホンです。
…ってどういうこと!? と思いますよね。
「nwm ONE」実機の写真がこちら。
▲耳をふさがない構造の「nwm ONE」
開放的どころかヘッドホンのフレームだけなので、そもそも密閉する気もゼロ。そこにNTTが独自開発した「PSZ(パーソナライズドサウンドゾーン)」技術を組み合わせることで、完全開放なのに音漏れしない、そして周囲の音が聞こえるヘッドホンが作られているんです。
▲実勢価格は3万9600円前後
この説明だけでもうお腹一杯な製品ですが、まだレビューは始まっていません。実機を借りて音質や音漏れなど使い勝手をチェックしていきます。
■開放的なのに音質も優秀
完全開放なのに音漏れしないという常識破りのNTTソノリティ「nwm ONE」。分類としては、Bluetoothで接続可能なワイヤレスヘッドホンになります。
まずは、ヘッドホンとしての外見から詳しく見ていきます。
▲正面から見ると普通のヘッドホン
▲装着スタイルもヘッドホン風…ですが、よく見ると耳を密閉していません
「nwm ONE」には、耳を覆うように装着する円形のイヤーパッドは存在します。ですが、装着時に耳をカバーするハウジングと呼ばれる部分を大胆に開放。本来遮音する箇所が空いているので、当然ながら周囲の音も遮られずに飛び込んできます。
▲横から見るとヘッドホンに穴。指が普通に通ります。ヘッドホンを知る人ほど「えっ?」と思うデザイン
▲これがイヤーパッド。シリコン製で耳のまわりに柔らかくフィットさせる目的のパーツです
音を再生するドライバーユニットは左右ヘッドホン中心部にあり、新開発の12mmツイータードライバーと35mmウーハードライバーによる2way構成を採用。ドライバーを独立アンプで駆動するなど音質面にもこだわりある設計です。
▲ヘッドホン中央にあるのが音を再生するドライバーユニット
そしてポイントは、音漏れを最小に抑える機構。NTTによる「PSZ(パーソナライズドサウンドゾーン)」技術ですね。
これは再生する音の逆相をドライバーの背面から放出して側面のスリット部などから放出する特殊なハードウエア設計によるもの。考え方はノイズキャンセルに似ていますが、自分で音楽を流している再生音を空間上で打ち消します。
▲再生音を放出するスリット等で音漏れを打ち消す
では実際に装着して「nwm ONE」の音漏れを確認してみます。
まず音楽が流れていることを確認した上で、家族に装着してもらいすぐ隣で音漏れ具合を確認。耳を近づければ多少は音楽が聞こえますが、音漏れはやはり小さいですね。
▲ダミーヘッド装着でも確かめてみました
ポイントは、耳はオープンなはずなのに「装着した時に聞こえる音量」と「音漏れしている音量」が全く釣り合っていないところ。音漏れの音量は、イメージとしてはリスニング側の1/10程度。静かな室内でも1メートルも離れると気にならなくなります。
一方、音楽リスニングしている本人は、音量を上げすぎなければ周囲の音が聞こえます。これなら自宅でインターホンが鳴ったり、職場で音楽リスニングしつつコミュニケーションも阻害しないという用途もアリでしょう。
▲周囲の音が聞こえて安全面もバッチリ
そしてこの「nwm ONE」、意外にも(?)屋外でも使えます。周囲の騒音を低減するノイズキャンセルはないので環境音も聞こえる、まさに開放的な音楽リスニングが可能です。あと、夏場は耳がオープンで蒸れないところもいいですね。
▲電車内でもテスト
周囲の人も環境音や騒音が聞こえているので、音量を上げても音漏れは問題になりません。
…が、僕はどうしても「本当に聞こえてないか」と心配になってしまって、自然と音量小さめで聴いてしまいました。周囲の音の聞こえ具合にも影響するので、心理的には音量小さめが安心ですね。
機能面も見ていきましょう。
Bluetooth接続は、AACコーデック以外にマルチポイント接続に対応。LE AudioやAuracastも利用可能とまさに全部入り。
バッテリー駆動時間は最大約20時間で急速充電にも対応。USB接続による有線接続(USBオーディオ)にも対応しています。
スマホとワイヤレス接続して音質もチェックします。
▲AndroidスマホのAACコーデックで音質チェック
最初に語るべきことは、音質面では通常の形状のヘッドホンと比較しても全く遜色ないこと。宇多田ヒカル『BADモード』を聞くと、引き締まった空気感ある低音再生、ナチュラルに浮かぶボーカル、シンバルの刻みとバランス良く高音質。もちろん音楽を流したまま周囲の音も聞こえてきます。
専用の「nwmアプリ」を使えばパラメトリックEQも利用可能で、デフォルトの“Balanced”から“More bass”に変えると重低音ヘッドホンになるし、“More Treble”にすれば歌声や金属音のシャープさが引き立ち、“Dynamic”なら分かりやすくドンシャリ化。
さらに、通話マイクにはNTTコンピュータ&データサイエンス研究所が開発した“Magic Focus Voice”技術を搭載。
▲Macに接続してビデオ会議でマイク音質もテスト
マイクの音質は、静かな状態では元のマイク音質と呼ぶべき声の厚みやニュアンスの再現が優秀。聞き取りやすさだけでなく、情報量のあるタイプです。そして騒音下では騒音を拾わず声だけを拾う性能も実力十分。ビデオ会議目的にもアリでしょう。
* * *
完全開放なのに音漏れしないという常識外のNTTソノリティ「nwm ONE」。実機を使ってみると、本当に“実用上、音漏れなし”と呼べる性能に加えて、周囲の音が聞こえて、オマケに夏場も蒸れない快適さ。そして音楽リスニングも通話マイクも高音質と全方位に優秀。実勢価格は3万9600円とそこそこのお値段ではありますが、価格以上に価値のあるヘッドホンです。
>> nwm「nwm ONE」
<取材・文/折原一也 撮影協力/NTTソノリティ>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長。YouTube
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