初めて「CITIZEN」のブランド名を冠した「16型懐中時計」の誕生100年を記念して、都内会場にてCITIZENブランド時計100周年記念イベント「The Essence of Time」が開催された。会場で展示されていた100本の時計の中から、私が独断と偏見で選んだ10本をお届けする。

○「視覚障がい者対応時計」1960年〜

シチズンが1960年から手掛けている「視覚障がい者対応時計」の製造販売。従来のひと目で「視覚障がい者用」とわかる形状に高いデザイン性を持ち込み、「ダイヤルの凸印を触りながら時刻を確認できる」機能性を確保している。

「視覚障がい者対応時計」は風防を開け、文字板と針を指で触って使用する

文字板には、このように触れることで何時かがわかる点が打たれている(3点が12時位置)

1960年から、実に多くのモデルが作られている

○鉄道時計の生産は技術力の証し! 鉄道車掌用時計「CITIZEN ACE」1963年

重要な社会のインフラ「鉄道」の正確な運行を支える鉄道時計。その製造販売を任さることは、メーカーが持つ技術力の高さが広く認められたことにほかならない。

車掌が使用する鉄道用時計「CITIZEN ACE」

シンプルでありながらすっきりと見やすい、アラビアインデックスと目盛りを持つダイヤル。ダイヤルの端まで届きそうな、先端が細く長く目盛りに重なる分針と秒針。時刻を大きく正確に見せるために主張を抑えた細縁なベゼル。また、時刻合わせがしやすいように秒針を12時位置で止める機能が付いている。

秒単位での視認性を強く意識したフェイスデザイン

○子どもが時計を読めるようになる工夫「キンダータイム」1968年

「子どもにもプログラム教育が必要」と言われ始めてからそれなりの年月が経過しているが、1968年当時は「子どもにも時計の読み方教育が必要」と言われていたものだ。

キンダータイム。子ども用とはいえ、決して幼稚過ぎないデザイン

シチズンも時計メーカーとして、子どもにも読みやすい文字板を開発。この朱色ストラップのモデルの場合、まず時針が指している朱色のマスの数字(時)を読み、続いて長針が指している山吹色の数字の目盛りを読む。

デザインが時計教育をアシストする

発売当時のパンフレット

○世界初のアナログ式太陽電池時計「CRYSTRON SOLAR CELL」1976年

シチズンといえば光発電「エコ・ドライブ」。「CRYSTRON SOLAR CELL」は、そのエコ・ドライブの1号機。世界初(シチズン調べ)となった太陽電池充電式のアナログクオーツ(水晶)式腕時計だ。

文字板に単結晶シリコン太陽電池を8枚配置した姿は、あまりにもド直球。当時はソーラーセルを隠すことが技術的に難しかったせいもあるが、この形だからこそ、新しい技術と商品性の伝わりやすさを備えているともいえる。

ソーラーセルを文字板中央に堂々と配置した「CRYSTRON SOLAR CELL」

カラーバリエーション。配色を変えるだけで、別のデザインにすら見えるのが面白い

なお、リファレンスには「デザイナーは料理人に例えられることがある」とした上で「素材をそのまま生かしたという点で、どこか和食に近くもあります」とある。なるほど。

○熱で発電! もうひとつの! 「エコ・ドライブ サーモ」1999年

外気温と体温の差で発電する特殊な給電方式を採用。ケース上部を放熱線で冷却する一方で、ケースバックは装着者の腕を密着させて熱をムダなく拾えるよう、緩やかに婉曲した形状になっている。レトロSF的なデザインとユニークな発想がマッチした製品だ。

アンテナのようなリングは本体冷却のための放熱線

○エコ・ドライブの電力残量がわかる「プロマスター エコ・ドライブ E210 パワーリザーブ クロノグラフ」2004年

「クオーツで機械式クロノグラフを超える機能」をテーマに開発されたクロノグラフムーブメント「E210」を搭載。また、エコ・ドライブとして初めて、時計の充電量を文字板上で確認できるパワーリザーブ表示を12時位置に搭載した。

宇宙飛行士のツールを思わせるデザイン

12時位置がパワーリザーブ。写真はほぼ満充電状態

時計のケース内部で使用されているパーツ

○世界初! 音声メモ機能付きウォッチ「VOICE MEMO」1984年

6秒間の音声録音・再生が可能なモデル。音声記録エリアには、当時として最先端だった64キロビットメモリーチップを用い、音声をデジタルデータ化して格納した。記録と再生は、それぞれ時計下部の「REC」「PLAY」ボタンでいつでも行える。

ボイスメモ機能はさておき、通信機のようなデザインは、今もニーズがありそうだ

しかし、そんな機能そのものより、このモデル最大の魅力は、音声メモが使えることをフェイスデザインで視覚的に表現している点だ。まるで旧車のキャビネットのような、地球防衛軍隊員が持つ通信機のようなデザインは、当時の子どもたちの心に強く刺さったに違いない(※大人向け商品です)。

○世界初の多極受信型電波時計「Radio-Controlled」1993年

「この時計、どうして中央にヒューズが付いているんだろう?」と思った皆さん。これは電波時計の受信アンテナなのです。

「何かの計測器?」と、同僚の注目を集めること間違いなし!

アンテナ設置による制限をものともせず、左上をカレンダー、左下をタイムゾーン、右を時計と、フェイスを大胆に3分割。ぶ厚いカットガラスの風防とコニーデ形状のセラミックベゼルの中に収めた。

シチズン時計の奥深さを集約したようなモデルだ

世界初(シチズン調べ)の多極受信型電波時計を作ったのもまたシチズンだった。「世界初」を名乗れる製品の多さは、技術力の高さはもちろん、挑戦する精神の強さ、発想のユニークさの証明でもある。

○極小ムーブメント5連装「MEME OF CITIZEN」2002年

世界主要都市の時刻をすぐに確認できる、世界を旅する女性のためのレディスウォッチ。バングル形状のシャープなケースに極小クオーツムーブメントで駆動する5つのウォッチフェイスを縦並びにセットし、タイムゾーンが異なる5つの都市について現在の時刻を同時に見ることができる。

5つの都市の時間をひと目で確認! ただし時刻合わせは手動

2007年には、本作のムーブメントが「世界最小のムーブメント」として、ギネス世界記録にも認定された。

○脱着可能な回転ベゼル「PROMASTER PROFESSIONAL DIVER 1000m」2002年

レジスターリング分解構造を持つ飽和潜水対応ダイバーズウォッチ。本来、ユーザーによる分解など認められないダイバーズウォッチだが、「PROMASTER PROFESSIONAL DIVER 1000m」はこれが可能。リングに砂が混入しても、ユーザーが自分で分解清掃できる。

この重厚感で、ユーザーによる分解清掃が可能!

その意外性と、自分のツールを自分でメンテできる喜びが、この時計にはあるのだ。1,000mの水圧に耐えるプロギアとしての性能と信頼性を体現するかのような重厚なデザインも魅力。