『デッドプール&ウルヴァリン』加瀬康之&山路和弘が生み出す化学反応 ディズニー映画でR指定ノリ全開「爽快でした」
マーベル屈指の破天荒ヒーロー・デッドプールと『X-MEN』シリーズで活躍した不死身のヒーロー・ウルヴァリンが、マーベル・スタジオ劇場公開最新作『デッドプール&ウルヴァリン』でタッグを結成。日本語吹替版では、過去シリーズと同じく加瀬康之(デッドプール役)と山路和弘(ウルヴァリン役)が声を当てている。世界最速公開前にインタビューに応じた二人が、長年担当する両ヒーローの魅力や、最新作の見どころを語った。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
ウルヴァリンまさかの再登場「え、もう1回!?」
Q:(加瀬さんへ)ライアン・レイノルズ演じるウェイド・ウィルソンの吹替は、2009年公開の映画『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』から担当されています。
加瀬康之(以降、加瀬):『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』ではデッドプールではなく“ウェポンX”と呼ばれていて、ほぼしゃべっていないんです(笑)。おしゃべりなウェイドが、口を縫われているので……。『デッドプール』1作目は「20世紀フォックス(現:20世紀スタジオ)さんでライアンの日本版声優を担当していた加瀬さんにお願いしたい」と依頼を受けて決まったので、当時は責任重大だと思っていました。
Q:デッドプールにはどういったイメージをお持ちですか?
加瀬:ハチャメチャな傭兵、適当なヒーローです。(『デッドプール2』で)1回身体がバラバラになったこともあって……。
山路和弘(以降、山路):それどういうこと?(笑)
加瀬:デッドプールの彼女が死んで、「俺はもう生きている意味がない」って自分の部屋に爆弾をたくさん置いて、その上に寝そべってタバコを吸ったまま爆発したんです。首も胴体もバラバラになって、それでも死ななくて……それでいて適当&敵を殺しまくるヒーローってすごいですよね。
Q:(山路さんへ)ウルヴァリンの物語は『LOGAN/ローガン』で一旦幕を閉じましたが、本作で奇跡のカムバックを果たしました。再び日本版声優のオファーを受けた時の心境は?
山路:「え、もう1回!? どうすんの!?」です(笑)。『LOGAN/ローガン』でピタリと0になって終わったのに、「戻れるかよ!」というのが正直な心境でした。
ディズニーでR指定「結構すごいセリフを言っちゃっています(笑)」
Q:(加瀬さんへ) デッドプールは第四の壁(注:舞台と客席を隔てる架空の壁)を破壊して観客に語りかける特性を持っていますが、アフレコではどういった意識で演じられていますか?
加瀬:本当にスクリーンの向こうにいる人へ、話しかけるようにやっています。適当なことを話した後、パッと見て「やっちゃうよ」「これからがお楽しみだぜ」といった感じで、少し決める時が多いです。
山路:最近の映画でも、カメラに向かって急に話しかけるカットってあるよね。実は、2000年ごろ公開された映画で、監督から「山路、このシーンはカメラに向かって言ってくれるか?」って指示されたことがあって。当時はカメラを見るなんてことはあまりなかったから、「俺はできない!!」って返したことがあった(笑)。
加瀬:第四の壁を破れるのは、デッドプールくらいですからね!
Q:本作はディズニー映画でありながら、R指定で製作されたことも注目されています。
加瀬:『デッドプール』は過去2作ともにR指定でしたからね。『LOGAN/ローガン』もそうでしたよね?
山路:『デッドプール』と『LOGAN/ローガン』のR指定は、意味がちょっと違うかもしれない。
加瀬:『デッドプール』の描写はもちろん、内容もR指定ですよね。今回も、結構すごいセリフを言っちゃっています(笑)。
山路:「ディズニー映画でこんなこと言っちゃっていいんだ」って。ある意味、爽快でした。(笑)
加瀬:ディズニーさんがデッドプールを迎え入れるということは、そういったところも覚悟しないと映画として成立しないと思うので、ライアンもかなり戦ったと思います。
Q:デッドプールとウルヴァリンのバディ感は、どのように表現しましたか?
加瀬:個性の強いヒーローがぶつかり合ったらどうなるんだろう? という化学反応を意識して収録していました。
山路: 2人で無茶苦茶言い合って、殺し合いの最中にののしり合うシーンが続くと、気持ちがどこか違うところに行くんだよね(笑)。
加瀬:車中のシーンは必見ですよ! ののしり合いながら、腕を折って、引っ張り上げて「どうだ!」みたいなことを続けた後、「タイム! タイム!」って一息ついて。「お前はほんと人間のクズだな」「 いや、お前はどうなんだよ」ってまた(殺し合いが)始まる。延々とやっている姿が面白いです。
もしも、デッドプール&ウルヴァリンがアベンジャーズに合流したら…
Q:世界中で絶大な人気を誇るデッドプールとウルヴァリンが、なぜここまで愛されるのか、お二人は分析したことはありますか?
加瀬:デッドプールは、ブレないところが魅力です。彼は、全世界が待ちに待ったヒーローじゃないですか。このヒーローを実写化したらどうなるんだろう? という期待値の高さと、先の読めない感じがヒットにつながって、3作目で初めてディズニーさんに加わった。面白いのは、本作がフォックスさんの集大成を描いていることなんです。よくディズニーさんがOK出したくらい(笑)。いろんな意味で感動しました。ライアン自身が作りたい映画を作っていると思うので、これからも独自路線でやっていくんじゃないかなと思いますね。
山路:ウルヴァリンは、ヒュー・ジャックマンの人柄が相当響いている感じがします。『LOGAN/ローガン』でヒューが全力でアクションシーンに声を当てた後、ニコッと笑うアフレコ映像が世界に流れた時、ウルヴァリンの人気がグンッと上がった気がしました。
加瀬:ウルヴァリンの人間臭さも好きです! 仲間を助けに行けばいいのに、自分のしがらみを考えて行かなかったり、ヒーローらしくないところが人気ですよね。
Q:本作でマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)入りしたデッドプールとウルヴァリンは、将来的にアベンジャーズとも共演する機会があるかもしれません。
加瀬:僕、MCUで別のヒーローの吹替(ヴィジョン役)をやっているので、アベンジャーズとは被りたくないですよね……(笑)。
山路:俺だって『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』でレッドスカルの吹替を担当したから!(笑)
加瀬:デッドプールはMCUの隣にあるレールを歩くような、独自の路線で行ってほしい気持ちもあります。
山路:アベンジャーズに入ったら、R指定で製作するのかって話になっちゃうからね。
加瀬:『アベンジャーズ』シリーズは全年齢に観てほしいだろうから、R指定は難しいんじゃないですかね……ってことは、アベンジャーズ合流は無理です(笑)。
山路:いや、(二人のシーンだけ)ピー入れるかもしれない。
加瀬:ピーだらけで面白くなくなっちゃう!(笑)
Q:加瀬さんは『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』からウェイドを15年、山路さんは『X-MEN2』(2002)からウルヴァリンを22年演じられており、キャラクターとは長い付き合いです。お二人の声優人生において、デッドプールとウルヴァリンはどんな存在ですか?
加瀬:『デッドプール』は公開する度にその時代のニーズに合わせた作り方をしていると思うので、キャラクターは高い位置でキープしつつ、映画としては毎回進化している印象です。今後も続いていくとしたら、その時代の人が観るデッドプールとして人気が出るんだろうなと思うので、そういう意味では、毎回進化していくんじゃないかと思います。ただキャラクターとしては、進化しない方がデッドプールらしくていいとも思っています。
山路:俺にとってウルヴァリンは、吟味して変化しながら1つの形になったキャラクター。 何年も経つと、自分と一緒になっている感じがする。そういう距離感でやってきた存在です。
映画『デッドプール&ウルヴァリン』は7月24日(水)世界最速公開