致死率ほぼ100%なのに「本当に予防注射が必要?」の声も…動物看護士が訴える「狂犬病」の恐ろしさ
自治体に飼い犬を登録すると、毎年「狂犬病の予防注射」に関するお知らせが届きます。狂犬病は「日本で感染者が発生」といった話を聞かないため、最近では「本当に予防注射を受けさせる必要があるの?」と思っている人もいるようです。しかし実際は、日本をはじめとしてまん延していない国はごくわずかで、世界的に見ると毎年死者も出ている非常に怖い病気です。
狂犬病の恐ろしさと、ワクチン接種の重要性について、動物看護士のfujimaruさんに教えていただきました。
ワクチン接種率はおよそ7割にまで減少
Q.日本では「狂犬病」のニュースをあまり聞きませんが、ワクチンは必ず打たせなければならないのですか。
fujimaruさん「日本は世界でも非常に珍しい、狂犬病の感染を抑え込むことに成功した国です。国内では1950年代を最後に感染例がありませんが、アフリカや中国、東南アジアといった他国では、狂犬病に感染した野犬などが今も生息しています。
狂犬病ウイルスの最も怖いところは、犬にかまれるなどして感染・発症すると、致死率がほぼ100%という点です。潜伏期間は1〜2カ月(1週間未満の場合もある)ほどあるといわれており、感染動物からの咬傷(こうしょう)後24時間以内に処置することで助かる可能性もありますが、一度発症してしまうと『けいれん』や呼吸障害などが現れた上で死に至る、非常に怖い病気です。
そのため、日本では犬を飼う飼い主に対して、『狂犬病予防法』という法律に基づいた『狂犬病の予防注射をさせる義務』があります。基本的には毎年1回の接種が原則です。1年間ワクチンの効果が見込めるため、毎年同じ月に接種するのがいいですね。
しかし、狂犬病の恐ろしさがあまり知られなくなってしまったこともあり、残念ながら近年、接種率が下がってしまっているのが現状です。以前はワクチン接種率が100%近くで推移していましたが、2022年度ではおよそ7割にまで減少してしまいました。
世界保健機関(WHO)は狂犬病のまん延を防ぐために7割以上のワクチン接種を推奨しているとのことなので、飼い主の皆さんにはぜひワクチンの接種をお願いしたいです」
Q.猫やウサギなど、犬以外の動物も狂犬病にかかることはあるのでしょうか。
fujimaruさん「狂『犬』病という名前から、犬からしか感染しないものと思っている人も多いかもしれませんが、実は哺乳類全般に感染し得るとされています。海外の事例では、アライグマやコウモリから感染が確認されたケースもあります。ただ、感染経路としてはやはり、『かむ』という行動から野犬などイヌ科の動物からが多いですね」
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狂犬病予防ウイルスの接種は、愛犬を持つ飼い主の義務とはいわれているものの、その接種率は減少傾向にあるようです。近年、公園で人をかんでしまった飼い犬が、狂犬病ウイルスの予防接種をしていなかったと話題になった事例もありました。日本で狂犬病がまん延していないのは、これまで数十年間、高いワクチン接種率を誇ってきたことも大きな理由の一つです。狂犬病は致死率の高い、非常に怖い病気ですから、犬を飼っている人は、飼い主の義務として必ず愛犬に予防注射を受けさせましょう。