エアブラシ使いこなしのポイントはとにもかくにも塗料の濃度!【達人のプラモ術<エアブラシ編>】

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【達人のプラモ術】
ホビーの達人流HowTo
<エアブラシ編>
02/03

■ノズル口径で選ぶエアブラシ

今回は、第1回の購入のポイントの補足から。

エアブラシには大きく分けてダブルアクションタイプ、トリガータイプ、シングルアクションタイプなどの、それぞれ機構が違うタイプがあることは前回書きました。エアブラシは、デザインや機構的な違い(吸い上げ式カップや重力式カップ等)はあれど、空気を使い塗料をミスト状にして塗装するという機能は一緒です。

そして機構的な違いはあれど、共通している点がエアブラシにはあります。それがノズルの口径です。

口径は塗料が出るノズルの直径を指していて、一般的に口径0.18mm、0.2mm、0.3mm、0.5mm、大口径では0.8mmなどバリエーションがあります(※1)。

口径の違いを簡単に説明すると、口径が小さいほど塗料を細く吹く(塗装を描く)ことができる、大きくなるほど太く(大面積に)吹けるということです(※2)。

▲エアブラシ先端のニードルカバーとノズルカバーを外すことでノズルを確認できる。カバーを外してしまうと破損しやすいので取り扱いには注意が必要

▲タミヤ「HGトリガーエアブラシ」(どちらも1万8700円) スプレーワーク・エアブラシのトップモデル。長時間の作業でも指が疲れないトリガータイプ。吹きはじめの塗料の飛びがほとんどなく、繊細な吹き幅調整も可能。上が口径0.3mmモデル、下が口径0.5mmモデル

▲左が口径0.3mm、右が口径0.5mm

▲口径0.3mmノズル。ニードルが下がった(全開)状態

▲口径0.3mmノズル。ニードルが閉じた(全閉)状態

(※1)ノズル口径に関しては0.4mm、0.35mmと言ったモデルも存在する。またノズル口径0.8mm以上だとエアブラシではなくエアスプレーガンと表記される場合が多い。

(※2)シングルアクションエアブラシは0.3mmのみ、ニードルを手動で調整するためにノズルから塗料が垂れてしまうため大口径モデルではがありません。

 

■口径0.3mmがスタンダード

ホビー用としては、口径0.3mmが大スケールにから細かな塗装までをこなせるスタンダードサイズと言われています。前回紹介したホビー用エアブラシの原点モデル『オリンポス。ヤング』も口径は0.3mmでした。

より細かなグラデーション塗装や小スケールの迷彩には0.18mm〜0.2mm、カーモデルのボディの塗装や大面積を塗装するなら口径0.5mmを選ぶといったところです。

そしてノズル口径を選ぶ際に注意しなければいけない点があります。通常エアブラシはコンプレッサーに繋いで使用するのですが、エアブラシのノズル口径が大きくなるに比例して必要な空気量が増加します。低出力のコンプレッサーやエア調整のためのレギュレーターがないコンプレッサーで大口径のエアブラシを使用すると、塗装に支障をきたす(塗装面がムラになる、塗料の粒がとぶ等)場合があります。逆に0.18mmといった小口径ノズルのエアブラシは、一部のメタリック系塗料などに見られる粒子が粗い塗料や粘度高い塗料だと、吹けない、あるいは詰まりやすいといったトラブルの原因になる場合があります。

とはいうものの、最近はコンパクトタイプのコンプレッサーの性能も向上しており、ノズル口径が0.5mmまでと限定すれば圧力低下に関してはあまり神経質にならなくても大丈夫だと思います。

個人的には、最初のエアブラシは汎用性の高い口径0.3mmを、セカンドエアブラシとして、カーモデルやミリタリーモデルなどそれぞれの塗装に特化した口径を追加するのがオススメです。

▲前回の記事作成のあと出てきた、元祖ホビー用エアブラシ「オリンポス・ヤング」。塗料カップの蓋が失われているが、まだ使用可能な状態。口径は0.3mm

▲GSIクレオス「Mr.エアブラシカスタム0.18mmダブルアクション」 現在国内で販売されているエアブラシではもっとも口径が小さいモデル。繊細な線吹きが可能だが、その分塗料の希釈もシビアになる。ある程度エアブラシを使いこなせるユーザー向きのハイエンドエアブラシ

 

▲GSIクレオス「プロコンBOY PS270 WA プラチナ 0.2mm」(1万4680円)0.2mmのノズル口径に、セミイージーソフトボタン、エアアジャストシステム、さらに、エア圧を安定させるエアアップ機構を搭載した精密塗装用エアブラシ

 

▲GSIクレオス「プロコンBOY WAプラチナ0.3 Ver.2 ダブルアクション」(1万4630円) GSIクレオスプロコンBOYシリーズ、ダブルアクションタイプの最高級仕様モデル。セミイージーソフトボタン、エアアジャストシステム、エアアップ機構を搭載。汎用性の高い0.3mm口径のエアブラシのベストセラーモデル

▲ハンザ「エアブラシ ハンザ281ブラック」(2万6400円/エアテックス扱い) ドイツhansa社製エアブラシ。ダブルアクションに見えるが、トリガーボタンを引くことで塗料の吹き付けが可能なモデル。特徴的なノズルカバーは、空気を整流し繊細な吹き突けを実現している。ノズルはワンタッチで交換可能で用途に応じて0.2mm・0.3mm・0.4mmに変更できる

 

■ノズル口径の違いによる使い勝手の違い

※一般的な模型用塗料(ラッカー系・水性アクリル系での使用)

 

■溶剤の薄め方こそがエアブラシ塗装のキモ!誰もが悩む塗料の希釈

さて今回の本題に入りましょう!

エアブラシは難しいものじゃありません。前回も書きましたが、模型塗装での必携ツールとなっていると断言してもいいでしょう。なので私の模型教室でも「本格的な塗装を求めるならエアブラシは必要ですよ」と勧めるようにしています。

とは言うものの、エアブラシを購入したその日から素晴らしい塗装が…いやいや、そうはいきません。やはり慣れは必要です。特性を理解しつつ慣熟することでこそ使いこなせるようになるんですね。そして、エアブラシを使い始めて最初にぶち当たる悩みが、そう!塗料の希釈、薄め方です。

エアブラシは、先に解説したように0.3mmとか0.2mmといった極めて細いノズルから塗料を吹きます。基本的に、使用する塗料は必ず希釈しないといけません(希釈せずに吹けると謳っている塗料もありますが…)。口径0.5mmとかであれば、塗料によっては希釈せずとも吹けなくはないですが、キレイな仕上がりは得られません。つまるところ塗料の希釈がエアブラシ塗装の仕上がりを左右するキモでもあるのです。

 

◎塗料によって溶剤も希釈率も変わる

一般的なプラモ用塗料といえば、ラッカー系、水性に大別できます(あとエナメル系塗料がありますが、エアブラシでの使用が少ないのでここでは省きます)。水性塗料ではファレホなど海外製塗料が広く使われるようになっています。

塗料にはそれぞれ専用溶剤(シンナー・薄め液)があるので、エアブラシでの使用では、塗料に適した溶剤で希釈します。

達人は、いまだにラッカー系塗料(Mr.カラー・タミヤラッカー塗料・ガイアカラー・フィニッシャーズカラー)をメインで使用しているので、希釈はそれぞれの塗料専用溶剤(シンナー)で希釈しています。

で、ここからが大事。 

◎実は厳密な決まりがない希釈率

エアブラシ関係のハウツーでは、塗料の希釈は1対1とか、6対4で希釈するとか書かれています(自身の動画や著書でもそう説明しています)。それは間違いではないのですが、実のところ「希釈率は一概に数値化できないよ」というのが本音です。

それじゃあどーすんの? となるワケですが、エアブラシ塗装で使用する塗料の希釈は、塗料の種類、濃度、吹き付けの際の距離、エア圧、そしてどんな仕上がりを得たいか、といった要素を踏まえて塗料の濃度は変わるものと言って良いでしょう。

達人の場合、ラッカー系塗料だと、ミリタリー系のモデルの塗装であれば【塗料3:溶剤7】(Mr.カラー)で希釈しています。一般的によく言われる【塗料1:溶剤1〜塗料6:溶剤4】と比較すると、かなり薄めの希釈で拭いています。理由は「シェイド塗装など下地塗装による陰影をなるべく殺さずに塗装面に複雑な色の濃淡(表情)をつけるため」。

抽象的な表現ではありますが、色を塗るのではなく、思うように色を描いて塗装面に表情をつけられる【塗料3:溶剤7】の希釈を多用しています。

ちなみにタミヤラッカーだと【塗料4:溶剤6】、ガイアカラーとフィニッシャーズカラーはやはり【塗料3:溶剤7】といったところです。もちろん艶消し塗装と艶あり塗装によっても希釈率は微妙に変えています。

▲ガイアノーツ「ガイアカラー」

▲フィニッシャーズ「フィニッシャーズカラー」

 

◎水性塗料の希釈率

近年、進化が著しい水性塗料ですが、やはりメーカーによって特性が異なるため、一概に希釈率が決められません。

近年内容が刷新された新「水性ホビーカラー」の希釈目安は、塗料1に対して水性ホビーカラーうすめ液1とメーカーが指定しています。実際の使用でも1:1がベストです。

同カラーは水でも希釈できると謳っていますが、エアブラシ塗装にしても筆塗りにしてもオススメしません。乾燥が遅くなり、またプラへの塗料の食い付きも悪くなってしまいます。専用の水性ホビーカラーうすめ液の使用がエアブラシでの安定した塗装面を仕上げる大前提となります。またコンプレッサーのエア圧は0.08Mpa前後が良いでしょう。

▲Mr.ホビー「水性ホビーカラー」

 

◎タミヤ アクリル塗料ミニ

国内で販売されている水性塗料(水性アクリル)の定番といってもよく、艶あり、艶消しともに色数も多く、広く愛用されています。

希釈に関しては専用の「アクリル塗料溶剤」を使用。エアブラシでのメーカー推奨の希釈率は、塗料1に対し溶剤1となっています。ただし達人的には【塗料4:溶剤6】とメーカー推奨値よりやや薄めに希釈しています(艶あり塗装では1:1で使用)。ただし水性アクリル塗料は希釈が過ぎるとムラになりやすく、また垂れやすくもなってしまいます。

▲タミヤ「アクリル塗料ミニ」

 

◎ファレホの希釈に関して

国内でもすっかり定着した感のあるファレホは、スペインで生まれた水性アクリルカラーです。水だけでも希釈できるのですが、専用のシンナー「エアブラシシンナー」が用意されています。

とはいうものの、ファレホはラッカー塗料のような感覚でうすめ液を多めに使うのはNGです。ファレホ1に対してエアブラシシンナー0.5くらいがベスト…のはずなんですが、ファレホ特有の乾燥の速さがアダになって、エアブラシのニードル先端に顔料が固まり、詰まりが発生することが多いのです。また薄めすぎるとムラになり定着性が悪くなります。ファレホをエアブラシ使用する場合は、まず今までの水性塗料の希釈率を忘れてください。

エアブラシの詰まりトラブルを防ぐためには、エアブラシシンナーにフローインプルーバーという液体を添加することで、エアブラシの詰まりを抑えられます。混合率はエアブラシシンナー3に対して1程度の割合です。公式に表記されている精製水は使わなくも大丈夫(筆塗りの場合は精製水のみでもOK)。またコンプレッサーを0.09Mpaと高めに設定することで、より目詰まりを防げます。

▲ファレホ(ボークス扱い)「ファレホ モデルカラー」

▲フローインプルーバーは、専用シンナーと併せて添加することでリターダーと同様の効果があり、ファレホの乾燥時間を伸ばす効果を得られ、エアブラシのニードル先端に顔料が詰まってしまうトラブルが低減できる

*  *  *

というわけで、エアブラシ塗装のキモは塗料の希釈にあるんですね。

文章にすると難解に感じてしまいますが、そう難しいものでありません。エアブラシの口径、塗料の種類、どんな仕上げを求めるかによっても応じて希釈率を変えていく必要があります。

次回はエアブラシのトラブルレスキューをお送りします。乞うご期待!

<写真・文/長谷川迷人>

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。

 

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