キヤノンが、フルサイズミラーレスカメラのフラッグシップ機「EOS R1」とともに、高画素モデルの改良版「EOS R5 Mark II」を7月17日に発表しました。初号モデル「EOS R5」が発売されたのは、コロナ禍真っ只中の2020年7月。基本性能の高さに加え、それまでのEOS Rシリーズには備わってなかったクルクルダイヤルことサブ電子ダイヤルを搭載し、同クラスのデジタル一眼レフEOSと同じ操作感であることなどから、筆者(大浦タケシ)も発表されるやいなやすぐに馴染みのカメラショップに予約の電話を入れたほどです。それから4年、そろそろモデルチェンジのころだなと思っていた矢先の発表でした。ここでは、EOS R5ユーザーである私が、静止画撮影関連の機能のみとなりますが、新しいEOS R5 Mark IIに対する素直な意見をお伝えしたいと思います。

新しい「EOS R5 Mark II」(右手前)をいち早く試してみての魅力や、これまでの「EOS R5」(左奥)からの進化点について、EOS R5を愛用してきた大浦カメラマンにリポートしてもらった

EOS R5 Mark IIを手にする大浦カメラマン

センサーや画像処理まわりは明確な進化がある

まず、数字的なスペックに大きな変更はありませんでした。特に、気になる画素数は先代モデルと同じ4500万画素。これまで、新しいR5はオーバー5000万画素となるんじゃないかと思ってましたが、実際は堅実で現実的な画素数に落ちついたように思えます。正直にいえば、私自身この画素数で不満を感じたことはなかったですし、これ以上の画素数となればハンドリングの低下に加え、メモリーカードや画像保存用ハードディスクのことを考えてしまうわけで、ちょっと安堵しました。

EOS R5の後継となるEOS R5 Mark II。フルサイズ有効画素数4500万画素の裏面照射積層CMOSセンサーと、強力な画像エンジンシステム「Accelerator Capture」を搭載しています。キヤノンオンラインショップでのボディ単体価格は654,500円。発売は8月下旬の予定です

電源をOFFにするとシャッター幕が降りイメージセンサーを保護するのは先代モデルと同じ。屋外などでレンズ交換する際はとても安心できる機構です

ただし、イメージセンサーは新設計の裏面照射積層CMOSセンサーとしているのは注目点。このセンサーは高速の読み出しが可能とのことで、電子シャッター使用時のローリングシャッター歪みは「EOS R5」の40%に抑えているといいます。実際に試してみないと分かりませんが、数値を見る限り大きく改善されたといえ、メカシャッター音が気になるようなシーンではこれまで以上に重宝しそうです。しかも「ニューラルネットワークノイズ低減機能」という何やら難しい名前の機能で、よりノイズを低減しているとのこと。写りにも大いに期待できそうです。

電子シャッターについては、そのほかにも語ることがあります。最高コマ速は10コマ増えて30コマ/秒を達成。しかも、連続撮影時にはファインダー画像がブラックアウトしないよう設定できます。以前、「EOS R3」のブラックアウトフリー機能を使ってラグビーを撮影したことがあるのですが、被写体をフレームから外すことがなかったので、これは嬉しい機能です。しかも、シャッターボタンを押した時点から最大15コマ分をさかのぼって記録するプリ連続撮影機能も搭載しており、電子シャッターの可能性の高さを見せつけます。

付属するバッテリーは新しい「LP-E6P」。省電力優先モード時でフル充電からの撮影枚数は、EVF使用時340枚、LCD使用時630枚となります。従来の「LP-E6NH」「LP-E6N」も使用可能ですが、機能の制限が生じるとのことです

電源スイッチは「EOS R6 Mark II」などと同様、シャッターボタン側に置かれています。ボタン類の機能を無効にするロックも備わっており便利そうです。それ以外の操作部材に関しては、基本的にこれまで通りのレイアウトとしています

ちなみに、画像処理エンジンは従来の「DIGIC X」に加え、「DIGIC Accelerator」なるものを搭載しているとのこと。それにより処理が分担でき、前者は画像の現像を担い、後者は大量の画像データの解析や高速AF処理、AE検出などを行うといいます。DIGIC XとDIGIC Acceleratorによるシステム名は「Accelerator Capture」といい、同時発表されたフラグシップモデル「EOS R1」と同じものとなります。やはり実写してみないと体感できない部分ではありますが、スゴいエンジンが載ったなぁと思うばかりです。

静物はもちろん動きものにも対応でき、価格は高価だが納得できる

もちろん、Accelerator Captureの搭載で、AFも大いに進化しています。被写体に食い付いたら離すことのないAFトラッキングや、サッカーやバスケットボール、およびバレーボール撮影時のみ有効となりますが、撮りたい被写体をカメラが認識するアクションAF、あらかじめ人物の顔をカメラに読み込ませておくと、その人物を優先して検出する登場人物優先など、新機能のオンパレード。極め付けは、ファインダーをのぞく瞳の動きでAF操作のできる視線入力機能を採用し、EOS R3よりも信頼性や精度を高めています。

メモリーカードスロットは先代モデルと同様にダブルスロットとなります。使用可能なメモリーカードはCFexpressとSD/SDHC/SDXC。CFexpressのダブルでなかったので、ほっと胸をなで下ろしました

マルチアクセサリーシューを採用。従来のアクセサリーシューに対応するストロボ等の装着も可能ですが、防塵防滴構造を有するストロボなどは別売の「マルチアクセサリーシューアダプター AD-E1」が必要となります。EOS R5では電源スイッチだったレバーは、静止画と動画の切替用となります

ファインダーアイピースは視線入力機能の搭載により、これまでよりも大きくなっています。写真には写っていませんが、視線入力を確実に行うための大型アイカップも別売で用意しています

EOS R5シリーズはカメラの性格上、どちらかといえば風景や商品の撮影、ポートレートなどを得意とするイメージがありますが、本モデルは動きものに対してもすごく強化されていることが分かります。ちなみに、これらAFに関する機能である「デュアルピクセルIntelligent AF」は、映像エンジンと同様にEOS R1と同じとのこと。動きものを撮る機会が多い人には便利そうです。自分的には、この複雑なAFを使いこなす自信はちょっとないかなぁと思うとともに、いくつかの機能については搭載されていること自体忘れてしまいそうな充実ぶりです。

連続撮影時にブラックアウトの発生をなくすブラックアウトフリー機能を搭載。電子シャッター使用時のみ有効な機能です。動いている被写体も、しっかりとファインダーで追うことが可能です

AFモードは、先代モデルでは「ONE SHOT」と「SERVO」の2つでしたが、EOS R5 Mark IIではカメラがワンショットとサーボを自動的に切り替える「AI SERVO」も搭載。切り替わるレスポンススピードが気になるところ

AFメニューのなかの「サーボAF特性」の項は、これまでケース別に4つのモードがまず並び、最後に「オート」となっていましたが、本モデルでは「オート」が先に並び、そのほかは「M(マニュアル)」のみとしています。使いやすさを考えると、こちらのほうが現実的

そのほか、最大8.5段の手ブレ補正機構や、電子先幕シャッター選択時に1/320秒を実現したストロボ同調速度、シャッターボタン側に移った電源スイッチ、カメラ内で最大1億7900万画素の画像の生成が可能なカメラ内アップスケーリング機能など、思いのほか見るべきところが多く感じられます。頑張ってほしかったと思うのは、EOS R1と同じ943万ドットのEVFを採用しなかったことぐらい。価格については65万円ほどと手の出しづらいものですが、昨今の状況を考えれば致し方なく、むしろこの程度でよく抑えてくれたと思えます。数字的なスペックに関しては大きな変化は少ないものの、AFをはじめとする新しい機能満載で、これまで以上にオールラウンドに使えるモデルに仕上がったと述べてよいでしょう。

最後に個人的な話となりますが、新しいEOS R5 Mark IIは仕事の撮影でもプライベートの撮影でも出番の多かったEOS R5の後継であることを考えると、長期のローンを組んででもとりあえず1台手に入れたく思っています。しかしながら、果たして家人の同意が得られるか否かが購入の鍵になりそう。何はともあれ、本モデルの予約開始は7月24日(水)の午前10時からですので、それまでに結論を出さなきゃと思っています。

動画に関するものですが、EOS R5 Mark IIの底部にはクーリングファン「CF-R20EP」からの空気を取り込むダクトが設けられています。これにより、8Kおよび4Kでの連続120分以上の撮影が可能になるとのことです

こちらがクーリングファン「CF-R20EP」

著者 : 大浦タケシ おおうらたけし 宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマンやデザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌および一般紙、Web媒体を中心に多方面で活動を行う。日本写真家協会(JPS)会員。 この著者の記事一覧はこちら