Intelが2024年5月15日に発表した「Thunderbolt Share」。Thunderbolt 4/5ポートを備える2台のPCをThunderboltケーブルで接続し、高速なデータ転送、指定したフォルダの同期、新しいPCへのデータ移行、画面共有、1台のマウスとキーボードで両方のPCを操作といった機能を利用できる。本格的な普及は2024年後半からと見られるが、今回は対応するThunderboltドックを入手できたので、さっそく試してみた。

Thunderbolt Share対応のThunderboltドックを経由して2台のPCを接続してみた

Thunderbolt Shareを利用するには、まずライセンスされたThunderbolt 4/5を備えるWindows PCまたはThunderboltドックといった周辺機器が必要だ。そして、2台のPCを接続するときは、その両方がThunderbolt 4/5ポートを備えていることも必須となる。

PC同士を直接Thunderboltケーブルで接続する場合は、どちらか片方にThunderbolt Shareのライセンスがあれば利用可能だ。周辺機器にライセンスがある場合は、Windows PC側は2台ともライセンスがなくても利用できる。つまり、すでにThunderbolt 4/5搭載のPCを持っている人も、ライセンスを持つThunderboltドックやディスプレイを導入すればThunderbolt Shareを使えるようになるわけだ。まさに今回の試用環境がそれに該当する。

Thunderbolt 4/5ポートを備えるPC同士を直接接続するほか、Thunderbolt Share対応のThunderboltドックやディスプレイを経由して2台を接続する方法も想定している

さっそくテストに移ろう。今回用意したのは、まずThunderbolt Shareに正式対応しているThunderboltドックの「OWC Thunderbolt Go Dock」だ。90Wの給電に対応するThunderbolt 4を3ポート、2.5Gの有線LAN、10Gbps対応のUSB 3.2(Type-AおよびType-C)、USB 2.0、SDカードスロット、HDMI出力など多様なポートを備えている。多くのデバイスを接続しておけるのが便利なデバイスだ。

「OWC Thunderbolt Go Dock」。実売価格は5万5,000円前後

正面にはSDカードスロット、ヘッドセット端子、USB 2.0、10Gbps対応のUSB 3.2 Type-C

背面にはThunderbolt 4×2、HDMI出力、2.5Gの有線LAN、10Gbps対応のUSB 3.2 Type-A×2、電源コネクタ

右側面にもThunderbolt 4ポートが1基ある

Windows PCには、Thunderbolt 4ポートを備えるマウスコンピューターのノートPC「mouse F4-I7I01OB-A」と同じくThunderbolt 4ポートを備えるASUSのマザーボード「ROG CROSSHAIR X670E HERO」を使用した自作PCを用意した。

マウスコンピューターの「mouse F4-I7I01OB-A」。直販価格は14万9,800円から

ASUSの「ROG CROSSHAIR X670E HERO」。AMD X670Eチップセットを搭載するRyzen向けのマザーボードだ。実売価格は13万9,000円前後

補足:本稿はThunderbolt Shareが市場未投入の時点で試した記事であり、今回の試用環境、具体的にはThunderboltドックを除くマウスコンピューターの「mouse F4-I7I01OB-A」とASUSの「ROG CROSSHAIR X670E HERO」については、公式にThunderbolt Shareの動作確認がとれている製品ではない。そのため、現時点ではメーカーが動作を保証するものではない点には留意いただきたい。

ここからは、接続手順を紹介しよう。それぞれのPCにIntelのWebサイトから「Thunderbolt Share」アプリをダウンロードしてインストールして起動する。そして、OWC Thunderbolt Go DockのThunderbolt 4ポートにThunderboltケーブルで接続。これで自動的に2台のPCが接続される。

IntelのWebサイトから「Thunderbolt Share」アプリをダウンロード

2台のPCに「Thunderbolt Share」アプリをインストールする

「Thunderbolt Share」アプリを起動して「Next」ボタンをクリック

この画面でOWC Thunderbolt Go DockのThunderbolt 4ポートにそれぞれ接続する



自動的に2台のPCがリンクされ、Thunderbolt Shareが利用可能になる

それぞれの機能を紹介していこう。まずは、ディスプレイ、マウス、キーボードを共有できる「Control Other Computer」から。今回の例では、デスクトップ側のマウスとキーボードでノートPCを操作したり、ノートPCの画面をデスクトップ側の表示させて操作できるのが便利。筆者のようにベンチマーク用のPCと執筆用のPCを分けているケースや、ゲーム実況者ならゲームプレイ用のPCと配信用のPCを分けているなど2台のPCを同時に使う人にとっては、かなり役立つはずだ。

「Control Other Computer」では、デスクトップPC側のディスプレイにノートPCの画面を表示させて操作することができる

次は「Sync Files」。これは指定したフォルダ同士の同期させるというもの。標準ではDocumentsやPictures、Desktopといったフォルダが用意されているが、それぞれのPCの好きなフォルダ同士を同期させることも可能。2台のPCで同じデータを保存しておきたい場合に便利な機能だ。

2台のPCで指定したフォルダ内のデータを同期させる「Sync Files」

続いて「Drag & Drop Files」。これはシンプルに2台のPC間でファイルやフォルダをドラッグ&ドロップで手軽にコピーできる機能だ。Thunderbolt 4接続なので非常に高速なのが強み。今回のテストでは644MBの動画ファイルなら約1.1秒でコピー完了。15.5GB(合計9ファイル)では約25.3秒で完了した。大容量データをやりとりすることが多い動画編集でもっとも活躍しそうだ。

2台のPC間でファイルをコピーできる「Drag & Drop Files」

最後は「Transfer Data to New Computer」。これは古いPCのデータを新しいPCに移行できるというもの。Documents/Pictures/Music/Videos/Downloads/Desktop/Favoritesなどのフォルダが対象で、手動で好きなフォルダも追加できる。

古いPCから新しいPCにまとめてデータを移行できる「Transfer Data to New Computer」

ちなみに、ライセンスを持っていないPC同士を接続すると「No license found」と表示されてThunderbolt Shareを利用できない。

ライセンスを持たないPC同士の接続時にはこの画面が表示される

PC同士をThunderboltケーブルで接続するだけで、ディスプレイ/マウス/キーボードを共有できたり、ファイルのやりとりをできるのは便利だ。データのやりとりならNASでいいのではと思う人もいるだろうが、Thunderbolt ShareならPC同士で直接データをやりとりするので高速かつセキュリティ面でも安心だ。機密性の高いデータならネットワークを経由したくない場合もあるはずだ。アプリはシンプルで使いやすく、2台のPCを同時に使って作業することが多い人にはうれしい機能になるだろう。あとは、ライセンスを持つWindows PCや周辺機器が増えることを期待したい。