「痔」の予防法はご存じですか? 原因や日常生活でできる対策も医師が解説!

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痔の原因はご存じですか? 原因を知って生活習慣を改善することで、痔のリスクを減らすことができるのかも気になるところです。今回は、痔の原因や予防法について、「平田肛門科医院」の平田先生に解説していただきました。

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監修医師:
平田 悠悟(平田肛門科医院)

筑波大学医学群卒業。その後、東京山手メディカルセンター大腸・肛門外科(大腸肛門病センター)勤務、東京大学大学院医学系研究科修了。2022年より、東京都港区に位置する「平田肛門科医院」に勤務。医学博士。日本外科学会専門医、日本大腸肛門病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医。

痔とは?

編集部

まず、痔について教えてください。

平田先生

痔は肛門と肛門周辺の病気の総称で、むし歯に次いで第2位の国民病です。検診をおこなえば、約5割の人に痔が見つかると言われています。痔は「痔核(じかく)」「裂肛(れっこう)」「痔瘻(じろう)」の3種類に大きく分けられます。

編集部

それぞれについて、もう少し詳しく教えてください。

平田先生

肛門にいぼ状の腫れができているのが痔核で、肛門の外側にある肛門上皮が裂けてしまうのが裂肛、肛門腺にうみがたまり、瘻管という管ができてうみが出てしまうのが痔瘻です。さらに痔核は、いぼができる場所によって「内痔」と「外痔」に分けられます。

編集部

どのタイプの痔が多いのでしょうか?

平田先生

割合は男女で少し異なりますが、当院のデータでは半数以上が痔核の患者さんです。次いで男性では痔瘻、裂肛と続きます。女性では2番目が裂肛、3番目が痔瘻となっています。意外かもしれませんが、妊娠・出産があるため痔になるのは女性の方が多いのです。

痔の原因をタイプ別に解説

編集部

なぜ、痔になるのですか?

平田先生

それぞれのタイプによって、原因も異なります。例えば痔核の場合、便秘が原因であることが多いですね。便秘のときに、トイレで長時間いきんで肛門に負担をかけていると、肛門のクッション組織の血流が悪くなってうっ血したり、血管が切れて出血し、血管と結合組織が肛門内に出てきたりします。ほかには、長時間座ったままでいたり、立ったままでいたりすると同じく腹圧がかかりますし、妊娠や出産で痔核ができることもあります。

編集部

では、裂肛の原因はなんですか?

平田先生

便秘や出産で腹圧をかけすぎると肛門上皮が裂けることがあるので、痔核と同様、痔の原因として注意が必要です。ほかには、慢性の下痢も裂肛の原因となります。下痢でも便の回数が増えて腹圧がかかりやすくなるので、すぐに切れて裂肛になるのです。

編集部

では、痔瘻の原因は?

平田先生

痔瘻は、便に含まれている細菌からの感染で起こります。通常は細菌に対する免疫力があるので、炎症を起こすことはありませんが、ストレスや疲労が重なって肛門の免疫力が落ちていると、肛門陰窩(いんか)というくぼみに細菌が侵入し、炎症を起こして肛門腺が化膿することもあります。

生活習慣を改善すれば痔になりにくくなる?

編集部

痔を予防するためには、どうしたらいいでしょうか?

平田先生

最大のポイントは、便秘にならないことです。また、下痢のときの水様便でも、通過するときの勢いが激しくて肛門粘膜に傷をつけ、そこから便がしみ込むので、炎症を起こしやすくなります。便秘でも下痢でも、腹圧がかかると良くないので、無理にいきまないことが大事です。

編集部

具体的には、どのようなことに気をつけたらいいですか?

平田先生

食物繊維や乳酸菌は腸内環境を整えてくれるため、便秘や下痢の予防になります。ビフィズス菌入りのヨーグルトなどの乳製品や、食物繊維がたくさん含まれている穀類、豆類、野菜、海藻類などを日常の食事で摂るのがおすすめです。漬物や納豆などの発酵食品も積極的に摂取していただくといいと思います。日本人の食物繊維の平均摂取量は約14gですが、1日20gの摂取を目指してほしいですね。

編集部

ほかにも、気をつけたい生活習慣はありますか?

平田先生

座りっぱなし、立ちっぱなしを避けるのもとても大事です。1時間座っていたら立つ習慣をつけてください。そこから10mでも歩くようにするとさらにいいですね。あとは、便意を感じたら我慢せず速やかにトイレに行くこと、特に朝の排便は我慢しないように心がけましょう。ほかには、体を冷やさない、疲労やストレスを溜めない、アルコールや香辛料は控えるなどを意識していただくとさらにいいと思います。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

平田先生

痔の予防と聞くと「自分には関係ない」と思う人もいるかもしれませんが、実際は痔になる人はかなり多く、誰にでも起こり得る疾患です。痔の予防は決して特別なことが必要なわけではなく、ここ数年でよく耳にするようになった「腸活」「菌活」なども、本質は便秘の予防、痔の予防と同じです。自分の腸や肛門が長く健康でいられるよう、食事や生活習慣を少し意識してみてください。

編集部まとめ

痔のタイプやそれぞれの原因、予防法について解説していただきました。じつは、痔になる人はかなり多く、決して珍しい病気ではなく誰にでも起こり得る一般的な病態です。しかし、ちょっと食事を意識したり、生活習慣を改善したりすることで、痔になりにくくすることが可能とのことでした。日々のちょっとした工夫でできる痔の予防、できることから取り入れてみてはいかがでしょうか。

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医院情報

平田肛門科医院

所在地〒107-0062東京都港区南青山5-15-1

アクセス東京メトロ「表参道駅」 徒歩7分

診療科目肛門科

03-3400-3685

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