このたび「学長」に就任する森田健作(泰日工業大学本部前にて)

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 前千葉県知事で俳優の森田健作が来春、タイにも拠点を置く「アジア・オンライン大学」の学長に就任することになった。開校に先立ちタイを訪れた森田は「少子化が進む中で労働力不足に陥っている日本企業の一助になるように取り組みたい」と意欲を見せていた。

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「アジア・オンライン大学」は、通信教育部の新設を進めている岡山理科大学が、泰日工業大学、パンヤピワット経営大学と教育提携を結んでいることから、タイにおける新たな展開として両大学と話し合いを重ねている。

 通信教育部の新設に関しては今年3月に文部科学省に設置申請をしており、7〜8月には認可される見込み。岡山理科大学の大月史嗣国際交流局長によると「タイに居住する人で、実は日本に関心を持っている人は多い。そうした人たちの中でIT人材の育成を目指していく。卒業生は岡山理科大の情報理工学部の学位となります」とし、その取り組みは「日本の大学としては初の試み」となる。将来はアジア各国にこうした動きを広げていくと言う。

このたび「学長」に就任する森田健作(泰日工業大学本部前にて)

「おれは男だ!」ファンが多い

 一方、森田の学長任命については、タイの国内事情も大きかったようだ。

 実際、森田のタイでの人気は“アイドル並み”で、在タイ王国日本大使館関係者も「日タイ友好をさらに深める大きな弾みになる」と、今回の開校は歓迎ムードだ。

 森田は千葉県知事在任中にはタイや台湾、シンガポールなどアジア各地に積極的に赴いてきた。しかし、タイ国内では現在でも“前知事”という以上に、かつて主演した日本テレビ系の青春ドラマ「おれは男だ!」(タイでは「剣道」のタイトルだった)からのファンが年配者を中心に多い。

「知名度を利用してもらえるのは光栄」と語った

「放送から50数年経った現在でもレコードやポスター、ドラマのDVDなどが出回っている。ドラマの主題歌で森田の歌った『さらば涙と言おう』や『友達よ泣くんじゃない』などがカラオケの上位を占めることもあります」(タイ在住の日本人芸能関係者)

 中でも2016年に亡くなったプミポン・アドゥンヤデート国王の次女、マハー・チャクリー・シリントーン王女は今でも熱烈な“森田ファン”として知られている。それだけに「タイでの森田人気は不動で信頼も厚い」(同)と言う。

 そんな森田の知名度を活かし「タイをはじめ、将来はアジアにおいて10の国や地域、さらには中東、アフリカ地域においても、連携できる教育機関と協力してオンライン大学を拡充させていきたい。そのためにも森田学長には大いに期待している」(大月局長)と意気込む。

本人は「『日本学』もカリキュラムに」

 オンライン大学開校を前に岡山理大と連携する泰日工業大学とパンヤピワット経営大学の客員教授にも森田は任命された。地元の教育関係者によると、両大学は「高いスキルを持った労働者を育成及び訓練するための大学」だそうで、経営管理、工学技術、コミュニケーション・アート、革新的農業管理、食品ビジネス管理など「専門性を追求している。特にPIMは、タイ最大のコングロマリットの一つ『CPグループ』の職業教育と就労機会を提供する教育機関」として認知されていると言う。それだけに「実現に向けては信頼できるパートナーの存在なくしては成立しなかった」(大月局長)としている。

 学長就任という重責に本人は「重要なのはタイの若者が日本に関心を抱いて、日本で働きたいと思ってもらうこと。そのためにもインターネットを使って新たな教育機関が出来ないかと思っていた。大学では専門的な学びはもちろんだが、日本の流儀に合った教育、いわば『日本学』もカリキュラムとして盛り込みたい。とにかく、まずは日本に関心を持ってもらう、興味を持ってもらうことで、将来的にはタイからアジア全域に広げていきたい」と力説する。

 少子高齢化の流れが止まらない日本では、もはや「外国人労働人材」の確保が最優先となっている。「そのためにも、専門分野での優秀な技術者、技能者を育てるのは重要なことだし、もちろんタイの日系企業で働いてもらうような環境づくりも重要。そのために、私自身も知名度を利用してもらえるのは光栄ですし、若い人のため、日本とタイのために汗を流したい」と語っていた。

渡邉裕二(わたなべ・ゆうじ)
芸能ジャーナリスト

デイリー新潮編集部