ウォルマート(Walmart)は6月10日月曜日、同社がラグジュアリーコスメと位置づける新ブランド「プリティスマート(Pretty Smart)」を店頭に並べた。

ブランドの創設者はコスメ界の大ベテランとして知られるマリッサ・シップマン氏。商品はウォルマートが全米に展開する2800店舗とオンラインショップ(walmart.com)、およびプリティスマートのブランドサイトで独占販売する。新ブランドで展開する製品カテゴリーはベースメイク、チーク、アイメイクとリップで、価格はどの商品も10ドル(約1600円)に満たない。実店舗ではウォルマートのエグゼクティブがイチオシする「ヒーロー商品」を2フィートの棚スペースに並べ、カラーバリエーションなどを含む全商品(SKU)はオンラインで販売する。

デビューコレクションで扱う商品はSKUにして100点を超えるが、その大部分をベースメイクが占め、豊富なシェードレンジを用意して多様な肌色に対応するという。

コストの削減と市場投入の短縮を実現



プリティスマートの製品にはココナッツアルカン、カルナウバワックス、ヒマワリ種子油などの高品質素材が使われているが、それに加えて独自の製造施設を持っていることも大きな差別化要因だとシップマン氏は話し、こう続けた。「製造の全工程を垂直統合することにより、無駄なコストを削減し、価格のスリム化を実現できた」。

シップマン氏は、「ウォルマートとの提携を通じて、管理可能なペースで事業を拡張するのに必要な流通力を確保できた」と話す。また、同氏の説明によると、商品の外装は互換可能であるため、特定の商品が予想外に売れたときなどに「使い回し」が効くという。

さらに、ウォルマートのビューティマーチャンダイジング担当バイスプレジデントを務めるクレイトン・カイパー氏によると、プリティスマートの製品は米国で製造されているため、市場投入までのスピードが速い。また、店内体験やデジタル体験についても、ウォルマートとブランドのあいだで目標の共有ができているという。

シップマン氏は、「消費者に新ブランドを知ってもらうための施策として、オーガニックとペイドのSNS投稿を積極的に活用する計画だ」と語る。その手はじめとして、非公開のインフルエンサー集団を起用してペイドコンテンツを制作し、プリティスマートの各種ソーシャルチャネルで横断的に利用するという。さらに、新学期・新入学のシーズンに合わせて、消費者向けのリアルイベントを開催する計画もあるようだ。

美容分野の第一人者をめざす



ウォルマートはAmazonに対抗する必要上、「ラグジュアリーコスメ」の品揃えを充実させるプランの一環としてプリティスマートを立ち上げたとカイパー氏は話し、こう説明する。「ウォルマートは美容分野の第一人者をめざしたい。これを実現する方法のひとつがアクセシビリティとインクルーシビティ(包摂性)の推進だと考える」。

ウォルマートは2023年に新興のコスメブランドを支援するアクセラレータプログラムとして「ウォルマートスタート(Walmart Start)」を立ち上げた。スタートアップ企業に必要なリソースと資金に加えて、ウォルマートの店頭に並ぶ可能性も提示している。最初の参加企業にはフレグランスブランドのドシエ(Dossier)、ネイルブランドのペイントラボ(Paintlab)、ヘアケアブランドのザ・ヘアラボ(The Hair Lab)とパードンマイフロー(Pardon My Fro)が選ばれた。3月に発表された2024年組には、ボディケアブランドのサンデーボディ(Sundae Body)、ヘアケアブランドのコスモロジー(Kazmaleje)とラティナスビューティ(LatinUs Beauty)、ウェルネスブランドのカーレントステート(Current State)らが名を連ねる。

ウォルマートは5月16日に発表した2025年第1四半期決算で、売上高は前年同期比6%増の1615億ドル(約25兆8000億円)となり、美容商品の販売を含む食料品部門は1ケタ台半ばの伸びを報告した。カイパー氏によると、同氏率いるチームは今年、美容グッズ部門の増設に注力する計画だという。

[原文:Walmart expands its ‘luxury’ beauty assortment]

TATIANA PILE(翻訳:英じゅんこ、編集:戸田美子)
Image via Walmart