「ネリ戦のダウンは警告」タイソンの指導した男が井上尚弥のフェザー転級に“慎重論”を提唱「階級上げは当然じゃない」

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ネリとの激闘の中で一打を被弾してダウンした井上。このパフォーマンスから名伯楽が階級上げに持論を展開した。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)のフェザー級への転級が世界で小さくない話題となっている。

 昨年1月にバンタム級から現階級に進んだ井上は、わずか2戦でタイトルを総なめ。今年5月6日にはルイス・ネリ(メキシコ)との“東京ドーム決戦”を制してV1を達成。もはやスーパーバンタム級において敵なしとなった感はある。

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 ゆえに今後の行方は注目を集める。すでに一つ上の階級となるフェザー級の猛者たちからも挑戦状や煽りを受けているが、井上本人はそうした挑発を意に介さず。米スポーツ専門局『ESPN』の番組内で「上げるべき時が来たら、そういう案(フェザー進級)も考えている。しっかりとフェザー級の身体というものになった時に考えます」と断言している。

 かねてから階級上げのタイミングをキッチリと見定めてきた。今回もそうした信念を貫いている井上。彼の戦略的な階級上げには、ボクシングの本場で知られた名伯楽も賛同する。米メディア『ProBox TV』のYouTube番組にゲスト出演したテディ・アトラス氏だ。

 往年の名ファイターであるマイク・タイソン(米国)を指導した経験を持つアトラス氏は、停滞と転級の狭間にいる井上の現況について、「ネリ戦のダウンはひとつの警告だったかもしれない。彼がどれだけ偉大であろうと、階級を上げることが当然だと思ってはいけない」と指摘。その上で、世界3階級制覇王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)を引き合いに出し、階級上げがいかに難しいものであるかを示している。

「ロマチェンコは史上最高のファイターだ。彼はフェザーから3階級も上げたが、彼にも限界はあった。(世界6階級制覇王者)マニー・パッキャオ(フィリピン)のように特別な肉体でなければ、体重を増やして階級を上げ、パワーとスピードを維持するのは非常に稀なことなんだ」

 もっとも、アトラス氏は井上の地力を過小評価しているわけではない。百戦錬磨の同氏は「イノウエは誰であろうと倒せるパワーがある。打てる身体さえあれば、誰でも倒せるし、(フェザーでも)世界タイトルも獲れる」とも力説する。

「たしかにスーパーバンタムからフェザーに行くことは大きな挑戦になる。だけど、イノウエならそこまで苦労しないと思う。当たるなら倒せる」

 井上も転級の可能性自体を否定しているわけではない。果たして、慎重を期した先に待つフェザー級の猛者たちをモンスターはいかに対峙するのか。その一挙手一投足に期待せずにはいられない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]