by David Orban

アメリカのジョー・バイデン政権が2024年6月20日に、ロシア製アンチウイルスソフトであるKasperskyの国内販売を禁止することを発表し、9月29日までに他社製品に切り替えるよう要請しました。背景には、ロシア政府が自国企業を通じてアメリカの機密情報を収集し、軍事転用することに対する安全保障上の懸念があります。

Commerce Department Prohibits Russian Kaspersky Software for U.S. Customers | Bureau of Industry and Security

https://www.bis.gov/press-release/commerce-department-prohibits-russian-kaspersky-software-us-customers

Biden bans Kaspersky antivirus software in US over security concerns

https://www.bleepingcomputer.com/news/security/biden-bans-kaspersky-antivirus-software-in-us-over-security-concerns/

2022年にロシアがウクライナに侵攻し、ロシアと西側諸国の関係が急激に悪化した際、Kasperskyは中立的な姿勢を示す声明を発表しました。しかし、ロシア企業に対する懸念を解消するには至らず、これまでにカナダやドイツの政府がKasperskyを排除する動きを見せているほか、アメリカの連邦通信委員会(FCC)もKasperskyを「国家安全保障上の受け入れがたい脅威」に認定していました。

ロシアの老舗セキュリティ企業・カスペルスキーを「国家安全保障上の受け入れがたい脅威」に連邦通信委員会が認定 - GIGAZINE



そして、アメリカ商務省産業安全保障局(BIS)は2024年6月20日に、「ロシアを拠点とするセキュリティ企業のアメリカ子会社であるKaspersky Lab, Inc.が、製品またはサービスを国内で販売したり、国民に提供したりすることを禁止する最終決定を発表します」と述べて、Kaspersky製品のほぼ全面禁止を打ち出しました。

これにより、Kasperskyは発表の30日後である7月20日からアメリカの事業者と新規契約を締結することができなくなり、100日後の9月29日にはアメリカのユーザーに製品のアップデートを配布したり、セキュリティサービスを運用したりすることもできなくなります。

BISは禁止措置の理由として、Kasperskyがロシア政府の管理下にあり、その指示によりアメリカの機密情報にアクセスしたり、悪意のあるソフトウェアをインストールしたりする危険性があることを挙げました。



この禁止はKaspersky Lab, Inc.の親会社や子会社、関連会社すべてに適用されるもので、この種の対応としては初めての措置とのこと。BISはまた、ロシア軍およびロシアの諜報(ちょうほう)当局を支援したとして、ロシアおよびアメリカにあるKasperskyの関連団体であるAO Kaspersky Lab、OOO Kaspersky Group、Kaspersky Labs Limitedの3者を規制対象者リストであるエンティティリストに加えたことも発表しています。

当局の決定を受けて、Kasperskyは「当社はBISがアメリカにおけるKaspersky製ソフトウェアの使用を禁止する決定を下したことを承知しています。これは、Kasperskyの製品やサービスの総合的な評価ではなく、地政学的な情勢や理論的な懸念に基づいた判断であると考えています。当社は、アメリカの国家安全保障を脅かすような活動には関与しておらず、事実としてアメリカや同盟国を標的としたさまざまな脅威アクターからの保護や通報で多大な貢献をしてきました。今後も現行の事業と提携を維持するために、合法的なあらゆる選択肢を追求する所存です」との声明を発表しました。