「老老介護」はなぜ問題視されているのか 介助・金銭面の問題を介護福祉士が解説

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昨今、「老老介護」という言葉を耳にする機会が増えてきました。高齢化が進む日本で、問題視されている老老介護ですが、具体的にどのような問題点があるかご存知でしょうか。そこで今回は、介護福祉士の千葉さんに老老介護の問題点nについて解説していただきました。

※この記事はMedical DOCにて【「老老介護」の問題点とは? 原因や共倒れを防ぐ方法を介護福祉士が解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

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監修介護福祉士:
千葉 拓未(介護福祉士)

1983年生まれ。札幌市在住。専門学校卒業後、社会福祉士資格を取得し高齢者介護の道へ。通所介護、特別養護老人ホーム、認知症対応型通所介護にて介護士として従事する。現在は、Webライターとして、介護問題を中心に執筆している。

編集部

老老介護とはどのような状況ですか?

千葉さん

主に“65歳以上の高齢者”が“65歳以上の高齢者”を介護している状況を「老老介護」と呼びます。高齢の夫を妻が介護しているケースや、65歳以上の親を65歳以上の子どもが介護しているケースは老老介護にあたります。

編集部

高齢者が高齢者を介護しているのが老老介護なのですね。どのような点が問題なのでしょうか?

千葉さん

介護者が心身ともに疲弊した結果、共倒れの可能性があることが大きな問題点です。入浴介助や食事介助、排泄介助といった介助は、腰や肘、手首といった箇所に負担がかかり、介護者の体へ負担がかかります。夫が要介護者の場合、妻は自分より体重のある人を介助するケースが多く、より負担が増してしまいます。

編集部

自分より体重のある方を介助するのは大変ですよね。それ以外に大変な点はありますか?

千葉さん

要介護者が重度の認知症を患っている場合、身体介助とは異なる介助が必要です。物ごとの手順や理解がむずかしくなるため、日常的動作にも介助が必要になります。体は元気でも、常に介護者の見守りや介助が欠かせません。

編集部

老老介護の金銭問題についても教えてください。

千葉さん

金銭的な理由から、介護サービスを利用したくてもできない方が存在することや、入居施設に入る資金がないため、自宅で暮らさざるを得ない方がいる点は大きな問題です。これらのケースでは、本人と介護者の双方が十分な介護サービスを受けられず、疲弊しているケースも少なくありません。

編集部

実際にどのくらいの方が老老問題に直面しているのでしょう?

千葉さん

厚生労働省が実施した2019年の国民生活基礎調査によると、同居の介護者と要介護者の組み合わせを年齢でみたときに、老老介護の割合は全体の59.7%と全体の半分以上の高い数値であることがわかっています。さらに、75歳以上の老老介護は全体の33.1%と、およそ3世帯に1世帯の割合ですね。

参考:厚生労働省|2019年 国民生活基礎調査