「不妊症の原因は女性だけじゃない」婦人科医が語る“パートナー2人で検査を受けるべき理由”
「不妊症」と聞くと、何か特別な病気のようなイメージをもつ人も多いのではないでしょうか。しかし、じつはカップルの約15%が不妊の問題を抱えていると言われています。今回は、不妊症の原因や検査方法について、「mimiレディースクリニック三越前」の干場先生に解説していただきました。
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干場 みなみ(mimiレディースクリニック三越前)
日本大学医学部卒業。その後、日本赤十字社医療センター、国立国際医療研究センター病院、リプロダクションクリニック東京などで経験を積む。2023年、東京都中央区に「mimiレディースクリニック三越前」を開院。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、女性ヘルスケアアドバイザー、母体保護法指定医。
不妊症の原因編集部
不妊症とはなんですか?
干場先生
「定期的な性交渉があるにもかかわらず、1年以上妊娠に至らない状態」を不妊症と言います。世界保健機関(WHO)のデータによると、「世界中のカップルの約15%が不妊の問題を抱えている」とのことです。
編集部
なぜ、不妊症になるのでしょうか?
干場先生
原因は様々ですが、まず知っていただきたいのは、不妊は決して女性だけの問題ではない点です。女性に原因がある場合と男性に原因がある場合は、ほぼ同じくらいの割合と言われていますし、双方に原因がある場合や原因がわからないこともあります。
編集部
男性にも問題があるかもしれないのですね。
干場先生
はい。また、「年齢は関係ない」「実年齢より若く見られることが多いから大丈夫」と考える人もいるかと思いますが、これは誤解です。実際のところ、女性の妊娠能力は35歳を過ぎると徐々に低下し、38歳をすぎるとその傾向が顕著になります。さらに、男性も年齢に伴って精子の数や運動率が下がることもあるので要注意です。
編集部
なぜ、女性の妊娠に年齢がそこまで影響するのですか?
干場先生
女性は、生まれた時点で一生分の卵子がすでに作られているからです。どんなに見た目が若々しくても、どれほど健康的な生活をしていても、卵子が新しく作られることはありません。卵子は年齢とともに徐々に劣化していきます。そうなると妊娠率の低下に加えて、妊娠後の流産率も高まってきてしまうのです。
もしかしたら不妊症かも? 知っておきたいチェックリスト編集部
不妊症を疑った方がいいチェックリストはありますか?
干場先生
当院では以下の点に当てはまる場合、受診の検討をおすすめしています。女性男性
35歳以上
生理不順がある
卵巣の手術歴がある
子宮内膜症を合併している
骨盤内腹膜炎の病歴がある
射精障害がある
精液異常を指摘されたことがある
編集部
医療機関では、どのようなことをするのでしょうか?
干場先生
まずは問診で病歴などを伺い、その後に医学的な評価や検査をおこないます。そこから不妊症の原因を特定し、それぞれに最適な治療法を見つけていきます。繰り返しになりますが「不妊=女性の問題」ではないので、男性側も受診しないと原因が特定できないケースもあります。
編集部
女性側の不妊の検査では、何をするのですか?
干場先生
一般的な検査としては、「血液検査」や生殖器の物理的な異常を調べる「内診・経膣超音波検査」、造影剤を子宮内に注入し、X線を使って卵管の通過性を確認する「子宮卵管造影検査」があります。造影剤を用いずに、生理食塩水を用いた通水検査で確認するクリニックもあります。あとは血液を採取して、排卵に関与するホルモンのレベルを測定する「ホルモン検査」です。ホルモン検査により、排卵障害の有無が判断されます。
編集部
血液検査では、どのようなことがわかりますか?
干場先生
例えば、甲状腺機能の数値に異常があるときは、流産や不育症のリスクが高くなります。また、血中のビタミンDは卵巣機能や着床率の向上、早産リスクの低下に関与しています。そのため、25OHビタミンD値を測定して、低い値が出た際はサプリメントで補う必要があります。加えて、血液中の「AMH」というホルモンの濃度から、女性の体に残っている卵子の数を推測することもできます。
編集部
男性側の検査には、どのようなものがありますか?
干場先生
男性の場合、感染症を調べるための採血と精液検査をおこないます。男性側で最も基本的な検査であり、精子の数、形態、運動性を評価することができます。また、一部の医療機関では、精巣の超音波検査をおこなうこともあります。
不妊検査はどこで受けられる? 注意点は?編集部
不妊検査はどこで受けられますか?
干場先生
女性側のみの検査であれば婦人科で受けられますし、男性側のみであれば男性不妊を掲げている泌尿器科や婦人科で受けることができるでしょう。また、男女ともに不妊の検査ができる婦人科もあります。ただし、効率よく原因を特定させて不妊治療をスムーズに進めるためには、パートナーと一緒に不妊症外来などの専門性の高い医療機関を受診するのがおすすめです。
編集部
不妊検査を受けるにあたって、知っておいた方がいいことはありますか?
干場先生
特に女性の場合は年齢が大きく関係するので、なるべく早く受診していただきたいと思います。不妊症の定義として「1年以上妊娠に至らない」とお伝えしましたが、30代以降であれば1年待つ必要はないと考えます。結婚や妊娠を考え始めた時点で、一度調べることをおすすめします。
編集部
検査を受ける際の注意点があれば教えてください。
干場先生
AMH検査はピルを服用していると正確な検査結果が出せないので、服用を中止して3カ月経過してから検査する必要があります。また、「生理中だと受診できませんか?」と聞かれることもあるのですが、基本的には問題ないことがほとんどです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
干場先生
不妊に関する悩みに対しては、早めに動くことが非常に重要です。不妊症の定義である「1年」を待つ必要はないので、妊娠を考えた時点ですぐにでもご相談いただくことをおすすめします。また、不妊は女性だけでなく、男性にも原因があるかもしれないことを知っていただきたいです。さらに、妊娠も育児も夫婦で取り組む必要があるので、「何歳までに何人ほしいのか」などを2人で話し合って、それに向けた計画を立てることも大事です。目標やゴールを定めると、不妊治療のステップアップも迷うことなく考えやすいのではないでしょうか。
編集部まとめ
今回は、不妊症の検査について解説していただきました。不妊症の検査は、不妊の原因を特定し、適切な治療法を選択するためにおこなわれます。年齢も大きく関係してくるので、妊娠を希望した時点でまずは早めに相談することや、男女どちらにも要因はあり得ること、さらに「何歳までに何人ほしいのか」などのプランを夫婦で話し合うのが大事とのことでした。
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