「咽頭がんは見た目」でわかる?症状や治療法も解説!医師が監修!
誰でもかかる可能性のあるがんの中で、頭頸部がんの一種である咽頭がんは「咽頭」と呼ばれる部位に発生するがんです。
咽頭は、上咽頭・中咽頭・下咽頭に分類されます。がんが生じた咽頭の部位によって症状が変わるのが特徴です。
皮膚がんになるとできものができますが、咽頭がんも見た目でわかるのでしょうか。
本記事で詳しく解説していきます。
≫「咽頭がんの生存率」はご存知ですか?症状・原因も解説!【医師監修】監修医師:
渡邊 雄介(医師)
咽頭がんとは
咽頭は「上咽頭」「中咽頭」「下咽頭」の3つの部位に分かれています。上咽頭は鼻の奥、中咽頭は口の奥、下咽頭は喉仏の辺りです。
そして、それぞれの場所にできたがんを「上咽頭がん」「中咽頭がん」「下咽頭がん」と呼びます。各咽頭がんが進行してくると頸部リンパ節に転移するケースがあり、その場合は首にしこりができることで気付く場合もあります。
咽頭がんは見た目でわかる?
中咽頭がんなら見た目でわかる場合もありますが、素人目で判断するのは難しいでしょう。
中咽頭にがんができると、その部位の色・形が変化します。色は赤もしくは白で、腫れやしこり、潰瘍などのさまざま型を示します。
口を大きく開けたときにその病変が見られる場合があるでしょう。しかし、見える病変はごく一部だけの場合もあります。
上気道感染症なども粘膜の色や形が変化することがあります。そのため、素人目ではがんなのか上気道感染症なのかの区別は難しいです。
のどに違和感を覚えたり、できものに気づいたら自己判断はせずに診察を受けてください。
咽頭がんの症状
発生部位によって「上咽頭がん」「中咽頭がん」「下咽頭がん」と分類される咽頭がんは、それぞれで症状などにも若干の違いが見られるのが特徴です。
ここからは、部位別の咽頭がんの症状についてご紹介しましょう。
上咽頭がんの症状
上咽頭がんは初期の自覚症状がないことが多く、発覚した時にはかなり進行しているケースも少なくありません。自覚症状は患者さんによって異なりますが、多く見られるのは首のしこりです。これは頸部リンパ節への転移によって生じるものなので、早期の治療が必要となります。
「目が見えにくい」「耳が聞こえにくい」「鼻血がよく出る」なども、上咽頭がんの典型的な症状だといえるでしょう。
中咽頭がんの症状
中咽頭がんも上咽頭がんのように、初期の自覚症状がほとんどありません。また、症状が出たとしても喉の痛みや出血、飲み込みの際の違和感などが多いので、単なる風邪だと勘違いされる患者さんも多いです。
「声が変わった」「首にしこりがある」「耳が痛い」「舌に違和感がある」「口を開けにくい」などの自覚症状から、中咽頭がんが発覚するケースが多いでしょう。
下咽頭がんの症状
下咽頭がんは喉仏の内側辺りにできるがんです。この部分は周囲にリンパ節が多いので、「リンパ節への転移」が主な症状ともいえるでしょう。それに伴って首にしこりができるので、そこから下咽頭がんが発覚するケースが多いです。
他の症状は上咽頭がんと中咽頭がんの両方と似ており、喉の痛みや飲み込みにくさ・声のかすれ・耳の痛みなどが見られます。
咽頭がんの治療方法
中咽頭がんだと自身でがんの発生箇所を目視できる場合もありますが、上咽頭や下咽頭にできたがんだとそうはいきません。初期の自覚症状があまり見られないこともあり、発覚時にはすでに早急な治療が必要な場合も多いでしょう。
ここからは咽頭がんの治療方法についてご紹介しますので、参考にしてみてください。
手術
上咽頭・中咽頭・下咽頭のどの部位にがんができたとしても、「がんの範囲」「リンパ節への転移の有無」「離れた臓器への転移の有無」からステージ(病期)が決まります。
それを踏まえて患者さんと治療方法を話し合って決めますが、基本的に上咽頭がんはどのステージだとしても手術は行いません。それは上咽頭は手術が困難な部位だからです。
中咽頭がんと下咽頭がんは手術を行うケースもありますが、転移の有無などによって切除部位や合併症が異なります。中咽頭がんの腫瘍を切除すると、口の開閉や咀嚼が困難になることがあります。
また、舌などが切除範囲になった場合は、発音・嚥下の機能が損なわれるかもしれません。声帯を切除すると発声ができなくなるので、発声法や代用音声を用いたリハビリテーションを行うことになります。
中咽頭がんがリンパ節などに転移していた場合は「頸部郭清術」を行い、リンパ節・神経・周囲の血管や筋肉を切除する場合があります。それにより、顔のむくみ・頸部のこわばり・肩回りの運動障害などの後遺症が残ることもあるでしょう。
下咽頭がんの場合は、進行状態によって内視鏡によるがん切除を行う場合があります。しかしがんの範囲が広かったり、進行がんであったりする場合は、下咽頭・喉頭を部分的に切除または全摘出することもあるでしょう。温存・部分的・全摘出によって差は出ますが、いずれにおいても発声の困難化・発声機能の喪失といった合併症が想定されます。
化学療法
化学療法は「薬物療法」とも呼ばれ、上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がんに対して行われます。化学療法は治癒に特化したものがあり、これは放射線を併用するため「化学放射線治療」とも呼ばれています。
その前後では導入化学療法・術後化学放射線療法を行うこともあるのです。これは、薬物で事前に腫瘍の縮小を図る場合や治療効果を高める場合に行われます。
また、再発・転移に対する化学療法が採用されることも多いでしょう。がんの成長を妨げる分子標的薬や、免疫細胞のリンパ球にがんを攻撃させる免疫チェックポイント阻害薬が投与されます。
放射線療法
放射線治療は、放射線を照射してがんを消滅または小さくさせる治療方法です。上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がんに対して行われます。特に、手術が困難な上咽頭がんでは採用されることが多いでしょう。
咽頭がんに対する放射線治療では、「IMRT(強度変調放射線治療)」を行うことが多いです。この治療では、さまざまな角度から放射線を1日1回照射します。患者さんにはこの治療を週5日、6~7週間ほど受けていただきます。全体的な回数としては、おおよそで35回となるでしょう。
放射線と聞くと怖さを感じてしまうかもしれませんが、放射線量はコンピューターで制御されています。様々な角度から放射線を当てるので、どんな部位のがんにも対処できるでしょう。
ただ、治療中に声のかすれや皮膚炎が起きたり、嚥下が困難になったりする副作用も確認されています。治療後も聴力障害・白内障・開口障害・むし歯増加・下顎骨壊死・下顎骨骨髄炎など、歯や顎への副作用が生じることもあります。
咽頭がんの見た目についてよくある質問
ここまで咽頭がんの見た目・症状・治療方法・咽頭がん以外の頭頸部がんの種類などを紹介しました。ここからは「咽頭がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
質問1:咽頭がんの初期症状について教えてください
渡邊 雄介(医師)
上咽頭・中咽頭・下咽頭のどこにがんができたとしても、初期の自覚症状はほとんどありません。しかし人によっては喉の痛み、耳・嚥下時の違和感があるでしょう。中咽頭がんの患者さんは、口を大きく開けて鏡などでしこりを発見するケースもあります。
質問2:咽頭がんを早期に発見するポイントについて教えてください
渡邊 雄介(医師)
お話ししたように、咽頭がんの典型的な症状は喉や鼻の違和感などです。風邪の症状とも似ていますが、まずは医療機関に相談してみることが咽頭がんの早期発見につながるでしょう。
編集部まとめ
咽頭がんは風邪の症状に似ているので自分ではわかりづらいです。
しかし、先述した咽頭がんに当てはまる症状がある場合には医療機関を受診することが重要だといえるでしょう。
症状が咽頭がんからくるものだとしたら早期発見のチャンスとなるからです。今後、喉・鼻の違和感をはじめ各症状が出ているのであれば、本記事を思い出していただけると幸いです。
咽頭がんと関連する病気
咽頭がんと関連する病気は、ここまででご紹介していないものだと2個ほどあります。
各病気の治療方法、原因などはリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
舌がん唾液腺がんこれらは、咽頭がんと同じく「頭頸部がん」に分類されています。口腔がんに含まれる舌がんは、年間だと約4400人もの人が診断されているので特に注意が必要です。舌がんの症状はしこりや痛みなどですが、これが口内炎と勘違いされて発見が遅れるケースが多いでしょう。唾液腺がんは、耳・顎・舌の裏・口・咽頭にある各唾液腺にできるがんです。症状は、痛みや神経麻痺などが挙げられます。
咽頭がんと関連する症状
咽頭がんと関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状の治療方法、原因などはリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
鼻づまりものが二重に見える
息苦しさ
血痰
口腔がんや上顎洞がん、さらに喉頭がんなどにも似たような症状が見られます。上記のような症状を感じたら、まずは医療機関に相談してみてください。
参考文献
上咽頭がん(国立がん研究センター)
中咽頭がん(国立がん研究センター)
下咽頭がん(国立がん研究センター)