「もう日本を中心に」ボクシング界の“米国中心主義”は正しいのか? メキシコ識者が説いた井上尚弥の価値
無敗伝説を築き、声価を高め続ける井上。そのパフォーマンスは業界関係者も唸るほどだ。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext
いまや、世界スーパーバンタム級4団体統一王者に君臨する井上尚弥(大橋)のボクシング界における知名度や価値は世界随一と言っていい。「モンスター」と彼の異名を言えば、ピンと来ないファンや業界関係者は少ないだろう。
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ゆえに一部で広まった井上に対する“異論”には疑問を抱かざるを得ない。それは元世界ウェルター級王者2団体王者のショーン・ポーター(米国)氏が「世界最高のスターになりたいならこっち(米国)での試合が必要だ」という主張をきっかけに広まった論調だ。
21年6月にマイケル・ダスマリナス(フィリピン)とのWBA・IBFバンタム級タイトルマッチ以来、国内興行を続けている井上。5月6日に行われた東京ドーム興行でも莫大な収益を生み出すなど、軽量級における市場価値は示してきたわけだが、ポーター氏のようにボクシングの本場である“米国中心主義”を唱える者は少なくないのだ。
ただ、井上の名が世界に広まるにつれ、考え方を改める関係者も増えている。メキシコの興行社『Producciones Deportivas』のプロモーターであるリカルド・マルドナードJr.氏は、母国の日刊紙『El Informador』で「ボクシング界で認められるためには、アメリカ、そして“聖地”ラスベガスで試合をすべきなのか?」という問いに、こう切り返している。
「まあ、それは確かにあると思う。でも、ナオヤ・イノウエを見てほしい。彼がアメリカに来て戦ったのは3試合だが、もう日本を中心に戦っている」
さらに「私はナオヤこそ今のボクシング界で最強だと思っている。彼は完全無欠だ」と絶賛するマルドナードJr.氏は「アメリカは最高の場か?」という質問には、「いや、必ずしもそうとは限らない」とキッパリ。あらためて井上の価値を強調するように持論を語った。
「今じゃアメリカやメキシコだけじゃない。ロシアや日本からも良いファイターは出てきている。とくに日本にはナオヤに続こうとしているジュント・ナカタニがいる。彼はスーパーバンタム級かフェザー級で唯一、ナオヤに勝つチャンスを持っている。そして、その彼らの試合はネリとイノウエがやったように、再び東京ドームのような大規模な会場でも超満員できるんだ」
サウジアラビアからの巨額投資が介入するなど、国際化が進み続けるボクシング界。そのなかで日進月歩で飛躍を続ける井上への評価も高まる一方となっている。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]