『THE SECOND』は「より長く漫才を続けてもらうための大会」 2年目で裾野拡大、フェア環境一層追求
●フジ社長が早々に第2回大会を宣言
結成16年以上の漫才賞レース『THE SECOND〜漫才トーナメント〜』第2回大会の「グランプリファイナル」が、フジテレビ系で18日(19:00〜23:10)に4時間超にわたり生放送される。初開催の前回は、若手漫才師がしのぎを削るバチバチ感と違い、出場者がベテランということもあってより戦友感が生まれることで、これまでにないお笑い賞レースの形を打ち出し、早々に第2回の開催が決定した。
そんな今大会は、どのように準備を進めてきたのか。これまでの選考過程の振り返りや、新たに参加する有田哲平(くりぃむしちゅー)、博多華丸・大吉へのオファー秘話なども含め、チーフプロデューサーの石川綾一氏と、総合演出の日置祐貴氏に話を聞いた――。
『THE SECOND〜漫才トーナメント〜』第2回大会「グランプリファイナル」進出漫才師(左から ハンジロウ、金属バット、ラフ次元、ガクテンソク、ななまがり、タモンズ、タイムマシーン3号<パネル>、ザ・パンチ (C)フジテレビ
○放送枠確定前から選考会スタート
第1回大会は、放送終了後の見逃し配信再生が149万回(※4エピソード合計/配信数はビデオリサーチで算出。TVer・FODの合計値)をマークするなど大きな反響があったが、その配信期間が終わらないうちに、フジテレビの港浩一社長が定例会見で「新しい賞レースとして話題を提供できた。今後、大切に育てていきたい」と、第2回大会の開催を宣言した。
「やるんだろうなとは思っていました」という感触があったと振り返る日置氏。昨年8月から石川氏との間で第2回大会に向けて動き出したが、第1回大会と同じ土曜日のゴールデンタイムに4時間10分の生放送というスタイルが確定したのは、冠スポンサーが決まった今年3月になってのことだった。
「アサヒビールさんが冠提供を受けてくださったことにより、制作が希望していた4時間超の放送尺に確定しました。そこでスタッフの士気は一気に上がりました」(石川氏)
ただし、選考会は2月2日からスタートしていたため、「(放送枠が)3時間だったらこれはなくそうとか、3時間半ならこうしようとか、いろんな尺のパターンの表を作って考えていました」(日置氏)とシミュレーションしながら、大会は走り出していた。
チーフプロデューサーの石川綾一氏
総合演出の日置祐貴氏
○「去年やったものの完璧版を作りましょう」
そうした中で、第2回大会の方針として日置氏が全スタッフへ最初に伝えたのは、「去年やったものの完璧版を作りましょう」ということ。
「去年は第1回大会というのもあって、もっと完成度が低くなることも想定していたのですが、結果として大幅にここを変えようみたいなものがなかったんです。なので、カメラワークとか、CGのこだわる部分とか、細かいところを直して100点にするというところに、力を注いできました」(日置氏)
その中で前回と異なるのは、1組2,000円のエントリーフィーを廃止したこと。石川氏は「去年の打ち上げの時に、ファイナリストの8組から“2,000円払うのはどうなんだ”と言い込められて(笑)、最後の挨拶で“じゃあなくしましょう!”って宣言しちゃいました。たしかにベテランの方に2,000円払っていただいて出てもらうのも失礼ですし、その効果があったのか、今年は(芸歴52年の)ザ・ぼんちさんにも出ていただけたので、エントリーフィーをなくしたことで、裾野が広がったという面があったかもしれません」と捉えている。
「開幕戦ノックアウトステージ32→16」でハンジロウに惜しくも敗れたザ・ぼんち
○接戦減少も先攻勝率上昇「プラスになった」
採点方式は変わらず、客席の一般審査員100人による「とても面白かった:3点」「面白かった:2点」「面白くなかった:1点」を合計した300点満点。ただ前回は、ベスト8を決める「ノックアウトステージ」まで、1組の漫才を見終わるごとに採点入力が行われていたが、「グランプリファイナル」では2組を見終えてから採点入力する方式に変更した。
その理由について、日置氏は「ノックアウトステージで、先攻が負けることが多かったというのがあって、“後攻有利の大会”と言われたら勝者の人に申し訳ないと思って変えました」と明かす。それを踏まえ、今年は「ノックアウトステージ」から2組見終えた後の採点入力としたところ、「結果として去年より先攻の勝率が上がりました」と効果を実感した。
一方、比較審査の要素が強くなったことで、様子見で「2点」を入れる人が減少する傾向が見られ、接戦のカードが減った。「ノックアウトステージ32→16」での<ザ・ぼんち:285点● - ◯287点:ハンジロウ>の2点差が最小で、ほとんどが二桁以上の差がついた。
この結果に、日置氏は「もちろん制作側としては毎回接戦になるほうがうれしいですが、先攻も勝ちやすくなったという意味ではプラスになったと考えています」と話し、よりフェアな環境を追求・優先している。
●くりぃむ有田「フジテレビさんもお困りでしょうから」
昨年からの最も大きな変更点と言えるのは、アンバサダーを務めた松本人志が芸能活動を休止したことに伴い、新たに「ハイパーゼネラルマネージャー」として有田哲平(くりぃむしちゅー)、「スペシャルサポーター」として博多華丸・大吉が、グランプリファイナルを見守ることだ。
前回松本にオファーしたのは、「ベテランの漫才師さんが、この人に“面白かった”と言ってもらえたらうれしいと思ってくれる方に、現場で見てもらいたいということと、審査員のお客さんとは違った目線でコメントしてくれる方がいるといいなと思ったんです」(日置氏)という理由から。
今回、その役割の1人を有田に託したことについて、日置氏は「僕は子どもの頃に『ボキャブラ天国』(フジテレビ)を見ていて、漫才とかコントというものがあるんだと知ったきっかけになったのが、海砂利水魚さん(後のくりぃむしちゅー)、爆笑問題さん、ネプチューンさんという人たちだったんです。その中で有田さんにお願いしたのは、海砂利水魚さんは漫才のイメージが強かったのと、他局でもいろんな芸人さんをプロデュースしたり、面白くするということを積極的にやられている方なので、ベテラン漫才師さんも有田さんに見てもらえるとうれしいと言っていただけるんじゃないかと思いました」と狙いを明かす。
実は、前回大会から有田には『THE SECOND』に関わってほしいという思いを持っていたが、当時は同時間帯に有田のレギュラー番組『世界一受けたい授業』(日本テレビ)が放送されていたことから断念。かつて『ペケ×ポン』を手がけ、現在は『全力!脱力タイムズ』も担当する石川氏から今回オファーしたところ、有田は今まで賞レースからあえて距離を置いていたこともあり、かなり熟慮したそうだが、最終的に「フジテレビさんもお困りでしょうから」と快諾してくれたという。
石川氏は「何より良かったのは、出場者の人たちから“有田さんにネタを見てもらいたいから、ファイナルに残りたい”という声があったことです。視聴者の方の反応も良かったので、受けていただいて本当に感謝しかないです」と語る。
ちなみに、「ハイパーゼネラルマネージャー」という独特の肩書きについては、「有田さんと3回くらい打ち合わせをして、阿吽(あうん)の呼吸で決まりました(笑)」(石川氏)とのこと。これまで、お笑い賞レースの番組に関わってこなかった有田の登場は画期的だが、MC・東野幸治との共演もこれまでほとんどないだけに、当日は新鮮な並びが見られそうだ。
「ハイパーゼネラルマネージャー」くりぃむしちゅー・有田哲平(左)と「スペシャルサポーター」博多華丸・大吉
○賞レース番組のイメージがない有田&華丸に注目
一方の華大に関して、日置氏は「有田さんが“松本さんの代わり”となってしまうと、有田さんもプレッシャーだと思いますし、視聴者の方からもいろんな見え方をされてしまうので、1人が背負うという感じはよくないと思ったんです。その中で、有田さんは最近は漫才の舞台に立たれていないので、現役で寄席に出られている方で、なおかつ漫才師からもリスペクトされ、漫才師にリスペクトのある方、そして『THE MANZAI』というフジテレビの賞レースで優勝されている方ということで、お願いしました」と、オファーの経緯を説明。
大吉は『M-1グランプリ』で審査員をしているが、有田と同様に賞レース番組でのイメージのない華丸の存在とコメントも、今回の注目点となっている。
●2年連続ファイナリストは1組のみ「たまたま入れ替わっただけ」
今年の「グランプリファイナル」8組の中で、2年連続の進出となったのは、金属バットの1組のみ。この顔ぶれに、日置氏は「毎年同じ人たちが上がってくるより、そのまま上がる人もいれば、途中で敗れてしまうコンビも出るほうが大会は盛り上がると思っていたのですが、1組しか残らなかったというのは、思っていた以上に各漫才師さんのレベルが拮抗しているんだなと、改めて感じました」と印象を語る。
石川氏も「たまたま入れ替わっただけだと思います」とした上で、「一生出られる大会でもあるので、“THE SECOND一座”じゃないですけど、皆さんに毎年出ていただいて、選考会から盛り上げていただき、未来に向かって持続可能な大会になっていけばいいなと思います」と期待を述べた。
○「敗者復活枠」を設けない理由
『M-1グランプリ』が盛り上がる要素の一つとして「敗者復活」があるが、『THE SECOND』では前回に続いてこの枠を設けていない。その理由は、「グランプリファイナル」を8組のトーナメントとしたときに1組を減らすと、その前の「ノックアウトステージ」の勝ち残りが16組から14組、32組から28組へと削減されてしまうというシステム上の問題が大きいことに加え、「結成16年以上の漫才師」という大会ならではの特性もある。
「『M-1』と違って卒業がなく、毎年エントリーできるので、敗退したときに“今年はくじ運が悪かったけど、また来年勝負できる”という意味で、敗者復活枠は設けていないという考え方です」(日置氏)
「昔、(島田)紳助さんが“M-1は芸人を諦めさせる大会でもある”とおっしゃっていましたが、『THE SECOND』は、より長く漫才を続けてもらうための大会だと思っています」という日置氏。一方で今回、東京ダイナマイトが「ノックアウトステージ32→16」で敗退したその日に、漫才師としての活動休止を発表したことを受け、「いろんな人の人生がある中で、ここで一旦区切りをつけると思うこともあるんだと、新たに気付かされました。おふたりがその区切りの場に『THE SECOND』を選んでくださったことで、より身が引き締まる思いがしています」と受け止めたという。
タイマン形式でトーナメントを勝ち進んでいくだけに、対戦が終わると漫才師同士がノーサイドで互いを称え合う姿が印象的な『THE SECOND』。敗者の思いも背負って大舞台に臨むファイナリストたちが、今年はどんな漫才を見せてくれるのか。
(C)フジテレビ
●石川綾一1975年生まれ、大阪府出身。早稲田大学卒業後、98年朝日放送に入社し、『探偵!ナイトスクープ』を担当。03年フジテレビジョンに転職。バラエティ制作センターで『ペケ×ポン』『ほこ×たて』を立ち上げる。編成部やコンテンツ事業部を経て、現在は『ワイドナショー』『全力!脱力タイムズ』『THE SECOND〜漫才トーナメント〜』『ドラフトコント』『THE CONTE』などのチーフプロデューサーを務める。
●日置祐貴1980年生まれ、千葉県出身。早稲田大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。以来バラエティ制作で『めちゃ×2イケてるッ!』『ピカルの定理』『バチバチエレキテる』『ワイドナショー』などを担当し、現在は『酒のツマミになる話』『呼び出し先生タナカ』の2本のレギュラー番組のほか、『THE SECOND〜漫才トーナメント〜』『IPPONグランプリ』『ドラフトコント』『THE CONTE』を担当する。
結成16年以上の漫才賞レース『THE SECOND〜漫才トーナメント〜』第2回大会の「グランプリファイナル」が、フジテレビ系で18日(19:00〜23:10)に4時間超にわたり生放送される。初開催の前回は、若手漫才師がしのぎを削るバチバチ感と違い、出場者がベテランということもあってより戦友感が生まれることで、これまでにないお笑い賞レースの形を打ち出し、早々に第2回の開催が決定した。
『THE SECOND〜漫才トーナメント〜』第2回大会「グランプリファイナル」進出漫才師(左から ハンジロウ、金属バット、ラフ次元、ガクテンソク、ななまがり、タモンズ、タイムマシーン3号<パネル>、ザ・パンチ (C)フジテレビ
○放送枠確定前から選考会スタート
第1回大会は、放送終了後の見逃し配信再生が149万回(※4エピソード合計/配信数はビデオリサーチで算出。TVer・FODの合計値)をマークするなど大きな反響があったが、その配信期間が終わらないうちに、フジテレビの港浩一社長が定例会見で「新しい賞レースとして話題を提供できた。今後、大切に育てていきたい」と、第2回大会の開催を宣言した。
「やるんだろうなとは思っていました」という感触があったと振り返る日置氏。昨年8月から石川氏との間で第2回大会に向けて動き出したが、第1回大会と同じ土曜日のゴールデンタイムに4時間10分の生放送というスタイルが確定したのは、冠スポンサーが決まった今年3月になってのことだった。
「アサヒビールさんが冠提供を受けてくださったことにより、制作が希望していた4時間超の放送尺に確定しました。そこでスタッフの士気は一気に上がりました」(石川氏)
ただし、選考会は2月2日からスタートしていたため、「(放送枠が)3時間だったらこれはなくそうとか、3時間半ならこうしようとか、いろんな尺のパターンの表を作って考えていました」(日置氏)とシミュレーションしながら、大会は走り出していた。
チーフプロデューサーの石川綾一氏
総合演出の日置祐貴氏
○「去年やったものの完璧版を作りましょう」
そうした中で、第2回大会の方針として日置氏が全スタッフへ最初に伝えたのは、「去年やったものの完璧版を作りましょう」ということ。
「去年は第1回大会というのもあって、もっと完成度が低くなることも想定していたのですが、結果として大幅にここを変えようみたいなものがなかったんです。なので、カメラワークとか、CGのこだわる部分とか、細かいところを直して100点にするというところに、力を注いできました」(日置氏)
その中で前回と異なるのは、1組2,000円のエントリーフィーを廃止したこと。石川氏は「去年の打ち上げの時に、ファイナリストの8組から“2,000円払うのはどうなんだ”と言い込められて(笑)、最後の挨拶で“じゃあなくしましょう!”って宣言しちゃいました。たしかにベテランの方に2,000円払っていただいて出てもらうのも失礼ですし、その効果があったのか、今年は(芸歴52年の)ザ・ぼんちさんにも出ていただけたので、エントリーフィーをなくしたことで、裾野が広がったという面があったかもしれません」と捉えている。
「開幕戦ノックアウトステージ32→16」でハンジロウに惜しくも敗れたザ・ぼんち
○接戦減少も先攻勝率上昇「プラスになった」
採点方式は変わらず、客席の一般審査員100人による「とても面白かった:3点」「面白かった:2点」「面白くなかった:1点」を合計した300点満点。ただ前回は、ベスト8を決める「ノックアウトステージ」まで、1組の漫才を見終わるごとに採点入力が行われていたが、「グランプリファイナル」では2組を見終えてから採点入力する方式に変更した。
その理由について、日置氏は「ノックアウトステージで、先攻が負けることが多かったというのがあって、“後攻有利の大会”と言われたら勝者の人に申し訳ないと思って変えました」と明かす。それを踏まえ、今年は「ノックアウトステージ」から2組見終えた後の採点入力としたところ、「結果として去年より先攻の勝率が上がりました」と効果を実感した。
一方、比較審査の要素が強くなったことで、様子見で「2点」を入れる人が減少する傾向が見られ、接戦のカードが減った。「ノックアウトステージ32→16」での<ザ・ぼんち:285点● - ◯287点:ハンジロウ>の2点差が最小で、ほとんどが二桁以上の差がついた。
この結果に、日置氏は「もちろん制作側としては毎回接戦になるほうがうれしいですが、先攻も勝ちやすくなったという意味ではプラスになったと考えています」と話し、よりフェアな環境を追求・優先している。
●くりぃむ有田「フジテレビさんもお困りでしょうから」
昨年からの最も大きな変更点と言えるのは、アンバサダーを務めた松本人志が芸能活動を休止したことに伴い、新たに「ハイパーゼネラルマネージャー」として有田哲平(くりぃむしちゅー)、「スペシャルサポーター」として博多華丸・大吉が、グランプリファイナルを見守ることだ。
前回松本にオファーしたのは、「ベテランの漫才師さんが、この人に“面白かった”と言ってもらえたらうれしいと思ってくれる方に、現場で見てもらいたいということと、審査員のお客さんとは違った目線でコメントしてくれる方がいるといいなと思ったんです」(日置氏)という理由から。
今回、その役割の1人を有田に託したことについて、日置氏は「僕は子どもの頃に『ボキャブラ天国』(フジテレビ)を見ていて、漫才とかコントというものがあるんだと知ったきっかけになったのが、海砂利水魚さん(後のくりぃむしちゅー)、爆笑問題さん、ネプチューンさんという人たちだったんです。その中で有田さんにお願いしたのは、海砂利水魚さんは漫才のイメージが強かったのと、他局でもいろんな芸人さんをプロデュースしたり、面白くするということを積極的にやられている方なので、ベテラン漫才師さんも有田さんに見てもらえるとうれしいと言っていただけるんじゃないかと思いました」と狙いを明かす。
実は、前回大会から有田には『THE SECOND』に関わってほしいという思いを持っていたが、当時は同時間帯に有田のレギュラー番組『世界一受けたい授業』(日本テレビ)が放送されていたことから断念。かつて『ペケ×ポン』を手がけ、現在は『全力!脱力タイムズ』も担当する石川氏から今回オファーしたところ、有田は今まで賞レースからあえて距離を置いていたこともあり、かなり熟慮したそうだが、最終的に「フジテレビさんもお困りでしょうから」と快諾してくれたという。
石川氏は「何より良かったのは、出場者の人たちから“有田さんにネタを見てもらいたいから、ファイナルに残りたい”という声があったことです。視聴者の方の反応も良かったので、受けていただいて本当に感謝しかないです」と語る。
ちなみに、「ハイパーゼネラルマネージャー」という独特の肩書きについては、「有田さんと3回くらい打ち合わせをして、阿吽(あうん)の呼吸で決まりました(笑)」(石川氏)とのこと。これまで、お笑い賞レースの番組に関わってこなかった有田の登場は画期的だが、MC・東野幸治との共演もこれまでほとんどないだけに、当日は新鮮な並びが見られそうだ。
「ハイパーゼネラルマネージャー」くりぃむしちゅー・有田哲平(左)と「スペシャルサポーター」博多華丸・大吉
○賞レース番組のイメージがない有田&華丸に注目
一方の華大に関して、日置氏は「有田さんが“松本さんの代わり”となってしまうと、有田さんもプレッシャーだと思いますし、視聴者の方からもいろんな見え方をされてしまうので、1人が背負うという感じはよくないと思ったんです。その中で、有田さんは最近は漫才の舞台に立たれていないので、現役で寄席に出られている方で、なおかつ漫才師からもリスペクトされ、漫才師にリスペクトのある方、そして『THE MANZAI』というフジテレビの賞レースで優勝されている方ということで、お願いしました」と、オファーの経緯を説明。
大吉は『M-1グランプリ』で審査員をしているが、有田と同様に賞レース番組でのイメージのない華丸の存在とコメントも、今回の注目点となっている。
●2年連続ファイナリストは1組のみ「たまたま入れ替わっただけ」
今年の「グランプリファイナル」8組の中で、2年連続の進出となったのは、金属バットの1組のみ。この顔ぶれに、日置氏は「毎年同じ人たちが上がってくるより、そのまま上がる人もいれば、途中で敗れてしまうコンビも出るほうが大会は盛り上がると思っていたのですが、1組しか残らなかったというのは、思っていた以上に各漫才師さんのレベルが拮抗しているんだなと、改めて感じました」と印象を語る。
石川氏も「たまたま入れ替わっただけだと思います」とした上で、「一生出られる大会でもあるので、“THE SECOND一座”じゃないですけど、皆さんに毎年出ていただいて、選考会から盛り上げていただき、未来に向かって持続可能な大会になっていけばいいなと思います」と期待を述べた。
○「敗者復活枠」を設けない理由
『M-1グランプリ』が盛り上がる要素の一つとして「敗者復活」があるが、『THE SECOND』では前回に続いてこの枠を設けていない。その理由は、「グランプリファイナル」を8組のトーナメントとしたときに1組を減らすと、その前の「ノックアウトステージ」の勝ち残りが16組から14組、32組から28組へと削減されてしまうというシステム上の問題が大きいことに加え、「結成16年以上の漫才師」という大会ならではの特性もある。
「『M-1』と違って卒業がなく、毎年エントリーできるので、敗退したときに“今年はくじ運が悪かったけど、また来年勝負できる”という意味で、敗者復活枠は設けていないという考え方です」(日置氏)
「昔、(島田)紳助さんが“M-1は芸人を諦めさせる大会でもある”とおっしゃっていましたが、『THE SECOND』は、より長く漫才を続けてもらうための大会だと思っています」という日置氏。一方で今回、東京ダイナマイトが「ノックアウトステージ32→16」で敗退したその日に、漫才師としての活動休止を発表したことを受け、「いろんな人の人生がある中で、ここで一旦区切りをつけると思うこともあるんだと、新たに気付かされました。おふたりがその区切りの場に『THE SECOND』を選んでくださったことで、より身が引き締まる思いがしています」と受け止めたという。
タイマン形式でトーナメントを勝ち進んでいくだけに、対戦が終わると漫才師同士がノーサイドで互いを称え合う姿が印象的な『THE SECOND』。敗者の思いも背負って大舞台に臨むファイナリストたちが、今年はどんな漫才を見せてくれるのか。
(C)フジテレビ
●石川綾一1975年生まれ、大阪府出身。早稲田大学卒業後、98年朝日放送に入社し、『探偵!ナイトスクープ』を担当。03年フジテレビジョンに転職。バラエティ制作センターで『ペケ×ポン』『ほこ×たて』を立ち上げる。編成部やコンテンツ事業部を経て、現在は『ワイドナショー』『全力!脱力タイムズ』『THE SECOND〜漫才トーナメント〜』『ドラフトコント』『THE CONTE』などのチーフプロデューサーを務める。
●日置祐貴1980年生まれ、千葉県出身。早稲田大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。以来バラエティ制作で『めちゃ×2イケてるッ!』『ピカルの定理』『バチバチエレキテる』『ワイドナショー』などを担当し、現在は『酒のツマミになる話』『呼び出し先生タナカ』の2本のレギュラー番組のほか、『THE SECOND〜漫才トーナメント〜』『IPPONグランプリ』『ドラフトコント』『THE CONTE』を担当する。