今回は「エノキの焼きそば風」の作り方を伝授します(以下、写真はすべて筆者撮影)

料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作れる方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は「エノキの焼きそば風」です。

キノコがたくさん並ぶ売り場は日本独特の食文化

野菜売り場の一角にずらりと並ぶキノコ類。実は日本のように栽培キノコの種類が豊富な国は少なく、日本独特の食文化と言えます。栽培種のキノコにはシイタケやマイタケ、エリンギなどさまざまな種類がありますが、今日はエノキタケを主役にした料理をご紹介します。

天然のエノキタケは茶色で大きな傘が重なったような姿をしていますが、一般的に売られている栽培種は室内の光のない場所で栽培されているので、もやしのような細長い見た目をしています。

今回、ご紹介するレシピはエノキタケの、細長い繊維感を生かした焼きそば風です。

エノキの焼きそば風の材料
豚バラ肉     100g
塩        ひとつまみ
サラダ油     小さじ1
エノキタケ    100g(1/2袋)
もやし      100g(1/2袋)
ウスターソース  大さじ1+1/2
砂糖       小さじ1


「エノキの焼きそば風」の材料

豚バラ肉は1cm長さを目安に切ります。


豚はもも肉やこま肉なども向いています

豚バラ肉と塩ひとつまみとサラダ油を器に入れて、和えておきます。この下処理で後に炒めたときにほぐれやすくなります。


油の種類はなんでもかまいませんが、さっぱりした太白ごま油がオススメです

エノキタケの下処理です。底の部分には培地(おがくずや粉砕したとうもろこしの芯などに米ぬかを混ぜたもの)がついているので、切り落とします。袋から出すと扱いづらくなるので、袋ごと切るのが一般的です。


エノキタケは野菜室で保存します

底の部分は固まっているので切り落とします。この部分はステーキのように両面を焼くとおいしく食べられますが、今回は使いません。


底の部分もおいしいので別の料理に使いましょう

少し面倒ですが、ほぐしてバラバラにします。こうしてバラバラにしたエノキタケが焼きそばの麺の代わりになるのです。また、エノキタケは施設栽培なので洗う必要はありません。


手を使っていますが、フォークを使ったほうが効率的にほぐせます

フライパンに豚バラ肉を入れ、中火にかけます。常温から加熱をはじめることで、豚バラ肉をバラバラにほぐしながら炒めることができます。


26cmのフッ素樹脂加工のフライパンを使用しています

フライパンの温度が上がったらもやしとエノキタケを入れます。


もやしとエノキタケを入れることでフライパンの温度が下がります

広げるようにして水分を飛ばしていきます。炒め物は水分のコントロールが鍵です。炒め物を水っぽくしないためには2つの方法があります。1つめは加熱を最小限に抑えて野菜からの水分溶出を抑えるアプローチ、2つめは加熱によって水分を飛ばしていくアプローチで、今回のレシピは後者の方法をとっています。

焦げない限り、炒めすぎの心配はないのでじっくりと炒めてください。


豚肉の焦げ目がおいしさになります

ある程度エノキタケに焦げ目がついてきたタイミングでウスターソースと砂糖を加えます。ウスターソースがない場合は中濃ソースを加えてもいいでしょう。その場合は砂糖を省きます。


ソースの香りを出すように加熱していきます

ウスターソースの塩分が入ることで、エノキタケともやしからさらに水分が出てきます。それを飛ばすようにさらに加熱を進めますが、あまり混ぜすぎないようにしましょう。全体にソースが絡んだら、底に焼き目をつけます。


炒め物は混ぜすぎるとフライパンの温度が下がり、水っぽくなります

底に焦げ目がついたら皿をかぶせてフライパンごとひっくり返します。


餃子を焼くときと要領は同じです

出来上がり。焼きそばの麺を使っていませんが、味わいとしては焼きそばのようです。


焼きそばのような焦げ目がつきました

キノコを料理する時は水分をどのくらい飛ばすかで方向性が分岐しますが、焦げ目をつけるとエビやカニを焼いた時のような香ばしさが出ます。あまり炭水化物をとりたくない、というときのランチにいかがでしょうか。


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(樋口 直哉 : 作家・料理家)