3月末、ファッションモデルのカーリー・クロスが夫で投資家のジョシュア・クシュナー氏とともに「ライフ(Life)」誌の復刊を計画しているというニュースが流れた。

夫妻の持株会社であるベッドフォードメディア(Bedford Media)は、出版社ドットダッシュメレディス(Dotdash Meredith)と合意し、この歴史的に名高い雑誌を紙媒体およびデジタルの両方で復活させようとしている。1880年代に創刊されたライフは、2000年に休刊するまで、1世紀以上にわたり米国の写真誌として中心的な存在だった。

これは、伝統ある印刷媒体を中心にファッション界で起きているいくつかの大きな動きのなかでも最新の動向である。ファッション界の発展や文化のアンバサダー的役割の大半は、数十年にわたって「ヴォーグ(Vogue)」や「エル(Elle)」、「ハーパース・バザー(Harper’s Bazaar)」といった紙媒体の雑誌が担ってきた。

最近ではLVMHがフランスのメディア企業のラガルデール(Lagardere)と共同で、パリ周辺の写真や出来事を70年以上にわたり紹介してきた雑誌「パリ・マッチ(Paris Match)」の買収に乗り出したと報じられている。この買収は、ファッション、レザー製品、蒸留酒メーカーに加え、レストランやホテルなど、すでに多角的な事業展開を行っているLVMHにかなりの規模のメディア資産を加えることになる。

レイオフや閉鎖、ストライキが起こるメディア



紙媒体を復活させようというこうした動きは、メディアが困難に見舞われている時期に起きている。米国に拠点を置くカナダ発のデジタルメディアであるVICEは2月、全ジャーナリストを解雇し、Vice.comを閉鎖した。

また1月には、多国籍マスメディア企業であるコンデナスト(Condé Nast)の従業員が、長引く契約交渉とコンデナスト労組の20%以上にあたる100人の解雇計画に抗議するためにストライキを行っている

米国では、過去20年間で日刊の紙媒体の発行部数がほぼ半減した。

デジタルメディアもそれほどよい状況ではない。昨年には、ゴーカー(Gawker)、BuzzFeed News、イゼベル(Jezebel)などのサイトがレイオフや閉鎖、短期間再開してまた閉鎖するといったことを繰り返している。

メディア買収はファッションブランドが力を誇示する方法



では、なぜLVMHやベッドフォードメディアはこのような時期にメディアへの投資を望むのだろうか。

3月初めにウォールストリート・ジャーナル・マガジン(Wall Street Journal Magazine)の編集長であるサラ・ボール氏に話を聞いた際、同氏はメディア企業の買収を、大手ファッション企業が「自分たちの力を示す」方法だと説明した。

LVMHはすでにファッションと結びついており、写真やセレブリティの情報で知られる影響力のある紙媒体の雑誌を所有することは、収益よりもブランディングの面で重要なのだ。

米国の紙媒体メディアの広告収入は、2026年までに年間50億ドル(約7581億円)以下に落ち込むと予想されている。一方、LVMHの昨年の総収入は1000億ドル(約15兆2000億円)近くにのぼる。億万長者のジェフ・ベゾス氏が「ワシントン・ポスト(The
Washington Post)」を、パトリック・スンシオン氏が「ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)」を買収したように、これは巨額の収益を上げることを目的とした必須な買収ではない。しかしLVMHやベッドフォードメディアのような企業にとっては、自社の名声を高めるためのひとつの手段なのである。

[原文:Weekend Briefing: What’s behind the revival of fashion’s print media?]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida、編集:都築成果)
Image via Paris Match